国内 2018.04.29

法大、中大との春季大会初戦制す。島津久志監督が「ほっとした」理由とは。

法大、中大との春季大会初戦制す。島津久志監督が「ほっとした」理由とは。
多くのファンが観戦するなかおこなわれた春季大会の法政大×中央大(撮影:向 風見也)
 勝者は安どした。最後は、この日グラウンドにいた全部員が整列して観客席へ謝辞を述べる。
 最近は、従来は下級生もおこなっていた炊事当番を最上級生の仕事とするなど部の仕組みにも手を加えたようだ。法大の島津久志監督は、試合内容と試合後の態度などについて語る。
「正直、ほっとしました。実際にできるかできないかはさておき、(試合中にすべきことを)理解はしてくれているようでしたので。プレーとは関係のないグラウンド外のことで、変えていかなくちゃいけない。それを選手自身が感じているのは、いいことなんじゃないかと思います」
 敗者は危機感をあらわにした。法大が挨拶をしていたちょうどそのころ、グラウンドの隅で長らく円陣を組む。
 この日テーマとしていた鋭い出足の防御が不調に終わったことなどを踏まえ、選手主体が口々に反省点を出し合っていたという。中山浩司ヘッドコーチ(HC)は振り返る。
「春のシーズンといえど、選手が危機感を持って話をしていた。次に向けて切り替えができたようで、あとはこちら(スタッフ陣)がしっかりと(方向付けを)していくというところです。大きく突破された後など、どういう状況でも(用意した)ディフェンスをやっていこう…と」
 4月29日、東京・法大グラウンドで関東大学春季大会Bグループの一戦があり、加盟する関東大学リーグ戦1部で昨季4位だった法大が同5位の中大を47−28で制した。両軍にプレッシャー下でのパスミスが目立ったなか、法大はNO8の山下太雅、CTBの長利完太が再三、ラインブレイク。要所で加点した。
 かたや中大は、防御網に穴をあけると同時に攻め込んだ先でのインターセプトやターンオーバーも失点につなげられた。33点差をつけられて迎えた後半38、44分こそたて続けにインゴールを割ったが、選手たちの脳裏に浮かんだのは防御を破られての失点場面だったか。例えばスコアが14−7から21−7に動いた前半39分の法大のトライシーンは、法大CTB陣の妙技と中大防御ラインのかすかなばらつきの合わせ技のようだった。
 中大のFLである鬼頭悠太は、攻守両面の課題を見直す。
「前に出て止めるディフェンスにこだわってきたのですが、きょうはすれ違い、ノミネート(立ち位置の決定)など細かいミスがあった。アタックでも、テンポが出せなかった。(ランナーへの)サポートの厚みを増やそうと言っていたのに、ブレイクダウン(ランナーを起点としたボール争奪局面)での強さ、速さがまだまだでした。今日は反省ばっかりの日でした」
 快勝した法大は、一昨季は下部との入替戦に進むなど低迷していた。東福岡高を筆頭に全国トップクラスの強豪校から選手が集まっているものの、指揮官の言葉通り環境整備が急務とされていた。
 戦力面でも、今季の春先はPRの土山勇樹、FLのウォーカー アレックス拓也、FBの中井健人などの主力候補を負傷や留学で欠く。もっとも「けが人が多い分、下の選手たちが(レギュラー組に)上がって来られている」とは、FLとして先発した橋本睦の弁だ。島津監督もまず、1年生ながらLOで先発した大澤蓮の献身的なプレーなどに目を細める。組織の活性化を喜び、引き続き愛されるクラブを作ってゆくという。
「今年から、4年生も全体に仕事を与えることにも取り組んでいます。それで(選手の)意識もどんどん変わっている。そこで春に結果が出始めたという意味も含めて、ほっとしています」
 上位3傑が大学選手権へ出られるリーグ戦1部の8チーム中、海外出身選手を擁さないのはこの日ぶつかった両軍と今季昇格の専大の3チームのみ。秋から本格化するシーズンでは、骨格の大きさやパワー、スピードに長ける相手との戦いが避けられない。
 中大の中山HCが「やることは変わらない。中大の強みであるディフェンスを出してゆく。シンプルです」と言えば、身長177センチと決して大柄ではない法大の橋本は「誰にも負けたくないので、でかい相手もしっかり止める。試合に出たら外国人をぶっ飛ばして、大学選手権に出たい」。この日が互いにとっての初戦だった春季大会を通し、大男をなぎ倒すための底力をつけたい。
(文:向 風見也)

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