海外
2016.12.16
レジェンドが語るTOP14の魅力。〜日和佐篤編〜
フィジカルが強い。大きい。激しい。そしてSH(スクラムハーフ)が王様。
周りの選手は言うことを聞くし、SHを守ってくれる。
五郎丸歩が挑戦するまで、日本の選手からは遠い存在だったフランスラグビー。その世界を体感している数少ない選手が、サントリーサンゴリアスの日和佐篤だ。
2012年の3月から4月にかけて、フランスリーグTOP14の名門クラブ、スタッド・フランセに練習生として留学。公式戦出場はなかったが、フランスラグビーの中に身を置いた。
2011年と2015年のワールドカップで世界と戦い、南アフリカ戦では最後の逆転劇のタクトを振った高速SHの目に映ったフランスラグビーとは?
――日和佐選手は、日本では貴重な、フランスラグビーを体感した選手ですね。実際に身を置いたフランスラグビーの印象を聞かせてください。
2012年の春に、スタッド・フランセへ、練習生としてチームに参加させてもらいました。1ヵ月半くらいです。練習生は公式戦だけでなくリザーブグレードの試合にも出場できなかったので、参加できたのは練習だけだったのですが、フランスのラグビーの印象は、まず『フィジカルが強い』。大きい選手がどーんどーんとぶつかって、ハーフブレイクしたところでオフロードパス(タックルを受けながら放すパス)を繋いでいくのが多いと感じました。
――フランスのラグビーではSHが特別な存在だと言われますね。
ゲームコントロールは基本的に9番(スクラムハーフ)がする。みんな、王様みたいな感じでコントロールしています。周りの選手もそれを常識として受け容れているから、SHの言うことをちゃんと聞いてくれる。SHとしてはやりやすいですね。
それに、周りの選手がSHを守ってくれることも感じました。SHはどうしても、チームで一番小柄な選手であることが多いし、FWの近くでプレーすることが多いですが、密集サイドのディフェンスラインに立ったときに『どけ!』とFWの選手に引っ張られたりしました。
――ラグビーを取り巻く文化も他の国とは違うと言われます。
ホームゲームのときは、地域をあげてのお祭り騒ぎになります。駅からスタジアムまで、馬が先導してパレードをする。スタッド・ドゥ・フランスでは8万人が入るスタンドが満員になる。試合が始まるときや良いプレーが出たときは、本当に地響きが起こりますから。僕も、本音をいえばもう少し長くいたかったですが、ちょうどエディージャパン立ち上げの時でしたからね。短い間ですが、とても良い経験ができました。
――日本人がフランスに行こうとすると、言葉を心配する声が必ず聞かれます。
僕は基本、英語でコミュニケーションをとっていました。チームの選手の半分以上はフランス語圏の選手で、彼らがフランス語を喋っているときはあまり分からないけれど、残りの半分弱は英語圏の選手。お互いに、完全には分からないなりに、互いに寄り添うような感じでコミュニケーションを取るという面白さがありました(笑)
――日和佐さんは2011年ワールドカップでフランスと対戦して、2012年以降はフレンチ・バーバリアンズとも何度か対戦していますね。
フランス国内では、フィジカルなチームが多いですが、その中で、バックスにスキルの高い選手がいるチームは外までボールを回す…という感じです。ボールが動き出したらゲームのスピードは上がる。でも、動き出さないと、フィジカルバトルをずっとやっている感じですね。日本代表で対戦したときは、こちらとしては早い展開に持ち込みたかったけれど、ブレイクダウンですごくプレッシャーをかけてくるから、なかなかボールを動かせなかった。その点、フレンチ・バーバリアンズは、個人個人がもっと自由にやっている感じ。昔から言われる「シャンパンラグビー」というイメージですね。ノッてしまったら強いです(笑)
――そのフランスに五郎丸選手が挑戦しています。
日本選手の可能性を広げる意味でも、本当にありがたいと思います。プレースタイルも、スーパーラグビーよりもフランスの方が合っているんじゃないでしょうか。スーパーラグビーは展開の速さが特徴だけど、フランスではキックも多いし、五郎丸さんの特徴が活かせると思いますね。五郎丸さんはキックが上手だし、それは誰にも負けないと思うから、その強みを活かして勝負してほしいです。
――日和佐さん自身は、フランスをはじめ外国のラグビーを見ることにどんな価値を感じますか。
やっぱり、世界のラグビーのトレンドを知ることがありますね。どんなプレーをしているか、それぞれのチームはどういうことを基盤にして戦っているかが分かる。
個人的には、オールブラックスのアーロン・スミスのプレーがすごく勉強になりました。パスしたあとのサポートのつきかたがすごく上手だし、ゲームのいろいろな面をコントロールしていますから。
――日和佐さんにとってラグビーの魅力とは。
自分にとってなくてはならないものだと思っています。僕が始めた頃はラグビーの人気が高かったのが、そのあとだんだん下火になって、僕が大学生のころはスタンドにお客さんが入らないのが当たり前のようになったけれど、去年のワールドカップでその流れを少しは変えられたと思う。これからもっとたくさんのお客さんに来てもらえるように、ボールを積極的に動かして、見ても面白い、やってる方も面白いラグビーをしていきたいですね。
日和佐篤(ひわさ・あつし)
1987年5月22日生まれ、兵庫県出身 29歳。ポジションはスクラムハーフ。
5歳のとき、兵庫県ラグビースクールでラグビーを始める。報徳学園高-法大を経て2010年、サントリーサンゴリアスへ。オーストラリア代表SHジョージ・グレーガン、南アフリカ代表SHフーリー・デュプレアという世界トップレベルのSHとともに経験を積み、2010年度トップリーグ新人賞を受賞。2011、2012、2013年度トップリーグベストフィフティーン受賞。
2011年4月のアジア5カ国対抗・香港戦で日本代表デビュー。同年のワールドカップNZ大会では4試合すべてに出場。2012年3-4月にフランスリーグTOP14のスタッド・フランセに練習生として留学。2012年に始動したエディージャパンでは主力SHとして活躍し、2015年ワールドカップ・イングランド大会では全4試合に途中出場、南アフリカ戦の逆転勝利を含む3勝に貢献した。日本代表キャップ51。2016年はスーパーラグビー・サンウルブズに参加し、初勝利をあげたジャガーズ戦など8試合に出場した。166cm、72kg。
◆◆◆ WOWOW番組情報 ◆◆◆
★「ラグビー フランスリーグ TOP14」
ラグビー世界最高峰のプロリーグ「TOP14」。五郎丸歩選手が所属するRCトゥーロンの試合を中心に年間57試合放送予定!
第14節:
クレルモン・オーヴェルニュvsスタッド・フランセ
12/23(金・祝)深夜2:45〜 [WOWOWライブ] ※生中継
モンペリエvsRCトゥーロン 12/24(土)午前4:55〜 [WOWOWライブ] ※生中継
第15節:
トゥールーズvsクレルモン・オーヴェルニュ 12/31(土)深夜0:45〜[WOWOWライブ] ※生中継
RCトゥーロンvsラシン92 1/2(月・休)午前4:30〜 [WOWOWライブ] ※生中継
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