海外 2017.01.06

レジェンドが語るTOP14の魅力。〜清宮克幸編〜

レジェンドが語るTOP14の魅力。〜清宮克幸編〜
フランスラグビーの原点は「小さい」という自己認識
古き良きラグビー文化が残っているのも魅力ですね
日本でも注目度が上がっているフランスリーグ「TOP14」を、独特の視点から見ているのがヤマハ発動機ジュビロの清宮克幸監督だ。
監督として、戦力ダウンを承知で五郎丸歩選手をスーパーラグビーのレッズ、そしてフランスリーグ「TOP14」挑戦に送り出した清宮監督は、五郎丸選手にとっては早大時代からの恩師である。そして、トップリーグ最強と言われるヤマハのスクラムは、フランスへの武者修行で培われた。
日本屈指の理論家、戦術家で、情熱家でもある清宮監督が見たフランスラグビー、そして五郎丸の挑戦とは?
――WOWOWが今シーズンからフランスリーグ「TOP14」の放送を始めました。清宮さんはTOP14をどのようにご覧になっていますか。
僕らはこれまでも、いろいろな方法でTOP14の映像を入手して見てきたけれど、多くの日本のファンにとっては初めて見ることになるんじゃないかと思います。日本のファンの方々が、どんな印象を持って見てくれるのかには僕も興味がありますね。
 フランスリーグの一番の特徴は、シーズンが長くて試合数が多いことです。8月に始まって終わるのは6月だから、1年のほとんどはラグビーをしている。だから、どうピーキングしていくかが大切なリーグだと思いますね。シーズンを通じて、上位6チームにまで入ればプレーオフに進めるから、5-6敗しても十分優勝できる。リーグ戦で各チームと2回ずつ戦う中で、力のあるチームは勝ち星を延ばしていくし、互いの手の内も分かった上で、最終的には戦略的なことも考えてプレーオフに進んでいく。そういう前提だから、シーズンの前半は『素』で戦っている感じですよね。
――フランスラグビーの特徴を清宮さんはどう捉えていますか。
高校でラグビーを始めて、各国の代表の戦いを見るようになって間もなく『フランスは特別な国なんだな』と気付きました。他の国とはやることが違う。サッカー的というか、フォーメーションは作るけれど、そこからどう組み立てるかのパターンを状況によって変えていく能力があるんです。ラグビーは、何度も同じシーンを作れる再現性の高いスポーツですが、フランスはその度合いが低い。状況が変化したときに予定されたパターンに戻すんじゃなく、そのときの状況に対応して発展させていく。だから、たまに、ものすごい試合をするんですね。
――その特徴はどこから来ているんでしょう。
実はフランスは、自国の選手は「小さい」という認識からスタートしているんです。小さいFWでも勝てるよう努力を重ねる、工夫を重ねるという伝統が根付いている。いろいろなアイデア、工夫を重ねて、斬新なことに取り組んできたんです。特にスクラムに対するこだわりは他の国よりもはるかに高いです。
最終的なフランス代表は、必ずしもフランス人ばかりじゃなく東欧系だったり、アフリカ系だったり、北欧系だったりして大きな選手も入ってくるんですが、フランスラグビーの原点は「小柄な民族がどう勝つか」ということ。だから、フランス代表のヘッドコーチは必ず自国の人なんです。これはヨーロッパのシックス・ネーションズでは、今ではフランスだけですね。
――とてもオリジナリティがありますね。
例えば、『スクラムファクトリー』という国の施設があるんです。そこではスクラムのことだけを徹底的に研究している。自分たちのハンディキャップを、アイデア、知恵と工夫で克服するために、その施設を作る。こういうところは日本にとっても参考になると思いますね。そういう工夫は、TOP14が世界で一番成功しているリーグと呼ばれるほど人気があることと繫がっていると思います。
――ヤマハは2年前にスクラムだけの合宿としてFWだけでフランスに遠征しましたね。
