国内 2016.12.02

「終わり!」の後に。10連勝狙うサントリー、流大の「想定」とは。

「終わり!」の後に。10連勝狙うサントリー、流大の「想定」とは。
4季ぶりの王座奪還へ。サントリーの若きリーダー、流大(撮影:松本かおり)
 サントリーの練習が止まる。それまでいくつかミスが重なっており、その悪循環を断つべく沢木敬介監督が「はい、終わり!」と打ち切ったのだ。
「集中力がなくなってきたな、と思ったら、僕はバッと止めます。それ以上やると、ただのコーチの自己満足だけになってしまうから」
 ここで円陣を作り、中心で口を開くのは流大。加入2季目で主将となった24歳が、すべきことを改めて整理する。
 当の本人が振り返る。
「ああいう時は、結構、僕が『沢木さん、時間下さい』と言って止めることも多くて。正直、今日の練習はあまりうまくいっていなかったので、そこで僕が感じたこと、リーダーが感じたことを言う場を作ることは大事だと思った」
 これは11月29日、東京都府中市のサントリーグラウンドでの一幕だった。国内最高峰のトップリーグは約1か月の中断期間を経て、第10節から再開する。
 昨季は16チーム中9位と低迷したサントリーだが、今季ここまで開幕9連勝で2位につけている。12月3日に大阪・東大阪市花園ラグビー場でおこなわれるNTTコムとの後半戦1試合目に向け、最終調整に入っていた。
 緊張感や実戦感覚を醸成する見地から、沢木監督が「いまはミスをした方がいいと思っている」と話すなか、流は「終わり!」の瞬間の意味を語り続ける。
 円陣で発言する際は、ゲーム中に起こりうる事態をイメージする、という。
「これは試合と一緒で。上手くいかないことも多々あるなか、トライした後、された後の時間ができた時に、(悪い)流れを断ち切るリーダーシップも必要。それを(練習で)想定してもいます」
 帝京大でも主将を務め、大学選手権6連覇を果たした。社会人チームでの船頭役を務めるなかで「成長できていることは日々感じるんですが、いまのままではチャンピオンにはなれない」と話している。球をさばくSHとして、もっと攻撃時のクオリティーにこだわりたい。
「敵陣22メートルに入った時にスコアを確実に決めるという部分を、もっと高めないといけないです。『ラストパスがよければ…』というシーンが結構、ある。クロスゲームではそこが大事になるので、突き詰めていきたいです」
 学生時代にメンバー入りしたことのある日本代表は、ジェイミー・ジョセフ新ヘッドコーチ体制で11月にツアーを敢行。かねてジャパン入りを目指している流も、今度の4試合を映像でチェックした。
 しかし、「チャンスがあればチャレンジしたいけど、いまできることはトップリーグで頑張ること」。国際舞台へのチャレンジを過剰に意識する前に、課された職責を全うしたいという。
 冬の連戦。「終わり!」の後に培った課題修正力を活かし、チャンスを確実に仕留める。
(文:向 風見也)

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