コラム 2016.10.31

大阪・東海大仰星、花園連覇への戦いが始まる 初戦は84−0と大勝

大阪・東海大仰星、花園連覇への戦いが始まる 初戦は84−0と大勝
WTB西村高雅は後半16分、トライを挙げる
 戦後6校目の全国高校大会連覇に挑む東海大仰星が10月30日、初戦となった大阪府予選決勝トーナメント1回戦で高津(こうづ)を84−0で降し、快勝発進を決めた。
 前後半60分で12トライを記録。U17日本代表の2年生FB・河瀬諒介がチーム最多の4トライを挙げる。父に元日本代表NO8の泰治(現 摂南大総監督)を持つ河瀬は、その父の目の前で緩急をつけた走りを披露した。キッカーで副将でもあるCTB松本大吾は12本のゴールキックをすべて決める。
 それでも、監督の湯浅大智は淡々としていた。
「高津は高校入学時の内申点がすごくしっかりしています。そういうラグビーをしていました。一生懸命でした。ウチが抜けても必ずカバーリングに来ていた。最後のディフェンス1枚に対してはこちらからつっかけて、完全なラストパスを送れるようにしないといけません。いい課題をいただきました」
 湯浅の言葉の象徴は後半19分にあった。敵陣ゴール前で河瀬が松本にパスを放つが、バッキングアップに捕捉され、ノット・リリース・ザ・ボールの反則を取られる。
 高津は府下有数の公立難関校だ。次に試合を控えていた関西福祉大金光藤蔭監督の久保玲王奈は自チームのアップを見ながら話す。
「内申書オール10の子たちがくるんですから、そもそもの運動量能力は高いんです。それに必ず15人以上部員を集めています」
 点差がついても、切れない部分は勉強における集中力の転用。進学校らしさが出ていた。
 主将のFL山田生真(いくま)の口を突くのも最初は反省だ。
「ミスが多かったです。つなぎの部分であったり、ゴール前であったり。チームとして詰め切れませんでした」
 前後半ともに6トライずつ獲得。後半も勢いは変わらなかった。その上、高津を0封しているにも関わらず、監督、主将ともにまずよろこびが出ないのは、目指している高みに対する厳しさを表している。
 今年の公式戦成績はかんばしくない。
 今春の第17回全国高校選抜大会では準決勝で、桐蔭学園(神奈川)に26−29で敗れる。優勝はその桐蔭学園を33−17で破った東福岡(福岡)になった。
 5月15日の第71回府総体(春季大会)決勝では大阪桐蔭に7−24で敗北。府2位の座に甘んじた。
 9月11日の「2016大阪府ラグビーシーズン開幕ゲーム」では春に府4位だった大産大付に33−27と競られた。
 その負けかけた試合直後のミーティング、山田は全部員の前で涙を流した。コンタクト能力の高さなどで1年から公式戦出場してきた主将は自分のふがいなさを思い知る。
「チームがバラバラと思うと泣けてきて」
 薄暮ゲームのあと、長居第二陸上競技場は黒い闇に包まれる。街路灯の白い光がわずかに浮かぶ中で山田は嗚咽(おえつ)した。
「自分ではしっかりやっているつもりでした。でもそれだけでは勝てないことがわかりました。『それぞれが責任をもってやってほしい』と言いました」
 集合の輪がほどけた後、1人で立ち尽くす山田にLO田中利輝(りき)が歩み寄る。
「俺たちが頼りないのはわかる。でも、これから頑張るから、もう少し頼ってくれないか」
 田中は言葉をかけた理由を話す。
「イクマとはずっと一緒にやって来ました。熱いヤツです。泣きながら話す姿を見ていたら、『あいつのためにもやったらなあかん』と思いました」
 田中をはじめとする3年生は、山田に頼り切っていた練習や試合の声出しなどを自ら率先して始める。
 松本は追い上げられたゲームで、バックライン全体の攻撃力の弱さを痛感する。湯浅に試合形式の練習を増やすよう働きかける。
 後ろの7人を統括する松本は話す。
「もうキャプテンを泣かせたくはありません。ぼくもそれまでは1対1が多かったけど、チーム全体に意見を発信するようになりました。バックスだけの練習ではタックルの手前の強度で、仰星の特徴であるテンポや連携を意識して、前よりも長い時間やっています」
 高津戦の前半22分、3本目のトライはSO和田悠一郎、CTB根塚洸雅(こうが)がまっすぐにラッシュする。ディフェンスを引きつけ、それぞれがパス。最後に受け取った河瀬が敵陣インゴールにダイブした。
 日々の鍛錬は形になってきている。
 次戦は11月6日。準決勝の日新戦である。順当に行けば、13日の第一地区決勝で大阪朝高と対戦する。2大会ぶり10回目の全国舞台を目指す強豪が最初の関門になる。
 山田は言う。
「連覇はもちろんだけれど、ぼくはこの代で、このメンバーで、このチームで勝ちたいのです」
 湯浅も応える。
「私は毎年そう思っています」
 秋と同じくチームも深まりを見せる仰星。第96回全国高校大会で頂点に立つべく、ここからさらに成長を続ける。
(文:鎮 勝也)

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