海外
2016.05.24
進化するサンウルブズPR垣永 タフなスクラム重ね「少しずつわかってきた」
レッズ戦後のサンウルブズPR垣永真之介(Photo: Getty Images)
国際リーグのスーパーラグビーは終盤戦に突入。日本から初参戦するサンウルブズは、5月28日、キャンベラ(オーストラリア)のGIOスタジアムでブランビーズと1か月の休息前最後となる第14節に挑む。現在1勝9敗1引き分けのチームにあって全11試合に出場中のPR垣永真之介が、ここまでで得た教訓と経験を語った。
21日、ブリスベンはサンコープスタジアム。第13節でぶつかるレッズは、自軍ボール時成功率9割超とスクラムに自信を持っていた。開幕から押し込まれることも多かったサンウルブズは、やはり、キックオフ早々の一本で押しつぶされた。
両軍合わせて16人のFWが組み合うスクラムはプレーの起点。その優劣が試合の流れを象る。最前列で相手の左PRとHOの間に頭を挟まれる右PRは、劣勢時には心身ともに大きな重圧を受ける。
この日、最前列右に入った垣永は、素直に驚いた。25−35で屈した直後、こう振り返った。
「事前に研究していた時点で、レッズのスクラムはスーパーラグビーのなかでもかなり強いとわかっていた。ただ、想像以上だなと…。さっき、レッズの人たちとも話したんですけど、『スクラムではほとんどのチームに勝っていて、自信を持っている』と」
もっとも中盤以降、左PR三上正貴、HO木津武士とのパックはやられっぱなしには終わらなかった。徐々に自軍ボールを安定して供給するようになり、相手ボールの際も低く踏ん張って耐えた。後半8分までグラウンドに立った垣永は、こう背景を明かした。
「足を後ろに下げて、強い姿勢を取りました。(相手の高さよりも)下に行く、というイメージです。あとは木津さん、三上さんとその都度、『向こうがこう来るから、こうだ』と細かいことを話し合って…」
ここまで7試合を演じてきた南アフリカ勢には、スクラムの際に右PRが相手(サンウルブズ)のHO側へ組み込む傾向がある。「内組み」と呼ばれるこの組み方は厳密には反則だが、勢いよく押し込む猛者の「内組み」は、しばし笛を吹かれない。垣永は「(日本と海外では)レフリングの解釈が違います」とも証言している。
さらにHOの堀江翔太主将によれば、スクラム中の力関係、様子は「その日に組んでみないとわからない」ものだという。事前情報として対戦相手の「内組み」をつかんでいても、それに慣れるにはどうしても時間がかかる。スクラムコーチを持たないサンウルブズであれば、なおさらだろう。
しかし2月の開幕以降、その「内組み」と幾度も対峙。垣永にも、徐々に免疫が付き始めている。
ホームの東京・秩父宮ラグビー場で初勝利を挙げた4月23日の第9節でも、スクラムに自信を持つアルゼンチン代表級のジャガーズの「内組み」をほぼ対処した。互角に組み合った(○36−28)。
フル出場したPR三上は「我慢して、我慢して、我慢して…」。相手の「内組み」に無理に対抗すれば、HOとつかみ合っているバインドがほどけかねない。まずは仲間同士のつながりを保つことを意識し、低い姿勢でまとまって耐える。結果、事なきを得た。
このように、フロントロー陣のハードディスクには対応策がどんどんアップデートされていた。レッズ戦でも相手の右PRが「内組み」の傾向になったものの、お手上げにはならなかったとPR垣永は言う。
「少しは、対応できたかなと」
日本代表として6キャップ(国際間の真剣勝負への出場数)を誇る身長180センチ、体重115キロの24歳は、スーパーラグビーでスクラムを組んだ実感をこう言葉にした。
「強度に慣れた。海外のチームは日本と組み方が違いますが、そのなかでも力を感じます。ただ、何をすればいいか、少しずつわかってきました」
3月ごろから、チームの右PR全員と語らう時間を増やした。大きなノートパソコンを広げ、相手のスクラムを研究し合っている。ライバルの意見を耳にしつつ、ミリ単位の駆け引きの妙を学び取るのだ。歴史的な3勝を挙げた昨秋のワールドカップイングランド大会時は、正規のメンバー入りが叶わなかった。2019年にある日本大会でプレーするまで、1つひとつキャリアを積む。
(文:向 風見也)