スクラムオンリー合宿です(笑)。最近は南半球に行くと、けっこうビジネスライクになるけれど、フランスのクラブはフレンドリーに接してくれた。ヤマハの遠征なんて、武者修行というか、ほとんどアポなしで『たのもう!』というノリだったけれど、温かく迎えてくれて、Aチームがスクラムの相手をしてくれた。フランスには古き良きラグビー文化が残っていると感じましたね。
――そのフランスに五郎丸選手が挑戦中です。
デビュー戦となったアウェーのリヨン戦も、初先発となったホームのスタッド・フランセ戦も見ましたが、プレーそのものよりも、チームメートとのやりとりを興味深く見ていました。彼らが五郎丸をサポートしようとしてくれている姿が、中継映像でもよく抜かれていましたね。マチュー・バスタロー(元フランス代表)はルームメイトになったらしいし、マア・ノヌー(元ニュージーランド代表)もすごく面倒を見てくれる。そういうところが印象に残りました。
プレー自体は、自分の形に持ち込めたときはしっかり持ち味を出していましたね。あとは、プレースキックをまだ蹴らせてもらっていないのがね。チャンスを与えてもいいんじゃないかと、勝手に思っていますけど。
――清宮さんからは、どんなアドバイスをして送り出したのですか? 行く前から『日本人は評価されないんじゃないか』『出番ももらえないんじゃないか』などという声も聞かれましたが…
いやあ『行ってこい』だけですよ。過去にそういうチャンスは誰にもなかったわけですからね。
日本人選手が評価されるのかどうか、出番がもらえるのかどうかも、行かないと何も分からない。言葉が喋れないと難しいとか、想像だけで言って、行かなかったら何年かたったとき、本当に後悔すると思いますからね。後悔しないような選択をしよう。僕が言ったのはそれだけです。
レッズに行っていた間も、RCトゥーロンに行ってからも、必死にやっている姿は変わらないと思いますね。
清宮克幸(きよみや・かつゆき)
1967年7月17日、大阪府生まれ。49歳。
府立茨田高でラグビーを始める。ポジションはナンバーエイト、フランカー。
高3で全国大会に出場、高校日本代表に選ばれアイルランド遠征では主将を務める。早大に進み、大学2年で日本選手権優勝、同4年では主将として大学選手権優勝。サントリーに進み、1995年度の社会人大会、日本選手権優勝に貢献。
日本代表キャップはないが、1990年にU23日本代表の主将としてアメリカ代表を、1992年に日本選抜の主将としてオックスフォード大を破るなどの実績を残した。
2001年に引退し、早大監督に就任すると、5年間の任期中に3度の大学選手権優勝、対抗戦は5季連続で全勝優勝という黄金時代を築く。2006年、サントリーの監督に就任し、2007年度にトップリーグ優勝。2009年度でサントリー監督を退き、2011年度からヤマハ発動機監督に就任。2014年度には日本選手権初優勝に導いた。監督として、トップリーグの複数チームでトップリーグまたは日本選手権の優勝を飾ったのは清宮氏が初めて。
長男は早稲田実高野球部のスラッガー、清宮幸太郎。
◆◆◆ WOWOW番組情報 ◆◆◆
★「ラグビー フランスリーグ TOP14」
ラグビー世界最高峰のプロリーグ「TOP14」。五郎丸歩選手が所属するRCトゥーロンの試合を中心に毎節2試合放送! 
第16節:
スタッド・フランセvsトゥールーズ 1/8(日)深夜2:00〜[WOWOWライブ] 
 ※1/8(日)深夜0:10〜 WOWOWメンバーズオンデマンドで先行ライブ配信
クレルモン・オーヴェルニュvsRCトゥーロン 
1/9(月・祝)午前4:45〜「WOWOWプライム] ※生中継
★「生中継!ラグビー欧州6カ国対抗戦 シックス・ネーションズ」
ヨーロッパのラグビー強豪6カ国が参加して行なわれる大会の模様を全15試合生中継!
2/4(土)〜3/18(土) [WOWOWライブ] 
■詳しくは、WOWOWラグビーオフィシャルサイト(wowow.bs/rugby)をチェック!
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