国内 2017.01.29

改修前の花園最終戦に完封勝利。ライナーズらしさ存分に。

改修前の花園最終戦に完封勝利。ライナーズらしさ存分に。
声を張り上げてくれたファンに挨拶するライナーズ(撮影:早浪章弘)
 1月28日、東大阪市花園ラグビー場でおこなわれたトップリーグ入替戦は、「近鉄ライナーズ×九州電力キューデンヴォルテクス」と古豪同士の対戦に。しかも、この試合を最後に花園ラグビー場は2019年ワールドカップに向けての改修工事に入る。ホームの近鉄ライナーズにとっては負けられない以上に総決算の場でもあった。
 今季の近鉄はセットプレーに注力するために、スティーブ・カンバランドFWコーチを招聘。神戸製鋼で実績を上げたコーチとともにスクラムは成長曲線を描いた。それは同じようにスクラムを重要視しているサントリー、ヤマハ発動機戦でも証明されている。ただ、その上位の両チームとは違い、そのスクラムの強さ、ラインアウトの正確性が得点や試合運びに結びつかない。度重なるケガ人、新メンバーとの連携などの微妙な影響もあり、もどかしい戦いが続いた。敵陣ゴール前でFWが攻め込んでミス、ターンオーバーも多く、戦い方を考えさせられるシーズンだった。
「苦しいシーズンでしたが、積み上げてきた武器があるので、そこをぶつけられるか。序盤は相手も向かってくるので上手くいかないことの方が多いと思っていました。だから、その時間帯こそスクラム、ラインアウトでプレッシャーをかけることに集中した」とPR豊田大樹主将。
 実際にもセットプレーでペースをつかむ。ただ、前半10分までに2度相手インゴールに飛び込んだがTMO(テレビジョンマッチオフィシャル)でノートライに。その場面もスクラムでボールを奪い返した。FWが塊となりスクラム、モールを押して、BKも素早い展開から13分に先制すると、前半だけで26−0とリードを広げた。
「ライナーズには熱いファンがついています。今季は申し訳なかったですが、改修前にいいラグビーを示したい。エリアマネージメントも含めて、強みを出せた試合にできました」と坪井章監督。
 CTBとして先発したルーキーの野口大輔は持ち味のキックで貢献する。特に、東海大時代から多彩だったキックを効果的に使い分け、ゴールキックも7本中6本決めるなど、チームとして機能。同じく1年目のアンソニー・ファインガとのコミュニケーションも上がり、連携面でも来季に期待を持たせる内容だった。
 終盤、九電のフィニッシャーWTB磯田泰成が自陣から独走する。これをファインガが懸命に追走して、途中出場のFB?忠伸と無言の連携で止めると、そのラックから展開された大きなオーバーラップも、チームが冷静に止めてインゴールを割らせないなど意地を見せた。47−0で勝利。
「最後の花園だから特別な気持ちでした。11年間、ここをホームとして戦ってきて、自分のすべてが詰まっている。もちろん、花園ラグビー場にはめっちゃ長い歴史があるのも分かっています。今年はケガ人が多かったけど、最後にいいメンバーでできた。しかも、今日はめっちゃ暖かい、いい天気。本当にいい思い出になる試合でした」と振り返るのはFLで出場したトンプソン ルーク。
 さらにトンプソンはカンバランド コーチとともに積み上げてきたスクラムなど、今季の収穫を土台に来季に進みたいと話す。
「負けが多くなりましたが、その中にも手応えのあることも多い。来季はこれを基準に強くなりたい。今季もベスト4を目標にしてきたチームだし、もう一度、そこに向かいたい。FW、BKともにレベルを上げて、試合に勝つチームにしたい」
 試合後、選手たちはライナーズファンに感謝するとともに、それぞれが花園に別れを告げた。来季は全国高校大会のみの開催予定で、ライナーズのホームは別会場になる。また、花園の改修工事は来月から始まり、2018年中に完成する予定。
(文:福田達)

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選手、スタッフとともに最後の花園にて(撮影:早浪章弘)

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