国内 2018.01.17

証言で振り返るトップリーグプレーオフ決勝。大物離脱の意味は?

証言で振り返るトップリーグプレーオフ決勝。大物離脱の意味は?
決勝戦でパナソニックの山沢拓也へタックルにいくサントリーの村田大志(撮影:松本かおり)
<ラグビートップリーグ2017−2018 プレーオフ 兼 日本選手権 決勝>
サントリー 12−8 パナソニック
(2018年1月13日/東京・秩父宮ラグビー場)
 サントリーは信じていた。今季無敗のパナソニックの一枚岩の防御からも、穴を作れるのだと。
 決勝戦当日、それを実証する。
 2点リードで迎えた前半33分、CTBの村田大志が自陣22メートル線付近左から人垣をすり抜ける。ここからサントリーは倒された先の接点周辺、左端の区画などを素早く攻略。敵陣22メートルエリアに入ると、鋭角に駆け込むランナーの突進などで右に進路を取る。一転、逆側へ振る。
 左タッチライン際でフィニッシュを決めたのは、SOマット・ギタウの絹のパスをもらったWTBの江見翔太だった。
「スペースをワイドに保っていたところ、パスを放ってくれて。アタックしながら、自信を持てていた」
 CTBの村田は続けた。
「ディフェンスに(簡単に)穴が開かないとイメージして、いろいろなところからアタックしました。がまんしながら、スペースを見つけられました」
 ここでスコアは12−5。気圧されたパナソニックで途中出場したSOの山沢拓也は、かく振り返る。
「自分たち(の守備)が準備しきれないところを、突かれた」
 後半16分にはパナソニックがペナルティゴールで12−8と迫る。戦法を陣地獲得からボール保持中心に切り替え、「攻めたら行ける!」の声をかけ合う。しかし以後は、その「攻めた」先で宝を失う。
 21分頃にはサントリーのペナルティをきっかけに敵陣ゴール前へ進むも、フェイズを重ねた先でランナーが孤立。持っていた球にサントリーのFB、松島幸太朗が絡む。
「ゲイン(突破)してからタックルされた相手。(ボールの周辺は)がら空きだったので、行きました」
 続く27分頃には、敵陣中盤左にいたパナソニックの山沢がサントリー防御網を破ろうとして落球した。
「『行ける、かな?』と自分でも迷いながら行ってしまった。チームを勢いづかせられず、悔しいです」
 がまん比べは終盤、より濃密になる。
 後半32分、サントリーのCTB中村亮土が敵陣10メートル付近から同22メートル線エリア左中間のスペースへキック。WTBの中鶴隆彰が弾道を追い、間もなく攻撃権を得る。
「前半から(防御網の)後ろのスペースが空いていたので」
 サントリーはここから約40度も接点を作るが、最後はパナソニックのFL、布巻峻介の絡みで反則を誘う。ロスタイム突入後の2分間で、敵陣ゴール前右まで進んだ。
 しかし、ここでのラインアウトを確保した後にまたボールを落とす。
 その瞬間に起きたことを、負けたPRの稲垣啓太が振り返る。
「相手がディフェンスのシステムをいじっていて、それに対して僕らも(本来の法則を)いじろうとしました。今季もそういう場面は何度もあったのですが、(きょうは)ここで細かいミスが起きました」
 パナソニックは、オーストラリア代表経験者の途中離脱にも泣いた。
 SOのベリック・バーンズは前半10分に退き、攻守逆転の切り札だったFLのデービッド・ポーコックも脳しんとうで実質約30分のみの出番。それを惜しむ声はパナソニック陣営からも漏れた。一方で勝った村田は「確かに…」とその影響を認める前に、あえてこう断りを入れた。
「あまり、気づかなかったですけど」
 そう。ワールドカップ8強以上を目指す国の最高峰リーグにあって、大物外国人の出場可否で勝敗が変わるとしたらおもしろくない。
(文:向 風見也)

PICK UP