国内 2017.10.22

手数より有効打。ポーコック擁すパナソニック、サントリーとの全勝対決制す。

手数より有効打。ポーコック擁すパナソニック、サントリーとの全勝対決制す。
大一番で大仕事をしたデービッド・ポーコック。マン・オブ・ザ・マッチ(撮影:YOSHIO ENOMOTO)
<ラグビートップリーグ 2017−18 第9節>
パナソニック 21−10 サントリー
(2017年10月21日/埼玉・熊谷陸上競技場)
 相手の懐へ飛び込み硬いストレートを放つ若きチャンピオンを、クリンチとフットワークで魅す元チャンピオンがいなしたようだった。
 注目の全勝対決は、一昨季まで3連覇したパナソニックが昨季王者のサントリーを制す。
 「新しいチャレンジを」とは、サントリーの沢木敬介監督。キックオフ早々にノーホイッスルトライを許すも波に飲まれず。タッチライン際の穴場を制する施策を次々と打ち出したのは、3点差を追う前半25分だ。
 敵陣22メートルエリア左のスクラムから右へ、右へと攻め、狭くなった右の空間に2人の選手が回る。駆け込む。そのうちの1人のFLツイ へンドリックが飛び出す相手を引き付け、端にいたWTB松井千士に2トライ目を贈った。
 8−10と逆転。沢木監督は言う。
「必ず空くスペースはある。そこを自分たちでしっかりと分析した」
 もっともサントリーの得点はこれで打ち止め。パナソニックの防御網にあって、FLデービッド・ポーコックが光る。
 31分、自陣22メートル線付近での絡みつきで勢いに乗るサントリーの攻めをストップさせる。
 さらに57分だ。自陣22メートルエリア右でモールを押し込まれ、10メートル後ろはゴールラインといった位置まで下がった瞬間。球が地面に置かれるや、青いジャージィの7番が黄色いジャージィの懐へ頭をねじ込む。楕円の上を乗り越える。サントリーは逆転の好機を逸した。
 FLポーコックは接点に飛び込むたびに相手に激しく引きはがされながら、次第に得意の攻守逆転の数を増やす。その働きをこう振り返る。
「他の仲間のいい防御があってこそ、です」
 判定も勝負を左右しそうな接戦にあって、パナソニックのFL布巻峻介は順法に徹した。
「きょうは、レフリーを信じる日」
 かたやサントリー陣営も「ディシプリン!」と叫び規律遵守を促していたが、ハーフタイム直前にペナルティゴールで11−10と勝ち越されるなど要所の笛に泣いた。
 沢木監督が気になったのは、対するFLポーコックに仕留められたあの場面だった。
「モールで(相手の)ペナルティを取れなくて。レフリーの特徴、傾向を理解して、モール組むのがベストなのかという判断もしないと」
 決定的なスコアが刻まれたのは、後半21分。防御網をせり上げた先のハーフ線付近右でCTB松田力也が攻守逆転。ラン。最後は並走したWTB山田章仁がトライラインを割り、CTB松田のゴール成功もあって18−10とリードを広げた。
 フル出場のPR稲垣啓太は「(防御の)ラインスピードを上げるのはきついけど、そうすることで(結果的に)楽になる」と手数よりも有効打で勝った背景を述懐。かたやサントリーのSH流大は、終盤に有効打が出なかった現象を潔く語った。
「攻撃で人数(立つ選手の数)を減らすなか、向こうの人数が揃っていた。ハードワークをもう1回、チームに植え付けないと」
 シーズン終盤の再戦を期待させる80分だった。
(文:向 風見也)

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