国内
2018.05.06
元主将がコーチ就任の筑波大、今季初陣を制する。2連敗の早大は何を思う?
筑波大の大西訓平主将は、先発のHOとして後半37分までプレー。ベンチに退いてノーサイドを迎えるまでの間、チームの充実ぶりを再確認した。
「僕は下級生にももっと声を出して欲しいという話をしてきています。それが少し、浸透してきているのかなと。下がって外からゲームをみていた時、相手が反則をした瞬間に皆が盛り上がったり…。いままで以上によい雰囲気だな、と感じました」
5月5日、茨城・筑波大グラウンド。関東大学春季大会Bグループの初戦に挑んだ。同じ関東大学対抗戦Aに加盟する早大を、38−21で制した。
かたやこの日が2戦目となった早大はここまで2連敗。この年就任の相良南海夫監督はこうだ。
「結局、練習通りだったなと。(この日も普段と同様)全部ミスで終わっているんです。ミスへの意識が低かった。ここは我々のマネージメントの問題もあると思いますが…。ポジティブなミスはいいのですが、きょうはイージーなミスが相手のスコアになっていた」
前半21分までのこう着状態を破ったのは筑波大だ。自陣中盤で相手のパスをカットすると、WTBの仁熊秀斗の好ランを交えて敵陣ゴール前へ進む。最後はSOの島田悠平がインゴールを割るなどし、7−0とした。
筑波大は続く29分、相手のエラーをきっかけに速攻。14−0とリードを広げた。筑波大の守りは光っていて、早大のSHを起点としたフェイズにFW陣が何度も鋭いタックルを浴びせた。ランナーを孤立させれば、球を手放さないノット・リリース・ザ・ボールの反則を誘っていた。スクラム、ラインアウトでも終始圧力をかけ、37分にはSHの杉山優平が加点(19−0)。ハーフタイムの時点で24−0とほぼ勝負を決めた。
対する早大も、昨季までSOだった岸岡智樹を後半15分に投入。陣形の隙間をえぐるキック、防御の目を散らす展開攻撃などで巻き返しを図った。
19、29、34分のトライで31−21と迫り、岸岡は「後半は風下でキックが使いにくいなかでいかにエリアマネジメントができるか、いかに9番フェイズ(SHの周辺でのぶつかり合い)を避けて外側を突破するかを考えました」。しかし、反撃はここまでだった。
筑波大は大西主将が退いてからだめ押しのトライを決めるなどし、古川拓生監督はこう締めるのだった。
「早大のメンバーが実際(昨季までのベストメンバー)と違うので、対早大という意味では何とも言えません。ただ、きょうは初めて筑波大のファーストジャージィを着る選手が多いなか、セットプレーでゲームが崩れずにやれたのはよかった。昨季まではスクラム、ブレイクダウン(接点)周りで後手を踏んだところがありましたが、きょうは可能性を示せた」
昨季は対抗戦5位に終わった筑波大では、2011年主将の村上大記コーチが就任した。
過去には20歳以下日本代表のアナリスト兼サポートスタッフを務めたこともある村上コーチは、昨季まで3シーズンはトップリーグの宗像サニックスでプレー。今季から筑波大大学院で学びながら後輩たちを指導する。
いまの大西主将は、かつての主将が醸す雰囲気をこう見ている。
「(村上コーチは)筑波大で主将をやられて、トップリーグでもいろんなチームと対戦されてきた。メンタル面で僕らに勇気を与えてくれる。すごく助かっています」
インサイドCTBで登録された岡崎航大がSOのような位置でパスを放つなど、ポジションを柔軟に入れ替えながらの攻撃も披露。村上コーチは「チャレンジするか、手堅く行くかというプレー選択の判断や精度」などを今後の課題としたが、後半の中盤までの防御などには一定の評価を与えていた。
かたや昨季の対抗戦を4位とする早大は、NO8の下川甲嗣やSHの齋藤直人らを年代別の代表活動や「コンディション不良」などで欠く。これが筑波大指揮官の「対早大という意味では何とも言えません」という言葉につながる。
もっともいまの相良監督は、特定のレギュラー選手に依存しないメンバー編成を意識。選手層拡大や競争の激化に力を注いでいる。
SOで先発した加藤皓己が鋭い仕掛けで魅したのを「前が見えている。フェイズを重ねるなかで手詰まりになるところもあるので、もう1歩、成長すれば」と評し、エラーに泣いたチームをこう見つめた。
「選手はやりたいストラクチャーを理解している。あとはブレイクダウンでのベーシックスキルなどの精度を上げていく。なかなか結果は出ないですが、下を向かずに行きます」
好発進した筑波大は13日、本拠地で日体大(昨季対抗戦・6位)と激突。かたや辛苦に耐える早大は同日、東京・早大上井草グラウンドへ中大(昨季関東大学リーグ戦1部・5位)を招く。
(文:向 風見也)