国内
2017.09.22
冴えたSO石田一貴の右足。日体大・田沼監督は「点を線に」
滞空時間の長いハイパント。ピンポイントに落ちるクロスキック。この日のプレースキック成功率は100パーセント。
日本体育大のキャプテンを務めるSO石田一貴の右足が、雨中戦で冴えた。
9月16日に開幕した関東大学対抗戦Aリーグで、昨季7位の日体大は、昨季2位の早稲田大に20−54で敗戦。
しかし雨の中、SO石田が2G2PGで10得点を挙げたほか、後半20分にはモール最後尾からFL渡邉智永が持ち出して右隅にトライ。同28分にはSO石田のキックパスを受けたWTB深見柊真がインゴールへ持ち込んだ。
PR渡邊徹、HO関拓矢、PR村山皓紀がFW第1列を務める日体大FWは、この日多かったスクラム戦でも押し負けなかった。献身的なLO中川真生哉、運動量豊富なFL古閑夢都、BKではFB中野剛通の強気のラン、そしてSO石田の弟であるCTB石田大河のアタックセンスも光った。
前半こそSO石田の2PGに終わった日体大だが、2トライを返した後半のスコアは14−19。
8トライを挙げた早大に試合後、快勝ムードはなかった。
「前半の入りが硬かったです。ミスが重なって点数が離れてしまいました。動きが良くなってきた後半は1トライ差でした」
敗戦をそう振り返る身長174センチ、体重80キロのSO石田は、楕円球に出会った小学3年生の頃からキッカーを任されてきた。
天性のキックスキルを武器に九州学院中・高でもプレー。
2学年下の弟・大河も、同じ進路を辿ってきた。
「高校の時は、グラウンドが実家から遠くて、車で1時間くらいのところにありました。帰りは父が車で迎えにきてくれて、(帰りの車中は3人で)ずっとラグビーの話をしていました。帰っても食事をしながらラグビーの話をしたり、ビデオを観たり」
同じく九州学院でプレーし、卒業後は山梨学院大で楕円球を追った父。そして弟・大河の3人で、ラグビーに熱中する日々を過ごした。
「中学校から一緒にやっているので、特別なことはありません」
弟・大河についてそう語る兄は、今年が最終学年。兄弟そろって日体大のジャージィーを着る日々は残り少ない。
「キックは自分の持ち味だと思っています」
多彩なキックを活かし、大学ラストシーズンを長く長く伸ばしていきたい。
日本代表42キャップを誇る日体大の田沼広之監督は、この日の試合後、反省も交えながら「最後まで諦めずに戦うことができるようになってきました」と就任3年目の手応えを語った。
日体大OBで、リオ五輪レスリング男子銀メダリストの太田忍(ALSOK)からタックル指導を受けるなど、日体大ならではの強化も進めている。
「タックルだとか、基本的なプレーは一つひとつできてきています。それを80分間精度高くやれるようになれば、今日の後半のようなゲームができると思います」
日体大の次戦は、大学選手権の8連覇王者。9月30日、東京・秩父宮ラグビー場で、帝京大と相まみえる。
「(日体大は)一人ひとりの持っている能力はすごく高いものがあるので、それを点じゃなくて、線にしていければ」(日体大・田沼監督)
一人ひとりの力、想いを線にして、王者へ果敢に挑みたい。
(文:多羅正崇)