海外
2017.02.24
「背負うものはない。あるのは…」 サンウルブズの日野、初の開幕へ示す態度
全体練習の合間に円陣を作ると、各々が修正点や課題を伝え合う。そこで率先して発言した1人が、日野剛志だった。
ただ待つのではなく、自分からイニシアチブを取る。いつものように、そうしただけだ。
「特に、何かを意識しているわけではないですけど、一応、チームのリーダーズグループのようなものにも参加させてもらっているので。少しでもチームがいい方向に行けばいいと思っていますし、自分自身も発言することで責任感が出るところもある」
2月21日、東京・辰巳の森ラグビー練習場。国際リーグであるスーパーラグビーへ日本から参戦するサンウルブズが、4日後の開幕節に向け調整を進めていた。昨年11月に初の日本代表入りを果たしたばかりの日野は、発言の真意をこう続けたのだった。
「いつも決まった人ばかりが発言するのはあまりよくない。思ったことのある人がどんどん話せば、皆、いろんな確認もできる。皆、よくしゃべれているのですが、そのなかの1人として僕もしゃべっています」
福岡・筑紫高、同大を経てヤマハ入りした27歳。身長172センチ、体重100キロと、トップレベルの争いにあっては決して大きくはない。しかし、国内有数のHOになった。
後にサンウルブズに加わる長谷川慎FWコーチのもと、スクラムワークを磨いた。他の7選手と塊を作り、鋭く仕掛ける。攻めては、持ち前のスピードで防御を切り裂く。昨季は日本最高峰のトップリーグで11トライをマークした。
2016年11月、長谷川コーチやヤマハのPR勢3選手らとともにジャパンへ帯同。初キャップ(国際真剣勝負への出場)を記録したのは、11月19日のカーディフ・プリンシパリティスタジアム。欧州6強のウェールズ代表に30−33と迫った一戦で、タックルやハンドリングスキルで魅せた。
そして、チーム参戦2季目の開幕を25日に控える。東京・秩父宮ラグビー場でぶつかるのは、前年度王者のハリケーンズだ。難敵を前に、日野は笑顔で語る。
「僕自身、初めてのスーパーラグビーで、サンウルブズも2年目。失うものは何もない。プレッシャーを感じるのではなく、できることを全部出し切る。背負うものは何もない。あるとしたら、サンウルブズのプライドだけ。僕にとっては人生最大のチャレンジが始まるので…」
相手の控えには、ニュージーランド代表HOのデイン・コールズの名があった。両軍のメンバーが発表される前の段階で、日野は「デイン・コールズとやれたらな」と願望を口にしていた。くしくも当日、日野もサンウルブズのリザーブに入る。ベンチで、直接対決の瞬間を見据えるのだ。円陣で率先して発言するように、大物にも率先してぶつかるだろう。
(文:向 風見也)