国内
2016.08.21
上り調子の明大で主将を任されたら…。桶谷宗汰が明かす「プレッシャー」とは
王座奪還を目指す明治大学の主将、FL/NO8桶谷宗汰(撮影:福島宏治)
桶谷宗汰は、明大の主将を任された心境をこう明かす。
「主将になってもならなくても、最終学年。練習でも試合でも、悔いの残らないように身体で引っ張っていきたいとは思っていましたけど…」
ひたすら突き進むという意味の「前へ」を部是とし、過去12回の大学選手権制覇を達成した明大は、前年度、5季ぶりに同4強入りを達成。さらなる成績アップが望まれるなか大役を担うのが、桶谷だった。長野・菅平での合宿期間中の8月16日、思いを語った。
「去年、ファンの皆様も久々に強いメイジが復活しそうだと感じたと思う。そうなれば、次のチームはそれ以上の成績が当たり前に求められてくる。…その、プレッシャーが、やばかったです」
決まったとなれば、やるしかない。
キャンプ中のテーマには、守備を掲げた。なにせ、始動後初の公式大会である関東大学春季大会グループAでは平均失点を41.2としていた。元ニュージーランド代表のピタ・アラティニをスポットコーチに招き、組織性のチェックを重ねる。守備網の整え方やプレッシャーのかけ方などを、くまなく精査した。
生来の強みである波状攻撃には、胸を張っている。大阪・常翔学園高3年時には、全国高校ラグビー大会を制覇した。身長178センチ、体重99キロと小柄も、足腰の強さを長所とするFL兼NO8だ。後ろには兵庫・報徳学園高出身のCTB梶村祐介、WTB山村知也と好ランナーが控えているだけに、自らの突進力と周囲の才気をシンクロさせたいだろう。
合宿中の14日には、留学生ランナーを揃える大東大に47−33で勝った。
「ディフェンスはまだまだですけど、アタックのストラクチャーがうまい具合にハマっている。大東大戦でも、暑いなかしっかりと動けていた。前へ、って言うくらいですから。アタック、アタックと行ければ。春にうまくいった部分、いかなかった部分は見えた。いい感じに、上がって行ける。シーズンが始まるのが楽しみです」
遡って7月初旬。ストレングス&コンディショニングコーチを務めていたスタッフが、東京都の条例違反の疑いでクラブを去ることとなった。突然の出来事に困惑する部員たちを前に、桶谷は毅然として、活動に専心するよう訴えた。グラウンドでは、とにかくラグビーに集中する。そうした当たり前かもしれぬことの貴さを、改めて確認しているようだった。
就任4年目の丹羽政彦監督の尽力に感謝しつつ、こう考えを明かした。
「丹羽さんが何度も大学へ出向いて、僕たちをラグビーに集中させてくれて…。社会的には、明大の関係者が問題を起こしたと見られている。失った信頼を選手が取り戻すには、結果を残すしかないのかな…と。4年生は皆、自覚しているはずです。主将をやってよかったという実感があるかどうかは、まだあまりわからない。ただ、全部が終わってから、よかったと言えるシーズンにしたいです。自分の経験値も上がるでしょうし…」
明大が掲げる「前へ」には、障壁から逃げずにぶち当たるべきという意味も含まれていよう。精神的な圧力と外的なアクシデントに、船頭役はどう向き合ってゆくのだろうか。
(文:向 風見也)