国内
2017.09.30
攻守でエリソン爆発。リコーがNEC制した
<ラグビートップリーグ 2017−18 第6節>
リコー 29−3 NEC
(2017年9月29日/東京・秩父宮ラグビー場)
リコーは在籍通算7季のタマティ・エリソンを本職のCTBで起用。昨季からこの人を司令塔のSOに配してきた神鳥裕之監督だが、CTBの隣に立つWTB、アマナキ・ロトアヘアの突破力を活かすべく、今度の決断を下した。
「このアイデアはシーズン当初からありました。タマティもこのポジションを得意にしているので」
果たして本人は要望に応え、3勝2敗同士でのカードを制した。
攻めてはSOに入ったロビー・ロビンソンのパスへの駆け込み、相手の飛び出す防御を引き付けての配球でチームを前に押し出す。
それ以上に試合を引き締めたのが、勘所を得た下働きだった。
3点リードで迎えた前半31分。
相手のキックにより自軍深い位置から攻め返すこととなるなか、自陣中盤で左大外のスペースへパスしてWTBの長谷川元氣を走らせる。それだけではなく、その長谷川の走った先を流れる走りで追う。
するとどうだ。接点の先では、この日再三の攻守逆転を決めていたNO8のアダム・トムソンがいた。
エリソンはそのまま、その場でボールを奪わんとするトムソンへぶち当たる。引きはがす。
ここで命をつないだリコーは2分後、逆側でロトアヘアのランを交えてチーム初のトライを決めた。ゴールも決まり、10−0。
マッチアップした2人は、ともにニュージーランド代表経験者。スーパーラグビーのレベルズで同僚だったこともある。
試みに失敗したトムソンが「ダーティー!」と冗談交じりに苦笑するかたわら、エリソンは涼しげに言う。
「彼は早く仕留めないといけなかったから。友人と戦えるのはいいことです。特に勝った時は」
守ってもエリソンは魅す。
ハーフタイム直前、後半初頭と、いずれも自陣22メートルエリアで相手の接点の球へ飛びつく。倒れたままボールを離さぬノット・リリース・ザ・ボールの反則を誘った。
さらに後半11分頃、自陣22メートルエリア右側をえぐられると見るやカバー。ランナーをタッチラインの外へ押し出し、ピンチを脱した。
「(直前まで)相手とやり合いをしていても、危ないと思ったらそこへ戻って来てくれる。危機管理能力が高いので」
当該の場面をこう振り返ったのは、好タックルを連発した味方FLの武者大輔副将である。
対するNECのCTB、釜池真道は、こう天を仰ぐ。
「勝負どころの危機察知はすごい。経験で培われたのかなと」
NECはリコーの飛び出す防御の裏へキックを放つなど、準備に即した動きを遂行。対するリコーは名手の仕事にも助けられ我慢の時間帯をしのぎ、後半20、29、38分と加点した。殊勲のエリソンは言う。
「役割はシンプルでした。パスは、僕の強みでもある。WTBに渡せたのは、よかったと思います」
チームの「落ち着きを保ち、お互いをより信じ合っている」とも称える。その雰囲気を作る仕事をした1人が、エリソン本人だった。
(文:向 風見也)