国内 2016.10.30

NECの分析勝ち。神戸製鋼の狂った「歯車」とは。

NECの分析勝ち。神戸製鋼の狂った「歯車」とは。
神戸製鋼の防御を突破しようとするNECのジョーダン・ペイン(撮影:松本かおり)
<ジャパンラグビートップリーグ 2016−17 第9節>
NEC 38−24 神戸製鋼
(2016年10月29日/東京・秩父宮ラグビー場)
 戦前まで1敗と、全勝中の2チームを追う神戸製鋼。優勝戦線に絡むにはさらに白星が欲しかった。しかしこの日、前年度は入替戦に出場したNECに3勝目を与えた。
 前半4分、7試合連続先発中のSOイーリ ニコラスが肩を痛め退場し、攻撃網の構成は激変。「ぎくしゃくした部分も…」と某選手が漏らすように、エラーが重なる。
 かたやNECは、まず序盤の防御で魅せる。前半20分、司令塔のSO田村優が、鋭い出足のタックルでCTB山中亮平を押し返す。攻守逆転して間もなく、ペナルティゴールを決める。13−12と勝ち越す。
 攻めては、敗れた神戸製鋼のFL橋本大輝主将いわく「よく神戸製鋼を研究されて…」。タッチライン際のラインアウトから中央に攻撃を仕掛けるや、一転、ラインアウトの地点へ球を振り戻す。以後も接点から見て横幅の広い「順目」ではなく狭い「逆目」を突いた。SO田村が「動けなさそうな人のところを狙いました」と言うなか、CTB釜池真道は具体的に話した。
「相手バックスリーが順目に動きがちで、その逆が空く」
 悔やむのは神戸製鋼の「バックスリー」。WTBで先発して途中からFBに回った山下楽平は、固めたはずの「逆目」を破られたと感じた。
「外側からのコールに反応して立っているだけのディフェンスになってしまった。1人ひとりが前を見て、相手の位置を見ながら立たないと」
 
 NECは29分、敵陣深い位置からのキックをハーフ線付近やや左で捕る。また「逆目」を駆ける。視線の先の神戸製鋼のFW陣に、防御網を張り直す間を与えなかった。
 WTB後藤輝也が左端を駆け抜け、CTB釜池はこう続ける。
「毎週、相手の研究はしている。きょうはそれ(対策に基づくプラン)を実行できた。ボールを最後まで(ミスなく)継続できたので」
 作戦遂行は、ハイパント攻撃にも見られた。SO田村がタックラーたちの背後へ球を蹴り上げ、味方がその弾道を追う。再獲得。神戸製鋼としては、突然のメンバーチェンジによる連携不備を突かれた格好でもあった。HO木津武士は舌を巻く。
「やられながら、うまい作戦だと思いました」
 ハーフタイム直前に敵陣中盤左のスクラムから「逆目」を突いたNECは、NO8ジョージ・リサレのトライなどで32−12のスコアで後半を迎える。ここから神戸製鋼は優勢だったスクラムと持ち前の優雅な攻めで追い上げるが、14分に24−32と追い上げてからまた、失速する。
 痛かったのは、後半25分のワンシーンだ。
 自陣22メートル線エリア右。SHアンドリュー・エリスらの防御で奪った自軍スクラムを崩す。実はスクラムを組む直前、最前列3名のうち2人を入れ替えていた。
 代わり端の1本。入ったばかりだったHO金井健雄は「僕らのなかでは押していたけど、(反則を)取られた」。ここでSO田村がペナルティゴールを決め、ここから再逆転を狙う神戸製鋼はラインアウトでも失敗を重ねる。最後まで歯車を狂わせ、星取表の「波乱」を招いた。
(文:向 風見也)

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