国内 2017.06.03

入社3日目で移籍後デビュー。田村熙、サントリーの10番を背負って走る。

入社3日目で移籍後デビュー。田村熙、サントリーの10番を背負って走る。
機を見て自ら仕掛けたサントリーSO田村熙。(撮影/松本かおり)
 入りたてのほやほやで10番を背負った。
 6月3日、町田市のキヤノンスポーツパーク。多くのファンを集めておこなわれた練習試合にて、アウェーのサントリーが35-21のスコアで勝った。ホームチームから5トライを奪っての快勝。勝者のSOを務めたのが田村だった。
 昨季1年だけ所属した東芝を離れたのが3月31日。サントリーには6月1日に入社したばかりだ。
 前所属チームが嫌だったわけではない。成長させてもらったし、いい経験もできた。そう言って、「多くの方々に(移籍する理由を)しっかり伝えなければいけないと思っていました」と続けた。
「自分がもっと成長するためには、どうしたらいいんだろう。そう考えて決断しました」
 以前に指導を受けたことのある沢木敬介監督の存在も決断の理由のひとつになった。
 6月1日以前、サンウルブズやナショナル・ディベロップメント・スコッドの練習があるときはそこでトレーニングを積み、それらの活動がない期間は母校・明大の練習に参加した。個人でジムにも通った。実戦は2月27日のサンウルブズの今季開幕、ハリケーンズ戦に先発して以来のことだった。
 ジャパンの選考から漏れた際、ジェイミー・ジョセフ ヘッドコーチから足りない点を指摘された。
「ゲームコントロールをもっとできるように、と。シンプルなことですが難しい。でもそこをもっと高め、来年もサンウルブズに選んでもらいたいし、今季の残りのサンウルブズの試合にも出られるようになりたい」
 もっと良い選手になって、今回の決断が正解だったことを証明する気持ちは強い。
 サントリーでの初試合では後半27分まで出場し、チームを勝利に導いた。しかし本人は「(周囲と)合っている、合っていない以前に個人的なミスがあった」と反省しきりだった。
 それでも高いパス能力を見せるシーンがあった。機を見て走り、好キックも。才能の片鱗は感じさせたけれど、高みを見ているからハードルを高く設定する。
「チームに加わったばかりだから周囲と合わないとか、そんなことを言っていられるのはあと何日かだけ。それをカバーするのは自分のスキルだと思っています」
 環境を変えれば自分も変われる。そんな甘いものでもないと覚悟はできている。
「新しいところに行けば、新しいことを教われるわけではない。コスさん(小野晃征)もいますし、簡単には試合に出られないと思っています。自分で変わらなきゃいけない」
 多くの人に迷惑をかけたという気持ちがある。いろんな人への感謝の思いも。結果を残すことが、関わったすべての人たちへの恩返しになると信じ、進化し続けるのみだ。
 リーグ内の紳士協定により、今季の公式戦に出場できるかどうかは、まだハッキリしていない。それでも最善の準備だけは重ねていく。

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