大学選手権改革について。関西枠の削減必至。
4月の新年度(2016年)から大学選手権の出場校数が16(東海や九州などの地域リーグ参加のファーストステージを含めると18)から12(同14)に減らされることが決定的だ。
その12の配分に関しては現在も協議が続いているが、関西枠が削減の主要対象となりそうだ。
大学選手権は財政面やミスマッチなどの点から元々改革が叫ばれていた。
今年1月10日の日本ラグビー協会大学部会で上がった中心的試案は関東対抗戦(以下対)とリーグ戦(以下リ)は5から4、関西リーグ戦(以下西)は5から3、地域リーグは現状と同じ1だった。
関西枠が削減の対象になった理由は大学選手権4強入りの回数である。今年度(2015年)の52回大会を含め、過去10大会において、進出のべ40チーム中、関西協会所属は3チームだけである。
43回大会の京都産業、大阪体育、48回大会の天理(決勝で帝京に12−15で敗北)のみ。1982年度の19回大会から3連覇した関西の盟主、同志社は一度もベスト4に進めていない。
ただし、個別に見れば、西が東に勝利している試合もある。
52回大会では、同志社(西1)が慶應(対5)に36−8、天理(西2)が早稲田(対4)に14−10、関西(西4)が29−24で法政(リ5)に勝っている。
関西のチーム関係者は話す。
「確かに選手権優勝こそないが、出場チームの下位は関西も関東も力的に変わらない」
そこで、対案として出されたのが各リーグ3位までは無条件出場。残りの2枠を前年度の選手権優勝、準優勝チームの所属リーグに割り当てるというものだった。この案に従えば、来年度は対抗戦(帝京)とリーグ戦(東海)にそれぞれ1枠が割り振られる。
ただし、これも異論が出た。
「前年度の強弱を新年度に反映させるのはおかしいのではないか」
高校の全国大会でも前年度優勝枠はあった。しかし、30年以上も前、1983年度の63回大会から消滅している。
公平性を求めるならば、3リーグの4位同士が総当たり戦を行い、上位2チームの本大会出場が妥当だろう。
ただ、代表決定に通常の週一ペースで試合を行うなら2週間。中3日制を取り入れても9日間はかかる。当然、各リーグは順位を決めるため、日程の前倒しが要求される。
そうなれば12月の第一日曜の早明戦や11月23日の勤労感謝の日に決まっている早慶戦を動かさざるを得ない。ラグビーは定期戦から始まった事実を思えば、試合日を簡単に動かせられるかどうか疑問は残る。
強化という?実?を取るのか、それまでの?文化?を取るのかは難しい。
新システムが紛糾する大学選手権は1964年度(昭和39)に始まった。
1回大会出場チームは4。早稲田、法政、同志社、関西だった。東西2チームだった。
翌1965年の2回大会から8チームと倍に増えた。内訳は関東4、関西3、九州1。関東は対抗戦とリーグ戦の4位までが、たすきがけに対戦する交流戦で出場枠4を決めた。関西は2位までが無条件で3枠目は東海リーグの覇者と権利を争った。
出場チームがさらに倍の16に広がったのは1993年度の30回大会からである。
ここで枠は関東10、関西5、九州1となる。関東は元々の2倍強となる6枠増。しかも、交流戦撤廃で両リーグから基本5チームずつが出られるようになった。一方、関西はわずか2枠の増にとどまった。
リーグではなく、関西と関東の出場枠の推移を見れば、2:2から3:4となり、5:10となった。そして、新年度から3:8になる可能性が高い。
新システムに対して、同志社監督の山神孝志は話し合いの少なさを指摘する。
「現場には相談はなかったね。16から12チームにすれば、現行と比べどういう風に強化されるのかビジョンも示されていない」
改革の前触れはあったが、具体的な話に入ったのは年明けの1月から。確かにこれではチームの浮沈に関わる問題に対し、時間をかけ、議論が出尽くして決めたとは言い難い。
Aリーグの下部や2部にあたるBリーグは深刻な影響を受ける可能性が高い。
選手権への道が閉ざされることにより、大学からの予算や推薦枠の削減が予想されるからである。
Bリーグのあるコーチは話す。
「選手権出場というのは大学側に強化継続を説得させるもっともよい事象。大学側は個別のクラブに対して、その競技体制や歴史は知らない。ただ、『最上位のリーグ』とか『選手権に出た』という単純な部分のみを評価する。だから、選手権に出られなくなれば、強化を止める大学が出てきてもおかしくない」
龍谷は選手権出場7回の実績がある。昨年はB2位となり入替戦でA7位の近畿に挑んだが20−35で昇格はならなかった。
ヘッドコーチの浜村裕之は、削減時の部員確保の厳しさを予想する。
「僕らBのチームがAに上がっても選手権に出られないなら、高校生は『出られるところに行こう』ということになります。関西の大学が高校生の受け皿にならなくなる」
高校全国大会の過去10年における近畿圏チームの優勝、準優勝回数はそれぞれ5。出場枠が減らされれば、浜村の恐れる通り、人材の関東流出はさらに加速し、その空洞化は進むだろう。
選手権の出場枠削減は、そのまま部の衰退に直結する。ひいては日本の大学ラグビーの浮沈につながる。
それほど大きな問題である。
そもそも16チームからの削減は、昨年のラグビーワールドカップイングランド大会で日本代表が3勝してブームが到来した流れに、逆行するものではないのか。
経費がかかるのであれば、セカンドステージのリーグ戦を元のトーナメントに戻せばよい。
ミスマッチもあるが、ゲームでの体感、試合前後の振る舞いなど、敗者が勝者から学ぶことはたくさんある。その刺激が大学ラグビー全体の底上げ、強化につながるはずだ。
大学部会では結論が出ず、最高意志決定機関の理事会預かりになった議案は、3月17日の理事会で方針決定される予定である。
【写真】2015年度の大学選手権で天理大は早大に14-10で勝っている。(撮影/松村真一)