国内 2016.05.31

日本ラグビー選手会、発足! 「一緒にできることを」(廣瀬代表理事)

日本ラグビー選手会、発足! 「一緒にできることを」(廣瀬代表理事)
写真左から川村慎理事、廣瀬俊朗代表理事、和田拓理事、小野晃征選手(撮影:松本かおり)
 日本ラグビー界のトップ選手が参加する一般社団法人日本ラグビー選手会は5月31日、都内で発足記者会見をおこなった。
 昨季限りで引退した元日本代表主将で会長(代表理事)の廣瀬俊朗氏(東芝)、日本最高峰トップリーグの社会貢献組織キャプテン会議で代表と副会長を務める川村慎理事(NEC)、和田拓理事(キヤノン)、昨秋のワールドカップイングランド大会でプレーした日本代表の小野晃征(サントリー)らが出席した。
 廣瀬氏は「自分自身、選手会が必ず日本ラグビーを良くできる組織だと思って、信念を持ってやっていきたい。これからやっていくなかで利害関係、口論が生まれるかもしれませんが、(全ての根底には)日本ラグビーのためという思いがある。それだけはお約束をしたい」と語った。
 トップリーグの選手や日本代表資格を持つ選手、国際リーグのスーパーラグビーに参加する日本のサンウルブズに所属する選手ら、約600人が会員となった。将来的には女子選手の参加も検討されるという。
 役割はおもに4つ。(1)日本ラグビー協会が全国へのラグビーの普及活動、(2)今春の熊本地震や2011年の東日本大震災で被災した地域などを支援する社会貢献活動、(3)プロアマを問わず選手のセカンドキャリアへのサポート、(4)脳震盪やドーピング問題などの啓もう活動だ。
 幼少期をニュージーランドで過ごした小野は、「脳震盪になったら身体がどうなるか、どうしたらもう1回ピッチに立てるか。ニュージーランドでは、その考えが全体に浸透されている。これからは日本もそこまでやらないと。エリートのレベルで(脳震盪やその対策に関する知識に)不安があったら、子どもたちも不安になる。安心してプレーする環境を作っていきたい」と話した。
 設立の発端は、昨年の春から夏にかけての辛苦にあった。
 当時はワールドカップイングランド大会を控えて猛練習をおこなっていた日本代表のもとへ、名称決定前のサンウルブズが選手のオファーを敢行していた。もっとも、その契約書の内容などに多くの選手が違和感を覚え、廣瀬や小野は国内外で意見調整などに奔走。サンウルブズのディレクター・オブ・ラグビーでもあった当時のエディー・ジョーンズ日本代表ヘッドコーチは、それらの行動をスーパーラグビーそのものへの拒絶反応ではと誤解。ナショナルチームが大きく揺れた。
 廣瀬代表理事は「協会も苦労していたと思いますが、最後の負担が選手のところへ来たのは事実です」と回想。「もし選手会があれば、正式な場でお互いにフェアに話し合えた」と続けた。
「(日本代表は、ワールドカップで)ベスト8、もしくはベスト4をターゲットに…と思っています。(プレー面だけでなく)環境もそれを目指さないといけない。お互いにベスト4へ向かうなか、どういったことが必要か(を議論したい)」
 会見に出席した坂本典幸・日本ラグビー協会専務理事は「日本ラグビー協会が唯一の統括組織で、全てのチームに了解を得られている。選手会は労働組合ではない」と強調。選手会側も労使交渉を活動目的としておらず、各選手の所属先にその意思が伝わるまで、設立会見を見送っていた経緯がある。正式な設立日は3月10日だった。
 活動に必要な年間予算は約600万円と見込まれていて、会員から集める1口5000円の会費、クラウドファンディングによる寄付がそれを賄う。廣瀬代表理事は、集まった報道陣に「選手同士で立ち上げた会なので、完璧なこともありません。メディアの人から観ても『こうした方がいい』といった話が出ると思います。発信していただくだけではなく、一緒にできることを探っていただけたら嬉しいです」と語った。
(文:向 風見也)

PICK UP