国内 2017.05.10

夢は五輪と「荒ぶる」熱唱。早大の新トライゲッター古賀由教の「失わない力」

夢は五輪と「荒ぶる」熱唱。早大の新トライゲッター古賀由教の「失わない力」
早稲田大のルーキー、古賀由教(撮影:松本かおり)
 大学選手権で歴代最多15回の優勝を誇る早大ラグビー部は、2008年度以来の優勝に向け一昨季から選手の発掘力を強化。その甲斐もあってか、前年度の高校日本一に輝いた東福岡高から高校日本代表のメンバーが加わった。
 古賀由教。公式戦デビューを果たしたのは5月7日、東京・早大上井草グラウンドでのことだ。関東大学春季大会Aグループ2戦目で、WTBとして先発フル出場を果たす。昨季の準チャンプである東海大に29−67と敗れるも、2トライを奪う。
 出色のシーンは、前半40分の2本目である。
 中盤でのルーズボールを確保した早大が一気に前進し、左大外へ展開する。敵陣中盤でFBの横山陽介のパスを受け取った古賀は、グラウンドの外側へ、内側へと走路を変えながらスピードを上げてゆく。
 ゴールラインが近づいたところで、防御が目に入る。ややバランスを崩したかに映ったが、すぐに身体を起こして目の前のタックラーにぶつかる。身長176センチ、体重81キロの身体を前傾させ、そのままインゴールへボールを押さえつけた。
 チャンスをものにした。何より、ボールを失わなかった。当の本人は、一連の場面をこう振り返るのだった。
「高校生の時は、抜けたら見えるトライまでの道があった。ただ、大学の試合では相手の戻りが速くてスペースがなくて…。だったら、コンタクトをするしかない! と、思い切りぶつかりました。足をかき続けたら、前に出られると思って」
 幼稚園児の頃に楕円球と出会った。少年期は早大ラグビー部の黄金期をテレビなどで観戦。後に日本代表の有名選手となる五郎丸歩らの活躍を、脳裏に焼き付けた。このクラブが優勝した時のみ口にする「荒ぶる」という第2部歌へは、ほぼ無条件で憧れを抱く。
「ワセダは日本で一番、かっこいいチームです。常に日本一でいなきゃいけないチームで、ジャージィもかっこいい。幼稚園の頃に観ていたワセダは、常に優勝していた…。荒ぶるが歌いたくて、入りました!」
 
 世界も見据える。7人制日本代表として、オリンピックに出たいという。早大が覇権を争う15人制の舞台でも活躍を誓うが、「やっぱりオリンピアンは、かっこいい」。昨夏には20歳以下の7人制日本代表の主将にもなった元気印は、強いもの、輝かしいものをひたすら追い求めるのである。
「(15人制の)ワールドカップも目指したい。ただ、オリンピックは全国民が注目する。そこで試合ができる人たちは特別。そこを目指して、頑張りたいと思います。7人制でも15人制でもほぼ一緒のところがあって。1対1で負けたら試合で負ける。ブレイクダウンで負けたら試合で負ける…。そこで負けない力を、つけたいです」
 早大就任2年目の山下大悟監督はこの日、3人のルーキーを起用していた。FLの丸尾崇真、NO8の下川甲嗣を含める形で「早めに(相手の重圧を)体感して欲しいし、戦力としても期待しています。度胸はある」と評価。古賀のことは、点を取る星のもとにある、との意味合いでこうも褒めたのだった。
「持ってますよね」
 前年度を大学選手権8強で終えたチームは、14日、茨城・たつのこフィールドで流経大と春季大会3試合目をおこなう。新たなエース候補は「(相手のコンタクトは)とても強い印象。特に外国人選手のパワーがすごい。そういう人たちにも自分のタックルが通用するようにしていきたい。身体が小さい分、しっかりと低く入る」。フィジカリティに関する課題も再確認し、桑山聖生、緒方岳、梅津友喜らとの定位置争いを見据える。
(文:向 風見也)

PICK UP