コラム
2016.12.27
今年も奈良県で「待ってろ!花園 2016」が開催される
奈良県のマスコットキャラクター「せんとくん」と一緒に記念撮影をする王寺工、畝傍、高田の合同チーム。前列左から2人目が畝傍主将の平井僚君。王寺工はボールボーイなど試合運営補助のため参加できず。
今年も奈良県で、関係者の間では「裏高校大会」とも呼ばれる「待ってろ!花園 2016」が開催されました。
期間は12月23日から27日までの5日間。県南部にある県立橿原公苑陸上競技場をメイン会場に、御所実、天理のグラウンドがサブ会場として使われました。
23日は小学生、24日は中学生の交流大会がそれぞれ実施されました。25〜27日の3日間は高校生の試合が行われます。
施設管理などをする奈良県くらし創造部スポーツ振興課、県高校体育連盟(高体連)ラグビー専門部、県ラグビー協会の3組織がタイアップして2010年に始まったこの大会は、今回で7回目を迎えました。
大会運営を取り仕切るのは王寺工監督で保健・体育教員の森長(もりなが)工先生です。開催理由を説明します。
「もともと、奈良は観光の人たちがたくさん訪れるのですが、12月はその数が少なくなります。それでなにか人を呼べるイベントができないのか、と考えました。隣の大阪では花園で高校大会をやっている。それだったら、こっちでもそういう感じのものをやろうよ、ということで始まりました」
京都よりも古い歴史を持つ古都・奈良は、東大寺の大仏や聖徳太子ゆかりの法隆寺、それに若草山の鹿などに代表される有名観光地です。その冬場の盛り上げを一つの要素として、県を巻き込み、そこに県内ラグビーの普及・発展を付加させ、今の形ができあがりました。
小学校は近畿2府4県から11のラグビースクール、中学校は中学体育連盟(中体連)やラグビースクールの選抜など7チームが集まりました。森長先生は話します。
「2年前までは小、中学校の部門はありませんでした。でも奈良のラグビーの普及・強化につなげるため、スポーツ振興課にお願いして実現しました」
高校は16都府県から合同チーム参加を含め47校が参加しました。天然芝で試合ができる橿原会場では群馬・桐生第一、愛知・瀬戸西など遠方チームも登場します。
試合集中日は26日。午前9時25分から午後6時5分まで3日間で最多の21試合が行われました。試合時間は20分1本。日没は早いですが、ナイター設備があり問題はありません。この日は研修を兼ねて女子レフェリー7人が参加、試合の運営を助けました。森長先生は開催初期との比較をします。
「最初は10校も来なかったように記憶しています。それがどんどん増えてきて。逆に参加チームに十分な試合数を確保させてあげられず、申し訳なく思っています」
森長先生の王寺工は畝傍(うねび)、高田の合同チームで参加しました。部員6人の畝傍主将は平井僚君。180センチの長身CTBは笑顔を浮かべます。
「いつもは土のグラウンドで練習をやっています。それとは違ったいい環境でできてありがたいなあと思います。それにたくさん試合ができるのもうれしいです」
合同チームは25、26日の2日間で5試合をこなしました。
平井君は小学2年から郡山ラグビースクールでラグビーを始めました。あこがれの選手は同じポジションでパナソニックにも在籍したソニー・ビル・ウィリアムズ(ニュージーランド代表)です。
「格好いいし、パワフルかつ繊細なところが好きです」
ラグビーのよさを口にします。
「たくさんの人と関わることができることです。仲が良ければその関係はさらに深くなります。それに体を当てる自己犠牲の精神もいいと思います」
大会の運営にあたっては県の協力が欠かせません。昨年から天然芝がそれまでの夏芝から冬芝に変わり、大会を冬枯れしない青々としたグラウンドでできるようになりました。県立橿原公苑スポーツ指導係主査の福岡佳英さんは話します。
「冬芝に代わって、私たちも養生の仕方を勉強しながら維持しています」
アンツーカーのトラックの内側に立てられるラグビーポールも、高さが30メートル近くある本格的なもの。ポストカバーも四角形で厚みのあるトップレベル仕様。ポールの白色とカバーの青色が目に鮮やかに飛び込みます。
さらに、鹿の角が生えた童子をモデルにした県のマスコットキャラクター「せんとくん」の看板も橿原会場に現れました。きちっとラグビージャージーを着用しています。
森長先生は感謝を忘れません。
「この時期、学校の土のグラウンドは凍ってしまって、朝はカチカチです。それなのに、こんないい芝生の上でできる。スポーツ振興課のおかげです」
県、高体連、協会が三位一体となっての「待ってろ!花園」大会。ここでも、花園と同じように高校生の熱いプレーが見られること請け合いです。
(文:鎮 勝也)
モールを組み押し込む群馬・桐生第一(オレンジ)、防戦するのは和歌山・熊野(緑)