海外
2017.02.05
サンウルブズ スクラム強化へ日韓師弟コンビ結成
2年目を迎えたサンウルブズ。2月1日に始まった2017年シーズンの練習は、東京都内での合宿を終え5日から福岡で2週間の合宿へと進む。
2日、グラウンドでは予定に無かったセッションがあった。全体練習終了後、約15分。フォワード第1列(PR、HO)のメンバーが集まった。指揮するのはスクラム専任コーチに就任した長谷川慎氏。ヤマハ発動機ジュビロで強固なスクラムを作りトップリーグでの躍進に貢献し、11月の新生・日本代表欧州遠征でもスクラムコーチを任され、代表とサンウルブズの一貫した指導をおこなうことになった。
「スクラムを組むのは福岡からと言われていたのですが、早く教えたかった。予定を入れてもらいました。特に昨年秋に呼ばれなかった選手たちに代表の組み方を知ってもらいたい。毎日少しずつ」(長谷川コーチ)
今回のサンウルブズ総勢50人の選手中、第1列は11人。このうち昨秋の代表はPR三上正貴、HO堀江翔太にヤマハの教え子3人など計7人。残り4人に集中的に組み方を教えたかったのだ。セッションは翌日も午前中におこなった。
熱心な指導を受けたひとりが右PR・3番で選ばれた具智元(ぐ・じうぉん、拓殖大4年)。2日と3日、具の力に期待する長谷川コーチは熱心にバインドを教えた。
昨年は最年少21歳でサンウルブズに選ばれ4試合に出場した。しかし、モヤモヤがあった。サンウルブズは短期の準備で臨んだ試合でスクラムが崩壊する。出場は他の選手のケガなどの理由もあったが左PR・1番だった。「ずっと専門の3番で出たかった」と本音を語る具。
具の父親は本田技研鈴鹿でプレーした韓国代表1番の具東春(ぐ・とんちゅん)氏。今でも韓国の実家に帰ると父の熱い指導を受ける。「外国人相手に低く組みなさいと。そのための膝の使い方などをお父さんは教えてくれます」(具)。
父と長谷川コーチは親交がある。「お互いの『スクラム論』を語り合ったことも」(東春氏)。
具も今年のサンウルブズには思いが強い。
「春から拓大を卒業して社会人になる(ホンダヒートでプロ契約選手)。自覚をもってラグビーに向かいたい」という。
1月中旬、大学の試験が終わるとホンダの本拠地へ向かった。サンウルブズに合流するまでホンダの施設を使い、ウェートなどに取り組んだ。最年少で先輩やスタッフから、その笑顔で「癒し系」とかわいがられたが、その甘えからも縁を切る。お手本のひとりはFL金正奎(きん・しょうけい/NTTコミュニケーションズシャイニングアークス)。練習初日から声を出し、常にセッションの先頭に立っていた。
「いつもの通り、それが自分」と金は淡々と話す。
具は練習で出し切る姿勢、リーダーシップを身につけたい、という。
本格的なスクラム、セットプレーは福岡合宿からだ。長谷川コーチは具に断言する。「3番で出す。1番は無い」。素直に「嬉しい」と返す具。
日韓師弟コンビが世界を相手に戦いを挑む。
(文:見明亨徳)
予定よりも早くスクラム練習を始めた(撮影:見明亨徳)
練習後も確認をおこなう(撮影:見明亨徳)