セブンズ 2016.12.01

リオ五輪に立てなかったジェイミー・ヘンリー 再び桜を胸にセブンズの舞台へ

リオ五輪に立てなかったジェイミー・ヘンリー 再び桜を胸にセブンズの舞台へ
再びドバイセブンズの大舞台に戻ってきたヘンリー。鶴ヶ?主将などと共に経験のない選手たちを引っ張る(撮影:出村謙知)
 あるいは、リオデジャネイロ五輪での日本のニュージーランド戦勝利にもっとも複雑な思いを抱いた男かもしれない。
 ジェイミー・ヘンリー。
 かつて、まだHSBCセブンズワールドシリーズの一角を占めていた時代の東京セブンズを知っているファンなら、その圧倒的なラインブレイク力を覚えているはずだ。当然、本人としても日本のファンとしても、ヘンリーがリオ五輪で日の丸を背負ってプレーすることを思い描いたはずだが、そのイメージが現実のものとなることはなかった。
「帰化申請のプロセスが間に合うかフィフティ・フィフティだった。そのことは瀬川さんやセブンズメンバーもわかってくれていて、それでもずっと一緒に練習できた」
 ヘンリーがいう「瀬川さん」とは、もちろん瀬川智広・前男子セブンズ日本代表ヘッドコーチ(HC)のこと。実際に50%だったかどうかは別にして、いくばくかの可能性に賭けて、瀬川前HCは五輪開幕まで1か月を切った7月15日から鹿児島でおこなわれた直前合宿までヘンリーをチームに帯同させている。
「だから、リオオリンピックに出られなかったのは、とても残念だった」
 直前まで可能性に賭けながら最後の最後に断念せざるをえなかったリオ五輪で、瀬川ジャパンは母国NZを撃破。その場に立ちたい気持ちはひと一倍強かったが、仲間たちのがんばり、そしてその結果得られた快挙は自分のことのように嬉しかった。
「オレはニュージーランド生まれですけど、日本人としてのプライドもすごくあって、ニュージーランドに勝った時は本当に興奮したし、誇りに思った」
 ギリギリで自らの手にできなかったリオ五輪から4か月。ヘンリーは再び男子セブンズ日本代表の一員として、ドバイのザ・セブンズスタジアムのピッチに立つ。
「セブンズを始めてからずっと一緒だった」という瀬川前HCが勇退し、新たにヘンリーと同じNZ出身のダミアン・カラウナHCの下、全く新しいチームとして世界最高峰での戦いに臨む。
「経験のないメンバーばかりだけど、みんなチョーがんばっている。だから、ワールドシリーズの経験のあるオレやサキ(鶴ヶ?好昭主将)やダイ(小澤大)が引っ張らないといけないので、まだセブンズのフィットネスがないけど、がんばる。(ワールドシリーズでの戦いは)絶対キツいと思う。それは、シニアメンバーみんなが知っている」
 ヘンリー自身、カラウナHCがチームに落とし込もうとしているラグビーについて、「ダミアンのスタイルがどうなるのか、自分もチェックしているところ」だという。
 当然、指揮官と同じNZ出身で日本でラグビーしてきた経験、7人制での実績も十分のヘンリーには、首脳陣と選手間のコミュニケーションの中核となって、チームをひとつにしていくような役割も求められるようになるだろう。
 懸案だった帰化申請も年明けには全てが解決する見込みで、そうすれば15人制でのチャンスも大きく広がることは間違いない。
 それでも、いまは目の前にある7人制の大舞台に集中する。
「次のオリンピックまでは4年あるので、それまで7人制に選ばれ続けるかわからない。いまは今回のワールドシリーズにフォーカスしてる」
 ヘンリー自身が「前とはすごく違うスタイル。フレッシュセンスを持ちながらプレーできる」という新しいジャパンの中核選手として、まずは砂漠の中の「7人制」と名付けられたスタジアムで大暴れする。
(文:出村謙知)

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