土井崇司氏が「学園ラグビーコーディネーター」に就任。東海大付属高を強化。
土井崇司氏は今年4月、学校法人東海大学に新設された「学園ラグビーコーディネーター」に就任した。
大阪から神奈川に単身赴任中の56歳はその内容を説明する。
「東海大の付属高校全体の底上げ、強化を担当します。2019年にはワールドカップの日本開催もあるし、去年の南アフリカ戦の勝利もあって、いまラグビーはブームですから」
「学園」とは東海大グループ全体を指すが、土井氏が注力するのは、自分が生きてきた場所、つまり高校である。
現在は東海大湘南キャンパス内にあるスポーツ教育センタースポーツ課に勤務する。学園全体のスポーツ振興、各種大会やイベントなどを取り仕切る。大学ラグビー部ではテクニカルアドバイザー。
新しいポストを含め兼職になる。
土井氏は1984年、大阪府枚方市に新設されて間もない東海大仰星高に体育教員として赴任した。創部したラグビー部を全国優勝4回、準優勝1回の名門に仕立て上げる。
その理論を付属高校全体に押し広げて行く。「東海スタンダード」の構築である。
これまでも、空き時間を使って指導は行ってきたが、巡回コーチの権限を正式に付与されたことになる。
現在、8つの付属高校にラグビー部はある。
東京都=菅生、高輪台
神奈川県=相模
山梨県=甲府
静岡県=静岡翔洋
大阪府=仰星
福岡県=福岡(旧名は五高)
熊本県=熊本翔星
全国大会の出場歴があるのは、菅生(1)、相模(8)、静岡翔洋(22=前身の東海大一、東海大工を含む)、仰星(16)の4校だ(数字は出場回数)。
菅生は1997年度の第77回大会1回戦で大阪桐蔭(大阪)に13−24で敗れた。
甲府は昨年度の県予選決勝に進出するも、日川に5−26で敗退する。
土井氏の指導が入れば、さらなる成績アップが期待できる。
「各校色々と事情が違うので、細部に渡って何ができるか検討中ですが、指導者とは連絡を密にしていきます。そして必要ならば、グラウンドに入って直接コーチングもさせてもらいます」
このゴールデンウィークは、4月27日〜30日まで福岡、5月1日〜5日までは仰星についた。
土井氏は昨年8月、指導者向けの本を発刊した。「もっとも新しいラグビーの教科書」(ベースボール・マガジン社)である。
全287ページのテキストは理論、実践編の2部構成で、自身がラグビーを始めた府立金岡高時代から40年の経験が詰まっている。
評判は上々で版は3回重ねた(3刷)。
編集をしたのはスポーツライターの直江光信氏。月刊誌「ラグビーマガジン」や季刊誌「ラグビークリニック」で取材、執筆、編集業務をこなしている。
「色々な場所で、高校の先生方や大学のコーチのみなさんに『読みました』と言われました。赤線がいっぱい引かれた本も見せられたこともあります。僕自身、知らなかったことがたくさんあった。グラウンドをタテに割っての攻め方なんて初めて聞きました。衝撃的でした。制作に携われてたくさん勉強させていただきました。幸せでした」(直江氏)
本書ではトライを奪う手だてに関して、70メートルあるグラウンドの横幅を5つのエリアに区切り説明している。日々、一流の指導者と付き合う直江氏にとっても見識の広がりを含め、素晴らしい経験だった。
その内容に最新の知識をプラスしたものを本人自らが付属高校の発展のために使う。
指導の重点を置くのは、強豪校がひしめく仰星、福岡、そして相模である。
同じ小田急沿線にある相模は電車移動で30分程度の距離。三木雄介監督は土井氏の高校時代の教え子でもある。
「相模は大学のおひざ元ということで、関係者みんなが期待しています。私自身も職場からも近いし、顔を出しやすい」
相模は昨年度、記念大会による希望枠で25年ぶりに全国大会出場を果たした。
しかし、通常年度に花園の土を踏むには、全国優勝1回、準優勝4回の桐蔭学園、さらには1899年(明治32)に創部された日本ラグビーのルーツ校、全国優勝2回の慶應義塾を倒さねばならない。
神奈川は三国志の様相を見せる。
その中で土井氏は、中学生勧誘を含め全面的に三木監督をバックアップするつもりだ。
2014年の夏の甲子園には、相模、甲府、望洋(千葉、現校名は市原望洋)、四高(北海道、現校名は札幌)の4校が出場。高校野球では過去最高の数に学園は活気づいた。
「全国大会に出れば、学園全体が盛り上がる。イメージも上がります。そのお手伝いができるように頑張ります」
これまでラグビーの一大会最多出場校数は2。その数字を上げていく。
写真=「東海スタンダード」の構築を目指す土井崇司氏。