国内
2018.04.05
「小さい子でもできる、を見せる」。高鍋が大敗しても可能性を感じたわけ。
高鍋の清山総介(右)。昨年度の花園1回戦、國學院栃木戦でトライを決めた直後の写真
(撮影:早浪章弘)
ボールを動かす。グラウンドの左右幅をいっぱいに使う。檜室秀幸監督は言う。
「相手がディフェンスをセットする前に(接点から)球が出るような、異次元のような速さを追求しています。あとはディフェンスを整備してロースコアへ持ち込めると、勝機が見える。小さい子でもできるんだ、ということを見せたい」
全国高校選抜ラグビー大会(埼玉・熊谷スポーツ文化公園)に出たチームにあって、高鍋は小兵ならではの生き様を貫きにかかる。背番号7をつける清山総介主将も、自軍の強みを誇る。
「小さいチームが大きいチームに勝つのはすごいこと。勝ったら、嬉しいです」
主要先発要員の15名中8名が身長170センチ未満。ぶつかり合いに多く参加するFW第3列には160センチ台が並び、防御の隙間を射抜くのが得意なFLの清山主将も身長168センチ、体重74キロという小兵だ。
3月31日〜4月3日にあった選抜大会の予選Gグループでは、東京との最終戦に敗れ1勝2敗。決勝トーナメント進出を逃した。体格のある相手に前半を0−21とされた指揮官は、「相手が(高鍋ボールの)ブレイクダウン(ボール争奪局面)で…。(地元の)宮崎では経験できないしつこさでした。勉強です」。もっとも大会を通じては、課題よりも収穫の方が多かったとする。
昨冬の全国高校ラグビー大会(大阪・東大阪市花園ラグビー場)で8強入りした日本航空石川に34−12で勝利。相手防御が揃う前にスペースへボールを運び、スコアを重ねた。
続く1日には同準優勝の大阪桐蔭に12−56で敗戦も、檜室監督は「練習でやっているように、端から端までパスをつなげられた」。シーズンが本格化する秋への助走期間を、実りのあるものにできたというのだ。
「(大会を通して)らしさは出せた。小さくても…という可能性を感じさせるリーグ戦でした」
さかのぼって2月、佐賀県総合運動場での九州新人大会に参戦した。準決勝では、一昨季に日本一となった東福岡に0−92と大敗。もっとも檜室監督は、この敗戦後に財産を得る。
「もっとフィジカルを鍛えれば、なんとかなるんじゃないか」
なんと、対する藤田雄一郎監督からアドバイスを受けたのである。藤田監督にとって、檜室監督は福岡大時代の後輩。関係性に伴う助言で、帰郷後の指針を形作ることができた。
「ウェイトの回数を増やして、毎日タイヤを引いて…。いまはその(継続強化の)途中です。下半身をどん、と大きくしようかと」
攻撃時のブレイクダウンで相手の力強い妨害を引きはがすべく、「下半身」の粘りを蓄える。その延長で、目指している素早い球さばきと大きなパス展開を再現しやすくする…。選抜大会は、この肉体強化計画の「途中」の段階で迎えていた。明確なプランニングがあるから、この段階でブレイクダウンに手を焼いても悲観しないのだ。
檜室監督はこう展望する。
「これからフィジカルを上げればもう少しコンタクト負けしなくなって、もうちょっと良くなる…と。いい兆しが見えました」
トライゲッターでもある清山主将は、「フィジカルの部分で負けていた。もっと身体を大きくしないといけない。FWがディフェンスでもっと頑張らないといけない」と選抜大会を総括。脳内のイメージを、クラブの方針に一致させる。こうも補足する。
「練習中のコンタクトで受けてしまうと、それが癖になって試合に出てしまう。(今後は)練習中でもしっかり踏み込んでコンタクトするようにしたいです」
体格差に劣る戦いも「慣れました」と清山主将。巨木をなぎ倒すべく、身体を鍛えて戦法を磨く。
(文:向 風見也)