コラム 2017.09.26

3年ぶり「大阪ダービー」はNTTドコモが初勝利 31−21で近鉄を降す

3年ぶり「大阪ダービー」はNTTドコモが初勝利 31−21で近鉄を降す
ホームのNTTドコモ(赤)はスクラムでコラプシングの反則を奪う。
 日本ラグビー協会のトップリーグ部門長、太田治は言った。
「今日はフィルヨーンさまさまだよね。パスもそう。キックもよかった」
 リーグ運営のトップは、9月24日、万博記念競技場にいた。運営サポートをしたレッドカンファレンスの「大阪ダービー」は、本拠地が南港のNTTドコモが、花園の近鉄に31−21で競り勝つ。
 太田の言葉通り、FBリアン・フィルヨーンは、キッカーとして得点の半分以上にあたる16点(2G、4PG)を記録。今季初のMOM(マン・オブ・ザ・マッチ)に選ばれる。トライ数は同じ3だっただけに、ゲームキャプテンもつとめた34歳の存在は際立った。
 その勝利は単なる1勝ではない。
 今年度からリーグに再昇格したNTTドコモにとって、リーグ戦6対戦目にして、近鉄からの初白星になった。
 ハイライトは11−14の後半7分だった。
 10次のアタックを経て、ボールは右サイドのフィルヨーンに出る。瞬間、攻めの方向を20メートル以上のロングパスで変える。
 薄暮ゲームの照明で輝く白いボールは、逆の左サイドにいた赤いジャージーのCTBパエア ミフィポセチの胸に収まる。
 パエアは自慢のぶちかましを見せることなく、近鉄ディフェンスの割れ目を突き、インゴール中央に駆け込んだ。コンバージョンも決まり、18−14。
 試合の主導権を握る。
 トライシーンを振り返り、フィルヨーンが使った英単語は「Trust」だった。
「あの時は、外からミフィポセチのコールがありました。彼が声を上げたということは、前が空いた、ということでしょう。私はメンバーのコールを信頼しています。だからパスを出しました」
 金色の短髪がまぶしい34歳は、背番号15をつけながら、司令塔の役割をも果たす。
 28−21と追い上げられた後半37分にはPGを決める。トライでは同点にできない安全圏にチームを引き入れた。
 犯したペナルティーは近鉄の9に対して、NTTドコモは7。大きな差はない。
 ただ、フィルヨーンはその半分近くの4つを点数に変えた。さらに、後半19分には約60メートルのPGにもチャレンジする。
「あの距離はいつも練習しています。普段なら50%の確率で入っていますから」
 失敗はしたものの、自陣での反則ができなくなる心理的恐怖を近鉄に与えた。
 トップリーグにおける「大阪ダービー」は、NTTドコモが昇格した2011年度に始まり、今回で6回目だった。これまで5回は近鉄が勝っている。
 ●2011年度 25−39(最終成績はNTTドコモ12位、近鉄5位)
 ●2012年度 7−59(13位と7位)
 ●2013年度 20−21(セカンドステージで対戦。15位と10位)
 ●2014年度 17−21、27−30(ファースト、セカンドステージで対戦。11位と12位)
 2年目ヘッドコーチのダヴィー・セロンは声を上げる。
「Really? I did not know」(本当ですか? 知らなかった)
 フィルヨーンは笑みを浮かべ、「Great」(素晴らしい)とコメントした。
 近鉄は初黒星とはいえ意地を見せた。
 後半34分、副将のWTB森田尚希が右コーナーでトライを奪う。SO重光泰昌が角度のないゴールキックを成功させ、21−28とトライで同点になる7点差に詰め寄った。
 森田は上下2人にタックルを受け、コーナーフラッグを倒した。それでも、内側になる左ひじでボールをグラウンディングする。テレビ判定の結果、得点は認められた。
「ドコモは常に優劣をつけておかないといけない相手です。負けたくはありません」
 所属8年目の執念は技ありの5点を生む。
 近鉄監督・坪井章は視線を彼方に向ける。
「言い訳になりますけど、前田と田淵が前半にケガで退場して、こちらのプラン通りのゲームができませんでした」
 右PR前田龍佑は16分、FL田淵慎理は27分にグラウンドを去った。スクラムでプレシャーをかけ、フィジカルで上回る作戦は、要の2選手を失い水泡に帰した。
 NTTドコモはコカ・コーラ、サニックス戦に続き3連勝。通算成績を3勝2敗とし、勝ち点を12に伸ばした。クボタに代わってレッドカンファレンス5位に浮上。勝ち点で、3位・トヨタ自動車に3、4位・NTTコミュニケーションズに2差に迫った。
 2勝3敗となった近鉄の勝ち点は8。前節と変わらぬ7位に沈んだままだ。
 地元同士の戦いの観衆は4,975人。万博記念競技場の収容人数は21,000である。
 内容の割には寂しい数字だった。
 観客動員を増やす一番の手立ては、両チームがリーグ戦の上位にいて、なおかつ熱戦を繰り広げるしかない。
 一般のラグビーファンは、お金を払っても見る価値のあるゲームをよく知っている。
(文:鎮 勝也)

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