海外 2016.05.18

ストーマーズ戦はゲーム主将に。サンウルブズ立川の「いろんな可能性」とは。

ストーマーズ戦はゲーム主将に。サンウルブズ立川の「いろんな可能性」とは。
ストーマーズ戦後、会見で語るサンウルブズの立川理道(Photo: Getty Images)
 世界最高峰とも言われるスーパーラグビーに日本から初参戦するサンウルブズにあって、この国の指導者として初めて同リーグに挑む田邉淳アシスタントコーチは言った。
「アイツにはいろんな可能性がありますよね。プレーも然り、人間、リーダーとしても。将来が楽しみです。代表でも、このチームでも、ずっと一緒にやっていきたいなと思います」
 どこか意味深長な談話を引き出すのは、立川理道。日本代表のSOやCTBとして43キャップ(国際間の真剣勝負への出場数)を獲得した26歳で、サンウルブズでは「自称」という注釈付きながら副将を任されている。
 高いパススキルと身体を張り続ける資質、加えて仲間をひとつにするグラウンド外での態度を踏まえ、37歳の若きコーチは「ずっとやっていきたい」と言うのだ。ちなみに6月にある日本代表ツアーでは、着任前のジェイミー・ジョセフ新ヘッドコーチ(HC)に代わってサンウルブズのスタッフが陣頭指揮を執る。田邉も国際舞台に関わる予定だ。
 2016年5月14日、サンウルブズにとって準ホームの扱いであるシンガポール・ナショナルスタジアム。ストーマーズとの第12節は序盤から主導権を握りながら、ノーサイド直前に追いつかれた。17−17。引き分けに終わった。
 ストーマーズはアフリカ・カンファレンス1で首位の強豪だが、それまで1勝8敗だったサンウルブズはタックルの雨を降らせる。鋭いラインスピードで蒸し暑さに苦しむ相手から落球を誘い、球を持てば相手守備網の裏へキックを放つ。WTB山田章仁らを効果的に走らせ、最後の最後までリードを保っていた。
 強豪からの白星が間近に迫っていただけに、立川は「勝敗のところは結果論。負けたことは反省して、次に生かしたいです」。この日は先発から外れていた堀江翔太主将に代わって、ゲーム主将を務めていた。
「自信をもって100パーセント出し切れば強い相手にも強いディフェンスができると証明された。FWはインサイドでハードワークしてくれましたし、BKもプレッシャーをかけられた。今日みたいなディフェンスを毎ゲームやっていけたら…」
 リーダーの自覚は、そこかしこに現れる。4月のシンガポール、南アフリカへの長期遠征中は、国内待機組の選手に近況報告のメールを送った。
 2014年にはブランビーズへ留学も、公式戦での出番はなく「自分がこのチームにコミットできるのかを見出せなかった」。自らの辛い体験から、出場機会の少ないメンバーにもできる限りでの心配りを欠かさないのだ。
 27歳の山中亮平は、神戸市内でそのメールを受け取った時のことをこう振り返っていた。
「ええ後輩やな、と」
 帰国後の立川は、屋形船に乗ってのチームディナーを企画。同じ奈良県出身の田邉アシスタントコーチに相談したら「ぜひ、やるべきだ」と背中を押されたという。
「『いる意味ない』と思う選手がいたら残念というか、もったいない。そういうのを失くしたいな、と」
 2015年、歴史的な3勝を挙げたワールドカップイングランド大会の日本代表では、しばしリーダー陣同士のミーティングに加わった。本来はリーチ マイケル主将や副将の堀江、立川と仲の良かった五郎丸歩副将に廣瀬俊朗前主将らのみでおこなうものだったが、「いろいろと経験を積ませようとしてくれたのかもしれない」と立川。周囲の行動によっても、己の立場を強く自覚しているのだろう。
 国内では前年度に引き続いてクボタでプレーするが、その立場も変わった。より、ラグビー選手としての価値を高めるべきタイミングかもしれない。「ファンの方に身近に感じてもらえるように」と、自身のSNSではサンウルブズのチームメイトの動画や写真を継続的にアップしている。
 21日、ブリスベンでのサンコープスタジアム。第13節でぶつかるのは、五郎丸のいるレッズだ。
(文:向 風見也)

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