海外
2017.02.03
熱いファンに見守られ、サンウルブズ本格始動。東京・辰巳合宿2日目。
憧れの選手たちを見守る熱心なサンウルブズのサポーター。
(撮影/多羅正崇)
平日の午後2時にエナメルのラグビーバッグを背負った子どもの姿があるから、どうしても目立つ。
中学生くらいの男子2人組が、東京・辰巳の練習場を落ち着かない様子でのぞいている。
どうやらサンウルブズの選手たちを探しているらしい。
近寄って、学校はどうしたのと尋ねた。片方の男の子が、礼儀正しく答えた。
「試験休みです」
2人は成城学園中学ラグビー部に所属。ポジションはひとりがスタンドオフ、もうひとりがセンターだ。センターの子はベンチコートの内側で、左腕を固定器具で吊っていた。最近の試合で怪我をしたのだという。
初々しいラガーマンに尋ねてみた。
サンウルブズの好きな選手は――?
礼儀正しい男の子が、ハキハキと答えた。
「全員のファンです」
スーパーラグビー(SR)参入2年目のサンウルブズは2月2日(木)、東京・辰巳でプレシーズン合宿2日目の練習をおこない、午後からはグラウンドで約1時間汗を流した。総勢50名の大所帯となったサンウルブズの練習に、平日昼間ながら約30人のファンが集った。
中学時代にラグビーをしていたという男子高校生は、大学入学前の余暇を利用して訪れた。「とにかくラグビーを観るのが好き」で、好きなチームはサントリー。トゥシ・ピシ(現ブリストル)が好きだった。
2015年ワールドカップ(W杯)からラグビーファンになったという女性2人組もいた。W杯後はトップリーグも追いかけて、「ファンへの接し方が良くて」とクボタのファンになった。2015年W杯からトップリーグ、トップリーグからサンウルブズへ――。理想的な新規ファンの姿がこの日の辰巳にはあった。
午後2時40分、グラウンド中央の円陣から始まった練習は、日本代表のジェイミー・ジョセフ・ヘッドコーチ(HC)も見守るなか、ディフェンスの確認からスタート。雲ひとつない快晴ながら、強風により体感気温は低い。4日前の日本選手権決勝を戦ったサントリー、パナソニック勢は、多くの選手が初日に続いて見学に回った。
エリアを移しながらディフェンス練習を重ねたあとは、フォワード主体、バックス主体のグループに分かれてアタック練習。その後はグラウンドの半面を使っての全体練習に移行。綿密に計画された練習の締めくくりは、フィットネス・トレーニング。厳しいシャトルランを繰り返し、心拍数を上げた。
密度の濃い1時間は、午後3時40分、ふたたび中央で円陣を組んで終了。練習後、距離をとって見守っていた日本代表のジョセフHCは、「今回は50人という大きいスコッドを抱えている。ポジションごとの競争をしっかり見ていきたい」と、代表セレクターとしての立場から期待を語った。サンウルブズは2月3日まで辰巳で練習。その後、5日から福岡県・宗像市、11日から北九州市へ移動し、18日のトップリーグオールスターズとの一戦に備える。
練習後しばらくして。
クラブハウスの裏手に回ると、サインと記念撮影を求める人たちで、チームバスまで人垣の道ができていた。
あの2人の中学生ラガーは――。
クラブハウスから出てきた選手へ、次々と声を掛けていた。選手と体を並べて、スマートフォンで記念撮影。お礼を告げて、選手が去ると、そのまた次の選手へ。2人の表情には憧れと高揚が見てとれた。
「全員のファンです」という言葉は、きっと本当だった。
(文/多羅正崇)