国内 2018.08.13

日野で毎日、握手。オーガスティン・プルが「自分の価値をここで出したい」

日野で毎日、握手。オーガスティン・プルが「自分の価値をここで出したい」
オーガスティン・プル。2016年にはセブンズNZ代表としてオリンピックに出場(撮影:向風見也)
 クラブハウスやジムで仲間と顔を合わせると、必ず握手をする。翌週からは、自分と同じSHの選手のポジション練習会を始めるつもりだ。ある時はキック、またある時はパスと、毎日違ったスキルに取り組むようである。
 ラグビーのニュージーランド代表として2キャップ取得の28歳、オーガスティン・プルは、今季から加わる日野にいい影響を与えたいという。直近までプレーしていたスーパーラグビーのブルーズでもそうしてきたように、グラウンド内外でハードワークする。
「若手を教えるのは自分のミッションです。特にうちの選手には日本代表を狙えるような選手もいる。プランを考え、しっかりやっていきます」
 8月11日、東京・キヤノンスポーツパーク。チームに合流してわずか1週間弱しか経っていないなか、初の実戦に臨んだ。2012年からトップリーグに在籍するキヤノンとの練習試合に先発し、スクラム脇からの攻撃の起点となったり、密集脇のスペースを突っ切ったりと持ち前の脚力とボディバランスを活かして攻撃を引っ張る。
 試合は21−21で引き分けたが、プルがプレーしていた前半途中までは14−7とリードしていた。いくつかのいいプレーについて聞かれると「皆が頑張った証」などと謙遜し、周囲への感謝を口にした。
「短い準備期間でもやりやすくなるよう、コーチたちが準備してくれていた。ゲームプランをシンプルにしてもらっていました。だから自分自身はただスパイクを履くだけでした。今後はもっとチームメイトを尊敬していきたいと思っています」
 
 身長180センチ、体重90キロ。トンガにルーツを持つ生粋のアスリートは、ニュージーランドで15人制、7人制の両方で代表入り経験がある。この国に興味を抱いたのは、スーパーラグビーで日本のサンウルブズと戦った時だ。昨年7月、東京・秩父宮ラグビー場でのアウェーゲームに出場していた。
 一方で日野は、新たな人材を探していた。一昨季まで下部のトップイーストDiv.1での順位を8、7、4、4、2位と上げ、昨季は新設のトップチャレンジリーグで8チーム中2位に躍り出た。そして同年度の入替戦でNTTドコモに勝ち、国内最高峰のトップリーグに昇格していた。トップリーグで8強以上を狙うにあたり、チーム力を底上げするキャリア組を求めた。
 入団前にあった細谷直監督からのアプローチについて、プルはこう述懐する。
「いつだったかは言えませんが、最初に監督とお会いした時に(チームへの)愛情を感じました。特にここ2年でトップリーグ昇格のために頑張ってきたことを、すごく情熱的に話してくれた。それはポリネシアンの私にとって心に響くものだったので、日野入りを決めました。自分の価値をここで出したいと思いました」
 長らく離れているオールブラックス(15人制のニュージーランド代表)に復帰したい気持ちもあるが、「まずはこちらでのプレーに集中を」と強調。8月31日、東京・町田市立野津田公園陸上競技場での開幕節(対サニックス)を見据える。
(文:向 風見也)

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