国内 2017.10.01

基本プレーを当たり前に。筑波大・鈴木啓太、1季遅れの最終学年に賭ける思い。

基本プレーを当たり前に。筑波大・鈴木啓太、1季遅れの最終学年に賭ける思い。
筑波大副将の鈴木啓太(撮影:BBM)
 鈴木啓太が、浪人の末に門を叩いた筑波大ラグビー部で最終学年を迎えている。春先、副将として挑むシーズンをこう見据えていた。
「もちろんチームとして最高の結果を残したい。また、個人的にも1年から試合に出させていただいていますが、ちゃんと成長しているというところを見ていただきたいです」
 長らく不動のインサイドCTBとして屹立。身長174センチ、体重84キロと決して大柄ではないが、防御の死角へ鋭く駆け込みチャンスを作る。時にタックラーの裏側へのキックを配すなど、年を重ねるごとにプレー選択の幅も広げてきた。身体能力のみに頼らぬ戦いざまについて、かつてこんな考えを明かしていた。
「守備をパッと観て、相手のいないところ、空いているところへ走り込む。それだけを意識します。あまり難しいことを考えると、動けなくなるので」
 筑波大と同じ茨城にある茗溪学園高にいた頃も、副将を務めた。3年時の第92回全国高校ラグビー大会では、準々決勝で当時大会4連覇を狙っていた東福岡高校を31−24で破る。クラブの伝統たる、テンポの速い展開攻撃を支えた。
 その前後に19歳以下日本代表、高校日本代表にも選ばれ、「自分のプレーの幅が広がったかな、と思います。できることとできないことがはっきりした」。当時の茗溪学園高で主将を務めたSHの大越元気(現サントリー)は、こう証言する。
「ラグビーをわかっているな、と感じます。ミーティングの時もそういう(的を得た)発言がありましたし、高校の時は頼りになりました」
 ちなみに大越によれば、鈴木は学業優秀でも鳴らしたようだ。得意科目の生物には暗記項目も多かったが、「ラグビーと一緒で、やるしかない。課されたことなので、頑張るところは頑張りました」と本人。もっとも高校卒業後は、浪人生活を強いられる。
 1月まで全国大会で楕円球を追い、一般入試での大学合格を目指した結果だ。
「推薦で取ってもらえるところがなくて一般入試をするしかなかった。学校の勉強はやっていたんですけど、受験用の勉強はしていなくて…という感じです。浪人の時はラグビー、していなかったですね。最初の1か月くらいはボールを触っていたんですけど、寂しくなって。パスを投げても自分で取りに行って、もう一度パスをする。…1人じゃないですか」
 必死に受験勉強をするなか、両親の「使える権利はすべて使え」というアドバイスを受け筑波大の推薦入試に合格。久々にラグビーに携わるや、すぐにチームの信頼を集めた。ブランクをものともしていないように映る同級生を、大越は「やっぱり、ラグビーが好きなんじゃないですか。自分をしっかり持って、周りに影響されずにしたいラグビーをやりきっているというか」と見た。
 当の本人は、目指す選手像を聞かれこう答えたことがある。
「それは、どんどん変わっていくと思うのであまりこれというのは決めていないですけど、言うのであれば、基本ができる選手でありたい。基本はおざなりになりがちですけど、一番、重要なので。何も考えなくても基本プレーが当たり前にできる…。そんな選手になりたいです」
 加盟する関東大学ラグビー対抗戦Aでは9月24日、東京・キヤノンスポーツパークでの慶大戦を26−43で落としている。10月1日には東京・秩父宮ラグビー場で明大とぶつかる。2試合目にして初勝利を目指している。
「1年生の時はがむしゃらにやって先輩たちについていく感じ。でもいまは、できなかったことができるようになっていたりするところを見ていただけたら。後輩に何かを残したいですし、周りにも、あぁ、うまいんだなと思ってもらえたら嬉しいです」
 卒業後は、トップリーグで上位を争うクラブでラグビーを続けるつもりだ。鈴木のプレーするCTBに海外出身選手を在籍させるクラブも多いなか、凡事徹底の凄味を貫いてゆきたい。
(文:向 風見也)

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