海外 2018.04.06

サンウルブズのサム・ワイクス復帰。ラインアウトの「問題解決」へ。

サンウルブズのサム・ワイクス復帰。ラインアウトの「問題解決」へ。
サンウルブズ2年目のサム・ワイクス。元U20オーストラリア代表(Photo: Getty Images)
 頭を打ってからは、長いことだるさを引きずった。でも、いまは大丈夫。サム・ワイクスがフル回転を誓う。
 
 4月7日、東京・秩父宮ラグビー場。国際リーグのスーパーラグビーの第8節がある。
 日本から参戦3季目のサンウルブズでは、「ワイクシー」ことワイクスがチームにとって2戦目にあたる第3節以来の先発を果たす。試合のないバイウィークを挟んで開幕5連敗中というチームにあって、空中戦の改善などを目指す。
 復帰戦を2日後に控えた5日、千葉・クボタグラウンドで練習に参加。優勝経験のあるワラターズを向こうに、意気込みを明かす。
「試合開始からサンウルブズのアタッキングスタイルを持って戦う。失点してからエンジンがかかるのではなく、先制攻撃をしていく」
 3月3日、秩父宮でレベルズとの第3節に先発も後半3分にリタイアする(●17−37)。激しいコンタクトに伴う脳震盪のためだ。同じ理由での離脱は昨シーズンにも経験しているが、翌日以降のダメージは当時の比ではなかったという。南アフリカに遠征した本隊から離れて国内で調整も、グラウンドに立つことすらままならなかった。
「試合の直後はすごく倦怠感があり、それが1週間くらい続きました。その期間は、トレーニングをしようにもなにせ身体がついてこない…。ちょうどスーパーラグビー100キャップを達成した試合でも同じようなことがありましたが、その時よりも重かったです。ですが、いまはバイウィークなども経て100パーセントの状態です」
 身長197センチ、体重107キロの29歳。出身のオーストラリアでウェスタン・フォースの一員としてスーパーラグビーデビューを果たし、昨季加入したサンウルブズで同100試合出場を達成している。
 持ち味は柔らかなフットワークと手先の器用さだが、ラインアウトでの働きも求められる。
 ラインアウトとは、タッチラインの外から投げ入れられるボールを空中などで獲り合うプレーの起点だ。ワイクスは前年のサンウルブズでラインアウトの作戦中枢を任され、練習時は他の選手を集めて支柱役と捕球役の連動などを指示していた。
 コーチングスタッフの細分化が進む現代ラグビー界にあって、前年のサンウルブズはフィロ・ティアティア ヘッドコーチ(HC)がラインアウトの作戦立案をサポートする状態だった。苦しい台所事情にあってワイクスは奮闘し、自軍ボール獲得率を18チーム中15位の85.3パーセントにまとめた。
 
 今季はワイクスが2試合目で離脱し、唯一の2メートル台であるグラント・ハッティングも時折けがでメンバーから外れた。
 長身選手が限られただけに適所へのボール投入や跳躍の速さなどが必須とされたが、ふたを開ければ投入役であるHOの堀江翔太は「いいところへ放っても人(相手)がいて…」。自軍成功率は全15チーム中最下位の76.8パーセントとなった。
 もっともワラターズとのゲームでは、LOにワイクスと今季初先発のジェームズ・ムーアが入る。いずれも身長は190センチ台後半で、LOを本職とする。ジェイミー・ジョセフHCの見立てに沿えば、次戦では課題解決が期待される。
 今季ラインアウトを指導するのはジョセフHC。獲得率低迷の原因を「「ちゃんとしたメンバーでラインアウトができなかった。これまでは本職ではないルースFW(第3列)をLOに起用してきました」とし、こう続ける。
「今回はちゃんとした形になると思います。LOにスペシャリストが揃っているのだから、ベストを尽くすだけです。特別なことはありません」
 脳の揺らめきから解き放されたワイクスは、自身が欠場した試合でのラインアウトを「コンビネーション、高さの問題があったと思います。グラントがいないことは大きなロストで、きつかったですね」。自らその隊列へ加わり、混乱の最小化に挑む。
「ラインアウトでは、試合中に問題が起きた時に選手たちで解決できるようにならないといけません。今度は自分とムーアに身長があり、今週はすごくいい準備ができています。(ワラターズ相手に)ボールを獲れるところを、うまく研究できていると思います。リザーブの選手も練習を重ねているので、誰がいつ試合に出てもパフォーマンスを発揮できる。序盤にうまく獲れなかったとしたら、すぐに問題解決をする」
 2015年に来日。日本のトップリーグではコカ・コーラ、パナソニックでプレーし、居住期間3年を経過した後は日本代表入りも請われそう。いまは狼軍団の一員として「シャープに戦う」。球の出どころを安定させ、今季初勝利をおぜん立てしたい。
(文:向 風見也)

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