国内 2016.12.30

64年ぶり出場の山口高、7点差に迫られた際の心境とは。

64年ぶり出場の山口高、7点差に迫られた際の心境とは。
1回戦で富山第一に競り勝った黄・黒ジャージーの山口(撮影:松本かおり)
 ハーフタイム。各チームが後半に向けて作戦やプレーについて話し合う。それを取り囲むテレビの集音マイクの本数は、相手の「0」に対して「2」である。
 12月28日、大阪は東大阪市花園ラグビー場の第3グラウンド。全国高校ラグビー大会の1回戦に出場した山口高は、注目の的だった。
 64年ぶり4回目の出場。過去に総理大臣を2人も輩出した進学校…。そんなトピックスがメディアで大きく取り上げられることを、当事者たちはどう捉えているのだろうか。FLとしてプレーする藤井陽輝主将はこう明かした。
「注目されることはありがたいのですけど、それで舞い上がらないように声掛けをしていたので。それに途中からは慣れてきたので、大丈夫かなと思います」
 ただ一瞬に、集中する。パッションイエローとブラックのジャージーは、大舞台でも力を発揮した。授けられたチャンスを、逃さなかった。
 前半4分。自陣での激しいタックルで相手の落球を誘うや、攻撃を始めた。左へ、右へとパスを振り、攻撃ラインが数的優位を作ったらCTBの石丸創が大きく前進。WTBの藤村鉄平がインゴールを割った。ゴール成功で7−0。
 SOの右近幸也が動かすBKラインはスペースを的確にえぐり、7分、16分にはWTBの河本拓巳が連続でトライ。17−5のスコアで前半を終えた。藤井主将は説明する。
「僕も含めて緊張はあったのですが、序盤にいい形で得点を重ねられて…。それまでの間にもいいタックルなどがあった」
 ピンチも迎えた。それは、あのハーフタイムを経て迎えた後半3分だった。
 3年ぶり9回目の出場となる富山第一は、球を持てばお家芸の継続プレーでゲインラインを切る。前半こそ落球で好機を逃していたが、河合謙徳監督は「1人ひとりの仕事をしなさい。フォワードは、ボールを持ったら強気でどんどん行け」と伝達していた。選手たちは後半に向け、攻守における自分たちのタスクを見つめ直した。生き返った。
 好タックルも連発していたLOの前川海哉が追撃。残り時間27分で、スコアを17−10と詰めた。追われる者にとっては、動揺しかねない状況だ。しかし、通称「ヤマコー」は動じなかった。
「何が起るかわからない点差。嫌なものです。普段から流れが悪い時も慌てずに行こうと言っていたので、落ち着いて観ようとは思っていましたが…」
 自らもOBである中江洋平監督がこう案じるなか、フィフティーンがゴールポストの下で小さく固まる。この時の様子を、後の藤井主将はかように振り返る。
「多少、焦りはあったんですけど、リードしていることを忘れずに、自分たちがなぜトライを取られたのかを確認し、その穴を埋めていこう、と。(具体的には、接点への)2人目の寄りなどを確認しつつ、修正していけました」
 この後も追加点を決めるなどし、結局は24−15で勝利。30日の2回戦では、愛媛の松山聖陵高とぶつかることとなった。
 父の影響もあり山口大医学部を目指すという藤井主将は「花園という素晴らしい舞台でプレーできたのも感激なんですけど、そのうえで勝利を挙げられてよかった」。マスコミからは受験勉強に関連する質問を山ほど受けるなか、こう苦笑していた。
「きょうは…帰って体力があれば(勉強を)しますけど…できる限り、やりたいです」
 指揮官は、「いまごろ、皆が必死こいて勉強をしている時。でも、これ(ラグビーで勝負をしながら勉強に励んでいる姿)がカッコいい」。2回戦を突破すれば、センター試験から13日前の元日に試合をする。
(文:向 風見也)

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