国内 2017.08.29

開幕2連勝のパナソニック布巻峻介主将、個性派を「ひとつ」に。

開幕2連勝のパナソニック布巻峻介主将、個性派を「ひとつ」に。
キヤノン戦でハードにプレーするパナソニックの布巻峻介(撮影:大泉謙也)
 日本最高峰のトップリーグで一昨季まで3連覇を果たしたパナソニックでは、3年目の布巻峻介が主将に就任。打診されたのは開幕直前期だったが、前年度からゲーム主将を務めるなど船頭役への違和感はない。
 8月26日、埼玉・熊谷陸上競技場での第2節には、オープンサイドFLとして前半終了まで出場した。キヤノンを43−8で制し、開幕2連勝を決めた。
 このチームの主将をするには、どんな心構えが必要か。布巻は即答する。
「このチームには多彩な、すごい選手が集まっている。逆に、個性の強い皆をひとつにできるかが大事なポイントだと思います」
 個性をつぶさず、個性をまとめる。それが信条だ。
 群馬県太田市で活動するパナソニックでは日本、オーストラリア、韓国での代表経験者が計24名も揃い、他にもトンガ、ニュージーランド、タイの国籍を持つ選手が在籍する。
 さまざまな背景を持つアスリートが集うなか、かつてオーストラリア代表を率いたロビー・ディーンズ監督は「コミュニティーとして機能するチームが、優勝してきている」と常に強調。攻守のシステムやゲームプランを明確化し、その遂行に必要なスキルやフィジカリティを身に着けさせようとしている。そこで布巻もまた、自らの選手哲学をもとに「ひとつ」のすすめを強調するのだ。
「ラグビーに限らず団体スポーツでは、どんなにすごい選手が集まってもチームになれなかったら絶対に勝てない。すごい選手の個性を出すのも大事なんですけど、まずはチームになることが重要だと僕が思っているんです。ロビーさんも、そういうことはいつも言います。例えばチームで決めた戦術、グラウンド外のルールという枠のなかで、自由にやってもらう。1個、1個、細かく決めたくはないのですが、大枠だけは守ってねと言っています。そこさえ守ってくれて、そのなかで個性を出してくれたらいい」
 キヤノンとの一戦は、前半20分まで無得点という一進一退の攻防だった。
 そんななか布巻は「ボールキープを」と意思統一。SOのベリック・バーンズが放つキックと他選手の献身的なチェイスによって得点機を得たら、まずはエラーを最小限に留めるよう心掛けた。
 29分、バーンズの敵陣22メートル線付近へのハイパントを相手が大きくはじく。敵陣中盤の落下地点で待っていたSHの田中史朗が、やや相手の少ない逆側のスペースへ展開。WTBの福岡堅樹らのランで敵陣ゴール前に進めば、FW陣が丁寧にボールを保護。最後はCTBのディグビ・イオアネがインゴールを割った。8−0。
 ハーフタイム直前にも敵陣左側の防御をランとショートパントの再獲得で切り裂くと、やはりFW陣が愚直に密集脇を突く。イオアネが2トライ目を決めるなどし、パナソニックは22−0のスコアで後半を迎えることとなった。
 布巻の述懐。
「(序盤の)アタックでは簡単に相手にボールを渡してしまって、相手を楽にさせた。途中からボールキープを意識。フェーズは多く重ねてしまったんですけど、それがスコアまで行った。お互い、我慢の戦いだったと思います」
 この日は山田章仁が2トライ、福岡が1トライと両WTBが魅した。持ち場のタッチライン際を離れて防御のひずみに顔を出すなど、得点シーン以外でも八面六臂の活躍だった。ディーンズ監督は「両WTBは半分のチャンスを完璧なスコアにつなげてくれた。それが大きかった」と口にする。
 タレント集団がチームの「大枠」を深いレベルで理解、共有しつつあるなか、布巻は「最初は僕らがふわふわと入って、相手に主導権を握られそうになった。ただ、そのなかでも修正できて勝ちにつなげられたのには、自信を持っていいと思います」。
 9月1日、東京・秩父宮ラグビー場での第3節では東芝と戦う。東福岡高ではゲームリーダー、早大でも副将を務めてきた25歳は、難局でこそ「ひとつ」を意識するだろう。
(文:向 風見也)

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