国内 2016.07.28

ふたつの「2」に秘めた歴史。拓大・鄭季和、「いまは、皆と仲良く」。

ふたつの「2」に秘めた歴史。拓大・鄭季和、「いまは、皆と仲良く」。
今年の関東大学春季大会、法政大戦でプレーしたときの拓殖大CTB鄭季和(撮影:志賀由佳)
 決意の2度目の来日だ。韓国からやって来たラグビー選手の鄭季和が、日本の拓殖大で在籍2年目のシーズンに挑んでいる。
 元韓国代表の根永を父に持つ。「縦のプレーは得意で、好き」。身長177センチ、体重86キロのインサイドCTBとして、直線的なランでぐいと推進。今季は春季大会でも出場機会を得て、遠藤隆夫監督からは「経験を積めば良くなる」と潜在能力を買われている。
 国際リーグであるスーパーラグビーのサンウルブズでプレーする具智元とは、家族ぐるみで付き合っている。智元の兄で、いまは日本最高峰トップリーグのホンダでプレーする具智充とは同級生だ。
 具兄弟の父で元韓国代表の東春も、かつてホンダで活躍した。韓日両国間の競技の認知度を鑑み、「韓国より日本の方が盛んで、いろんなチャンスもある」と感じたという。鄭の父である根永もそれに賛同し、智充、智元、季和は揃って来日を決める。大分県の日本文理高でプレーし、卒業後、季和は神奈川県の専修大へ進んだ。
 もっとも、ここから先は回り道をゆくこととなる。当時の思いを、本人が順序立てて説明する。
「2012年に専修大に入って1年間プレーしたんですけど、事情があって辞めて。一旦、韓国へ帰りました。ここでブランクがあったんですけど、去年、拓大に再入学をしました」
 専修大の寮に入るや、同部屋の先輩と喧嘩になった。順風満帆ではない生活も青春の1ページではあるが、当事者としては我慢がならなかった。元日本代表の村田亙監督からは止まるよう説得されたが、1年での退学を決めた。帰国後は、韓国のクラブチームなどを転々した。
「生活で合わないことが出てきて。最初はそれでもラグビーをやっていたんですけど…」
 列島に背を向けたようだった青年を、友の家族は、見捨てなかった。東春は、自分の息子たちがプレーする拓大への再チャレンジを推薦。日本の大学へやや後ろ向きなイメージを抱いていた季和はそれに応え、東京は八王子のキャンパスへ足を踏み入れたのだった。
 一足先に拓大入りしていた同級生の智充は、季和の入学時には4年生だった。最上級生に親友がいたこともあり、季和はすぐにクラブへ溶け込んでゆく。「いまは慣れて、皆と仲良く練習しています」。そう言えること自体が、嬉しかった。
 後輩の智元が副将としてプレーする今季は、アセリ・マシヴォウ、シオネ・ラベマイといった南半球出身の大男と上限が2つという外国人枠を争う。いざ、チームが2012年度以来遠ざかっている全国の舞台へ。24歳の2年生は、「今年は大学選手権に行きたい」。いち学生選手としての目標を、淡々と語った。
(文:向 風見也)

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