国内 2018.08.27

歴史的な大学交流試合も 在日コリアンラグビーフェスティバル2日目

歴史的な大学交流試合も 在日コリアンラグビーフェスティバル2日目
朝鮮大×高麗大。高麗大がバックスを使いアタック(撮影:見明亨徳)

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朝鮮大の背中には「Korea University」。高麗大は「KOREA UNIV」(撮影:見明亨徳)
 「第9回 在日KOREAN RUGBYフェスティバル」2日目の8月26日は、会場を横浜・山手YC&ACグラウンドに移して熱い戦いを繰り広げた。
 フェスティバルの最後を飾ったのは、朝鮮大×韓国から参加の高麗大による交流試合。慶應BC合同チームと三つ巴で35分間ずつ試合をおこなっていた。
 朝大は朝鮮総連と関係がある。そして両校は英語表記が「KOREA UNIVERSITY」で同じだ。北と南に分かれた朝鮮半島。それぞれの国を代表する大学ラグビー部といえる。
 その両校が戦った。
 キックオフは午後4時34分。笛は韓国協会レフリーのペ・サンフン氏が吹いた。いきなり朝大が見せた。高麗のパスをインターセプトすると開始30秒でノーホイッスルトライを中央に奪った。ゴールも成功(7-0)。高麗も朝大陣へ入る。8分、ペナルティを得る。「モールにこだわる」と李光紋(イ・グァンモン。元東芝LO)監督は試合前に話していたが、PGで確実に3点を返した(7-3)。
 5分後、朝大陣で高麗が左ラインアウトを得る。前の試合、慶大戦では自陣からでもモールを組んで押し込んでいた。しかし、ここでもモールは組まずにすぐにボールを右へ回す。バックス陣が小気味よくゲインラインを越えて右中間へ逆転トライを決めた(7-8)。
 ここからは朝大のアタックと出足の早いディフェンスが高麗を翻弄した。17分、高麗陣に入り右タッチ際のスクラム。狭いサイドを突くとインゴールへ運んだ(14-8)。28分、高麗ゴール前で高麗FBがボール処理を誤ると朝大左WTBがボールを奪いトライへつなげた。試合終了間際も1トライ1ゴールで7点を加え、28-8で歴史的な一戦を制した。
 この試合、実現までには実行委員会はじめ多くの関係者が積極的に取り組んだ。フェスの華の一つとして「韓国から大学を招こう」と話が上がった。しかし当時は南北関係が悪化しており実現には道が遠かった。その関係も今年の平昌冬季オリンピックへの北朝鮮幹部参加を契機に雪解けへと急激に進んだ。4月27日、南北首脳が半島分断の象徴、北緯38度線をお互いに越えて会談が実現した。
 「南北首脳会談ができたようにスポーツ、私たちはラグビーで交流できることが嬉しい。継続していければ」と朝大の呉衡基(オ・ヒョンギ)監督は意義を語ってくれた。高麗・李監督は「同じ英語表記のKU、最初は戸惑ったけどできて良かった」という。高麗はこの試合のために合宿中の菅平から1泊2日で山を下りてきた。初日に神奈川朝鮮中高グラウンドで開かれた「コリラグ沢渡焼肉フェスティバル」を訪れ同胞の味を楽しんだ。
 お互いこの試合は秋に備える準備と課題を課していた。朝大は2016年に再昇格した関東大学リーグ戦2部で苦戦を続ける。過去2シーズンは7位、8位で、いずれも3部との入替戦にまわりからくも残留している。「失点、トライを多く奪われる。自分たちもトライを取れるのですがディフェンスをもっと強めていきたい。入替戦を回避する力をつけたい」(呉監督)。9月16日に今年度リーグ戦が始まる。初戦は1部から降格した関東学院大だ。かつての王者に「名前負けしないように」(呉監督)。慶大との試合でも、最初から前に出るディフェンスで止め続けていた。先制されるもゴール前、フォワードの攻めで一時、同点にした(結果は朝大 7-21 慶大)。
 高麗も毎年、接戦を繰り広げるライバル延世大との定期戦は10月6日だ。「最初の慶大戦はモールを多用して通じるか試した(モールでトライを奪うも14-19で敗戦)。朝鮮にはバックスのアタックも交えてみた。前半と後半の戦いをテストした」(李監督)。今季は延世に2敗しているが「あくまで目標は定期戦に勝つこと」と2014年以来の美酒を目指す。
『大阪 vs 東京の朝鮮中高対決も熱かった』
 2日目、昼過ぎから「在日朝鮮学生中央体育大会2018」のラグビー競技がおこなわれた。
 中学は王者、東大阪朝中に東京朝中が挑んだ。お互いのプライドがぶつかり合った。東京が先制すると大阪が返す展開。東京が14-7とリードして後半へ入る。そして、先に東京が2トライ取り切る。大阪もトライを奪う。しかしディフェンスが甘くなった大阪を東京が攻め切りトライを加え33-14で勝ち、7年ぶり2度目の優勝を勝ち取った。

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東京朝中(青ジャージー)が東大阪朝中を上回った(撮影:見明亨徳)
 高校も東京朝高×大阪朝高。中学で東京勝利に沸く応援の親、OBたちも盛り上がった。
 大阪が前半開始40秒でノーホイッスルトライを決め先制した。このまま大阪優位かと思われたが、東京もしぶとく大阪陣へ入ると得意のラインアウト→モールでトライを返す。大阪が今度はラインアウト→モールで加点し突き放す(14-5)。大阪が痛恨のシンビンで1名退場中に東京はこの反則から再びラインアウト→モールを選びトライを取り切った(14-10)。後半は大阪ペースに。そして7分、13分、20分の3連続トライで試合を決めた。東京は最後、ラインアウト→モールを起点に1トライ返し応援団の拍手を誘った。
 大阪は2008年以来11連覇を達成した。両校はこれから冬の花園(全国高校大会)出場を最大の目標に地区予選へ挑む。初の大阪・東京同時出場を実現したい。フェスに参加した部員13名の愛知朝高は合同チームで予選を戦う。

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高校の対決は大阪朝高のノーホイッスルトライで始まった(撮影:見明亨徳)
 フェスティバル実行委員長の金新日(キム・シニル)さんは「たくさんの方からご協力をいただき無事、開催することができました。『良いフェスティバルだったよ』とお声をかけていただくことが、何よりも嬉しかったです。まずはラグビーを通して皆笑顔になり、また、ウリハッキョ(母校、神奈川朝中高)であんなにも多くの方が焼肉アフターを楽しんでいただけたのがこれまた嬉しかったです」とこちらも笑顔で2日間を終えた。
(文:見明亨徳)

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実行委員会、関係者、高麗大、朝大の選手など。笑顔でノーサイド(撮影:見明亨徳)

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