国内 2016.09.01

ヤマハ矢富勇毅、開幕戦勝利も「伸びしろ」だらけな件。

ヤマハ矢富勇毅、開幕戦勝利も「伸びしろ」だらけな件。
今季第1節のパナソニック戦でプレーする矢富勇毅(撮影:松本かおり)
 8月26日、東京・秩父宮ラグビー場。開幕戦勝利。日本最高峰のトップリーグのオープニングゲームで、前年度3位だったヤマハが3連覇中のパナソニックを破った。
「自分たちが取り組んできたことを全面に出して得点を取れた。そうして去年のチャンピオンチームに勝てた。すごく、価値のある試合だったと思います」
 スクラムでの優位性を活かし、24−21で勝利。笑顔を浮かべた1人が、31歳の矢富勇毅だった。終盤には、先発要員のポジションチェンジを施した王者の追い上げを食らったが、「脅威は感じました。ただ、そこでブレイクされたのは、これからの自分たちの伸びしろ」。34歳のSO大田尾竜彦とは、「焦ることはない」と話し合っていたという。
「セットプレー(スクラムやラインアウト)という、自分たちの立ち戻れる場所があったので。リードも3点、ありましたし」
 攻守の起点で球をさばくSHとして、フル出場。試合後の清宮克幸監督との会話を思い出し、こう続けた。
「清宮さんには、フィットネス(持久力)が足りないと言われました! これからは80分間出ても大丈夫なように、自分を鍛えていきたい。そこも、伸びしろかなと」
 京都成章高卒業後に早大入りすると、持ち前のサイドアタックを披露する。4年間で2度の学生王者に輝いた。
 ヤマハ1年目の2007年には、日本代表としてワールドカップフランス大会に出場した。しかしその後は、度重なる怪我に泣く。2011年に右膝、12年に左膝の前十字靱帯(じんたい)を断裂した頃には、引退も頭によぎったという。
 辛苦を乗り越えると、2014年頃から代表復帰を果たすなど復調した。さらに今季は、スーパーラグビーの日本チームであるサンウルブズに加入した。南アフリカツアーへの帯同など、苦しくとも充実した日々を過ごすことができた。
「自分のコンディションがどうか、もう、わからないですね!」
 怪我の多かった30代の選手が、限られたオフを挟んで真剣勝負を重ねる。体調管理が心配されるところだろうが、本人はただただ声を弾ませる。
「もう、スタッフの方には、自分の感じたままのことを伝えようと思っています。開幕前の週は少し身体に鞭を打ってやった部分もありますけど、これからはしんどい時、正直に『休みをもらいたい』と言っていくことも大事になる。ただ…いま、楽しいので。来年もこんな感じにできたらいいな、と」
 ヤマハでは練習時間こそ制限されているが、試合になれば不動のレギュラーだ。大一番ではこの日のようなフル出場もあろう。「チームに信頼される限りはやりたいですし、最後の最後まで勝ちたいという思いがある」。一体、自分がどこまで戦えるか。未知なる挑戦の只中だ。
 まずは9月2日、キヤノンとの第2節(東京・町田市立陸上競技場)への準備を進める。
(文:向 風見也)

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