海外
2017.03.30
愛をもらい、刺激を戻す。サンウルブズ江見翔太激励会、学習院にて。
左から江見翔太、学習院大ラグビー部・遠藤嘉輝副将、吉岡拓海主将。
(撮影/松本かおり)
出身クラブの名を背負って世界と戦っているアスリート。そんな逸材を育んだクラブを支える人々。お互いに誇らしい気持ちがあふれていた。
3月29日、サンウルブズで活躍中の江見翔太が母校・学習院大学にいた。サントリーサンゴリアスでの2冠獲得に続き、今季スーパーラグビーにデビューした好ランナーを、出身校である同校ラグビー部OB会が激励する会を催したからだ。学習院大、同高等科のOB、関係者、そして現役学生が目白キャンパス内のレストランに集まった。シンガポールでのストーマーズ戦を終えて帰国したばかりのGRSラグビーマンを囲んだ。
GRSとは学習院ラグビーソサエティーのことだ。中等科、高等科、大学とラグビー部の活動がつながっている学習院ラグビー。関係者たちはそのつながりを、昔からソサエティーと表現してきた。高等科から学習院に学んだ江見は、目白のグラウンドで楕円球を追いはじめ、すくすくと育ち、チャンスを掴んだ。だから、自分のホームを愛し、大事にするし、GRS関係者もこの大型フィニッシャーがかわいくて仕方がない。
乾杯の音頭をとった飯沼喜規OB会長は2年前まで総監督を務めていた。在任中、週末は江見とともにグラウンドで時間を過ごした思い出について話し、「乾杯はサントリー流でやりましょう」と提案。リードする声に合わせ、全員がサントリーの伝統的乾杯の発声である「スコール!」(デンマーク語)に合わせ、手に持ったグラスを突き上げた。
「2019年のワールドカップに日本代表として出場することを、みんな願っています」
会長がそう言うと、大きな拍手が起こった。
多くの人が駆けつけてくれたことに対し、「遠くから駆けつけてくれた方もいると聞きました。このような会を開いていただいて感謝です」と話した江見は自身が歩んできた道を振り返り、「このクラブだったからいまがある」と言った。
「高校に入ってからラグビーを始めました。別の高校(神奈川の強豪校)にも合格していたのですが、そちらに進学していたらどうなっていたか。周りは小さいときからラグビーをやってきた凄い選手ばかりでしょうし、レベルも高いし、練習もきつい。そもそもラグビーをやろうと思わなかっただろうし、受け入れてもらえたかどうかもわからない」
出席番号が次の友だちにたまたま誘われ、この世界に足を踏み入れた。必然でない、そんな幸運な出会いから始まったストーリーだから多くの人に夢を与える。
「(強豪校とは違って)自分のペースでやれたのがよかったと思います」
最初にセブンズ日本代表に呼ばれたのは大学1年時。クラブチームに加わり、男子セブンズ代表相手の練習試合に出場したときの動きが代表首脳の目に止まったのがきっかけだった。
そんなきっかけをつかめたのも自由な空気が漂うクラブだったからだと思うし、U20日本代表やセブンズ代表の活動とクラブのスケジュールが重なったときには「代表優先で」と背中を押してくれたから有り難かった。「このクラブだったからいまがある」の言葉には、深い感謝の思いが込められていた。
「サンウルブズに入ったとはいっても、まだ始まったばかり。まだ足りないことは多いと思っています。2019年のワールドカップには僕自身も是非とも出たい」
2017年度の学習院大学ラグビー部主将を務める4年生のCTB吉岡拓海は、「強豪校でない環境でも個人の頑張り次第で成長できる。江見さんの姿を見て、そう励まされます」と話し、こう付け加えた。
「(近くで見ると)体も大きく、鍛え込んでいることがよく分かるのですが、試合でのコンタクトシーンを見ると、決して力任せでなく、日本人ならではの考えたプレーのように感じます」
バイスキャプテンの遠藤嘉輝(4年/CTB)も「このクラブからトップリーグや世界の舞台で活躍する先輩がいるということが、僕らのモチベーションを上げてくれます」と語った。
昨季は全敗で関東大学対抗戦Bの最下位に沈んだ同部。今度は自分たちが優勝、そしてAに昇格し、江見先輩を祝勝会に呼びたいな。