国内 2017.01.26

コカ・コーラのラファエレ、まずは入替戦。その先にサンウルブズの「楽しみ」

コカ・コーラのラファエレ、まずは入替戦。その先にサンウルブズの「楽しみ」
ロングパスを放るコカ・コーラのティモシー・ラファエレ(撮影:Hiroaki.UENO)
 この国のラグビー界を締めくくるのは、日本選手権だ。今季の同大会決勝戦は1月29日、東京・秩父宮ラグビー場でおこなわれる。サントリーとパナソニックの激突は、多くの楕円球ファンが注目するだろう。
 一方、その前日にも死闘がある。サントリーが優勝した国内最高峰トップリーグの下位組と、下部リーグから這い上がったチームとの入替戦だ。28日、大阪・東大阪市花園ラグビー場、愛知・パロマ瑞穂ラグビー場、福岡・レベルファイブスタジアムという各会場で1試合ずつ、計3試合が開催される。
 勝敗が翌年以降の環境をも変える貴重な試合には、今季最大級の成長株も出場する。
 ティモシー・ラファエレ。身長186センチ、体重98キロの25歳だ。トップリーグ14位だったコカ・コーラでSO、インサイドCTBを任される。昨秋には初の日本代表入りを果たし、4つのテストマッチ(国際真剣勝負)でプレーした。
 山梨学院大4年時、加盟する関東大学リーグ戦で2部から1部への昇格を決めている。当時と立場は違うものの、入替戦そのものへの免疫はありそうだ。
 コカ・コーラの未来は明るい、と信じて疑わない。
 
「若い選手、いい選手もいる。トップチームになるポテンシャルがある。今年はトップリーグでいい経験値をもらった。来年はもっとレベルアップできる」
 
 母国ニュージーランドのデラセラカレッジ時代、山梨学院大の吉田浩二監督にスカウトされた。2010年、来日。そして当時の向井昭吾ゼネラルマネージャー兼総監督に見込まれ、2014年度、コカ・コーラ入り。昨季までは元ニュージーランド・マオリ代表CTBのティム・ベイトマンとの外国人枠争いに泣いていたが、今季は先発機会を「7試合中4試合」から「15試合中15試合」に激増させる。
 ベイトマンがクラブを去ったなか、決意を固めていた。
「今季はシーズンの最初に『もっと試合に出る』というターゲットをセットした。そして、練習、ラグビーの勉強を頑張った。勉強というのは、他のコーチから僕のウィークポイントを聞いたりしたことです。他のこと(対戦相手や試合展開など)を気にせず自分のやることだけに集中するようにした。それが、いいパフォーマンスにつながった」
 その延長線上で、ジャパン入りのチャンスもつかんだ。
 ジェイミー・ジョセフ ヘッドコーチ率いるナショナルチームでは、アウトサイドCTBとして右中間、左中間のスペースをランとキックで裂くという「仕事」を全うした。その時に最も印象的だったことは何かと聞かれれば、簡潔に答える。
「コーチから言われたのは、『自分の仕事をすればチームのパフォーマンスが良くなる』ということ。自分の仕事をやるしかない、と。13番(アウトサイドCTB)の仕事は、スペースを観てそのスペースへボールを出すこと、あとは、プレーメーカー(SH、SOら)とのコミュニケーションね」
 日本代表のトニー・ブラウン アタックコーチや田邉淳アシスタントコーチからは、「自分のフォーカスポイントについてアドバイスをもらった」という。遠征中におこなっていたスキル練習は、コカ・コーラに帰ってからも続けている。
 ホームでもある福岡での入替戦では、日野自動車と対戦。東日本のトップイーストで2位、自動昇格を争うトップチャレンジ1では3位だった相手だ。
 この難所を乗り切れば、2月から国際リーグのスーパーラグビーへ参戦。日本代表と連携するサンウルブズのスコッドに入り、南アフリカやニュージーランドなどの強豪クラブとぶつかる。
 楽しみなカードには、「クルセイダーズ戦」を挙げる。4月14日の、クライストチャーチ・AMIスタジアムでの第8節のことだ。
 2015年春、クライストチャーチへ短期留学。クルセイダーズ傘下のクルセイダーズナイツへ加わり、現地のスーパーラグビー予備軍たちと研鑽を積んだ。その時に出会った仲間とグラウンドで再会できれば、きっと嬉しいだろう。
 さらにクルセイダーズには、コカ・コーラで一緒だったベイトマンもいる。ベイトマンと仲の良かったラファエレは、こう声を弾ませた。
「ベイトマンはラグビーのことをよく教えてくれた。クレバーな選手ね。ニュージーランドの試合は、どれも、楽しみです。家族も観に来られるから。まずはコカ・コーラでしっかりとプレーする。次はサンウルブズでしっかりプレーする。その先に、日本代表がある」
 シーズンを通し、「自分の仕事をしっかりとする」と意を決してきたラファエレ。いまは母国でのバトルを心待ちにしながらも、入替戦勝利という「仕事」を見据える。
(文:向 風見也)

PICK UP