国内 2017.04.02

気持ちを切り換え臨む 大阪朝高CTB李承信

気持ちを切り換え臨む 大阪朝高CTB李承信
大阪朝高のキッカー、李承信。「入る」と自信を持ち蹴る(撮影:見明亨徳)
 「第18回全国高校選抜ラグビー大会」。2大会ぶり出場の大阪朝鮮高校は初戦(4月1日)、2年前に予選リーグで0−59と大敗した流経大柏と対戦し、19−14とリベンジして1勝目をあげた。
 前半は流経大柏がやや優位で朝高陣で進めるも得点を奪えず、無得点で折り返した。
 先制は押されていた朝高だった。後半1分すぎ、柏陣22メートルの外側でスクラムを得るとゴールラインまで迫った。しかしインゴールでボールを押さえることができずに5メートルの朝高ボールスクラムへ。3分、スクラムから右へ回し、右隅にWTB金純海(きむ・すね)が飛び込んだ。難しい位置のゴールキックをCTB李承信(り・すんしん)が決めた。7−0。
 流経大柏もリスタートのボールをつなぐと、右WTB永山大地が右中間へトライを奪い、ゴール成功で同点とした。
 しかし朝高は焦らなかった。5分後に柏陣に入ると再びWTB金がトライで12−7と勝ち越した。さらに23分には、右ラインアウトからFWがラックサイドを突きゴールへ近づく。最後は中央から左へつなぐと、HO金樹一(きむ・すいる)がポスト左へボールを置いた。CTB李がコンバージョンキックを確実に蹴り、19−7へ。
 流経大柏は終了間際の28分にCTB柳田翔吾がトライとゴールキックを決めて5点差としたが、及ばなかった。
 権晶秀(くぉん・じょんす)監督は「フィジカルで強い柏に1対1でファイトしてくれた。ベスト8が目標」と話した。
 「全国」へ、朝高選手に強い思いを持つひとりがいる。キッカーを務める李承信だ。
 昨年の花園切符をかけた大阪府第1地区予選決勝(11月13日)。朝高は東海大仰星に10−12で敗れた。2点差の後半25分から朝高は仰星ゴール前で6分間に及ぶ攻撃を続けた。
 仰星がペナルティを繰り返す。朝高は逆転PGを狙わずにタップからFWでモールを組み、トライを奪おうとした。
 PGを選択しなかった理由を権監督は「角度もあったし、1年生に責任を負わすのはかわいそう」と説明した。グラウンドで指揮する主将、李承爀(り・すんひょっ)は「『ショット』の声がかかり弟を見た。顔がひきつっていた。これは無理だ、と思いました。FWの3年生がトライを取ろう」と。
 1年生キッカーが15番を背負った弟の承信だった。本人が語る。「あの時は外したらどうしようとばかり思っていた。入る気がしなかった」。入れていれば兄を「花園」へ連れて行けた。「試合後、先輩たちは『気にするな』」と言ってくれたが。
 この試合を契機に気持ちを切り換えた。「絶対に入ると信じて蹴る。ミスを恐れないようになった」。精神面での成長をひとりの若者が遂げた。
 選抜大会は秋の大阪予選への第一歩だ。「今年の大阪は仰星が一つ抜けている。残りが同じ力」と承信。2年生だからあと2回、「花園」へ挑める。そして卒業後は、今年4月に大学王者・帝京大の一員となった兄と同じ関東の大学でラグビーを続ける夢がある。
(文:見明亨徳)

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流経大柏戦、大阪朝高HO金樹一のトライが決勝点に(撮影:見明亨徳)

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