国内 2017.04.24

「我慢比べ」の実相。春季大会初戦は大東大が早大に完封勝ち。

「我慢比べ」の実相。春季大会初戦は大東大が早大に完封勝ち。
春季大会の早大戦にも先発した大東大CTB畠中豪士。写真は東日本大学セブンズより(撮影:福島宏治)
 初戦勝利を挙げたのはモスグリーンのジャージィ、大東大。身長167センチ、体重88キロと小柄なFL、河野良太主将が破顔した。
「ディフェンスにフォーカスして、そこの部分で絶対に負けないようにという気持ちで試合に臨みました。それが前半からできた」
 4月23日、東京・早大上井草グラウンド。関東大学ラグビー対抗戦、リーグ戦の各群上位チームによる総当たりの公式戦、関東大学春季大会Aグループが開幕した。昨季はリーグ戦1部で3位だった大東大は、同・対抗戦A2位の早大に27−0で完封勝ちした。ハードタックラーで鳴らす河野は、チームの懸命な守備を勝因に挙げた。
「今季はディフェンスから流れを作るというコンセプトでやってきた。普段から速く(防御網を)セットして全員で前に上がろう、と練習している。きょうは、そのひとつの形を出せたかなと思います」
 赤と黒の早大は、ランナーとサポートが束になって前進しながら大外へ展開。しかし最後の最後は、緑の壁に進撃を阻まれた。グラウンドの端側の選手がタッチラインの外へ出されたり、攻め込んだ先でのオフロードパスを地面に転々とさせたり。
 春は大東大と同様、組織防御などに注力。そのため山下大悟監督は「アタック自体はやっていないので気にしていないです」としたが、独特な表現での苦言も忘れなかった。
「鬼ごっこやゲームなどの際のところで強い人間に、もう少し積極的にやって欲しかった」
 ルーキーだった昨季から出場する2年生SOの岸岡智樹らプレーメーカーに、より的確な攻撃オプションの選択を求めた。同学年の岸岡と前年度からHB団を組むSHの齋藤直人は、こう悔やんだ。
「自分自身、きょうはあまり余裕がなかった。外に振ったりしても(相手の)人数が多かった」
 
 守っては、単発での突破や攻守逆転からの速攻に手を焼いたか。山下監督は「タックルのパックが外されたところがあった」とし、組織を象るための気配り、目配りの重要性も再確認した。
「最初の我慢比べで我慢をし切れなかった、というところです。ボールが浮いている時(パスが渡る間)の間合いを詰めるところ、下のスペース(ルーズボールの周辺など)と、その接点ができる前に埋められる空間がいっぱいあった。そういうことを、なんでやらないのかな、と。まぁ、できていないのは僕のせいなのですが。(然るべき)局面を作ればターンオーバーも取れた。これからは、いかにそういう状況を多く作るか…」
 かたや大東大は、河野主将の謳う堅守で早大のミスなどを誘発。攻めては新人SH、南昂伸が爆発した。
 7点を先行して迎えた前半26分には、自陣10メートル線付近左中間のラックの脇をえぐる。敵陣中盤まで前進する。ここから大東大は、早大の守備ラインが揃う前にパスをつなぐ。SOの大矢雄太のトライで、12−0とリードを広げた。
 
 15人制では大学入学後初の公式戦ながら、南は再三のサイドアタックで魅する。後半22分には、自陣22メートルエリア左のラインアウトから球を得るや目の前のスペースを裂く。敵陣22メートル線付近で2年生LOの佐々木剛にパスし、スコアを22−0とした。
 公式で身長164センチ、体重69キロとする南は、奈良・御所実でSHとWTBを兼任。50メートルを6秒4で走る脚力を誇る。
「前が空いたらチャレンジする、と。(後半22分のラインアウトは)ミスボールだったのですが、それでかえって相手(の守備列)にギャップができた。そこを突けた。そういうところを日々の練習から磨いていって、チームに貢献できるようになりたいです」
 この午後の働きを朗々と振り返り、安堵の表情を浮かべた。
「緊張もしていたんですが、先輩たちに『思い切りプレーを…』と声かけをしてもらって。前半の最後などに思うようなプレーができるようになった。きょうは全員のディフェンス力がすごくよくて。FWはアタック力もあるので、自分も楽に前に出られました」
 
 肉弾戦、またはその肉弾戦ができる前でのつば競り合いで鋭かった大東大。29日には対抗戦A・1位で大学選手権8連覇中の帝京大と、大会2戦目をおこなう(岐阜・長良川球技場)。
 一方、そのような局面での「我慢比べ」で後手を踏んだ早大は、次戦を5月7日に控える。対峙するのは、リーグ戦1部・1位で大学選手権準優勝の東海大だ(早大グラウンド)。
(文:向 風見也)

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