国内 2016.01.30

NEC&サンウルブスの田村優、勝負の季節。「失敗したい」の思いとは。

NEC&サンウルブスの田村優、勝負の季節。「失敗したい」の思いとは。
NECの司令塔、田村優。まずは入替戦に集中し、その後はスーパーラグビーへ(撮影:松本かおり)
 失敗がしたい。ラグビー日本代表のFBとして時の人となった五郎丸歩は、南半球最高峰スーパーラグビーのレッズ挑戦に関しそう言っていた。国内のような快適さが保証されぬ場所で新たな行き止まりを発見し、そこでの苦悩を成長の糧にしたいという意味だろう。
 それと全く同じようなセリフを、同じような意味で話すのは田村優。五郎丸が副将を務めたジャパンの一員として、昨秋のワールドカップイングランド大会に参加した27歳だ。身長181センチ、体重92キロの天才肌である。2月からスーパーラグビーに加わる日本拠点のサンウルブスと契約した背景を、こんなふうに話す。
「個人のレベルアップの場にできれば。僕のラグビー人生、いままでは割と順調に来ていた。ここで壁に当たりたい、というか…。それで、参加することにしました。違った雰囲気のなか、失敗したい。それを経て、またさらに自分がよくなるように。最終的には(自分のプレーが)通用するようにしたいですけど、最初はそんなに簡単ではないと思います」
 いまはNECのSOおよび副将として、クラブの生命維持に気を吐いている。
 1月23日、東京・駒沢陸上競技場。日本最高峰トップリーグの順位決定戦3回戦にあって、NTTドコモと最下位を争っていた。それまで2016年に入ってから未勝利と迷い道に入ったなか、「僕の方でゲームのプランニングをさせてもらった。それをコーチ、リーダーに許してもらった」と田村。同じくサンウルブス入りするチームメイトのFL細田佳也もこう補足する。
「やることが明確になっていた。確実にプラン通りに行くことはないこと、ミスが起きることもわかって、それを踏まえて意志統一ができた。ミスが起きても、プランを変えない」
 ゲームが始まれば、持ち前の技術で味方を前に出した。前半14分には敵陣22メートル付近左で球を得ると、迫りくる相手を蹴散らし、かわし、タッチライン際へオフロードパスを放つ。WTB首藤甲子郎の先制トライを演出した。
 
 続く19分のFB窪田幸一郎のスコアも、自身のビッグゲインをきっかけとした。中盤で球を回す際は、概ね自身とSH以外の選手にパスをさせないよう配慮している向きがあった。田村のパスをもらった選手は、迷いなく相手とクラッシュしているようだった。
 田村は言う。
「シンプルに、と。エリアごとのやることを明確にしたという感じ。判断(しなければならないこと)を減らしすことで、いいプレーができるように…。きょうは、皆が頑張ってくれた。次は、これをベースとして何かのアクセントを加えられれば」
 イングランドでの激闘を体験し、きっと4年後の日本大会への意欲も増しただろう。ジャパンの新指揮官となるジェイミー・ジョセフとは昨春に短期留学したハイランダーズで面識がある。同クラブを率いるジョセフを「優しそうで、厳しそう。(妥協しない点があるのは)とてもいいことだと思う」と見た田村は、こんなふうに未来を語る。
「僕自身、(代表で)プレーをしたい。15年を戦ったメンバーは19年も参加したほうがいいと思っているので。もし、僕が選ばれれば、勝つことにフォーカスした厳しいチームにできれば。勝つことで、何かが起きる」
 まずは30日、埼玉・熊谷ラグビー場でトップリーグの入替戦に臨む。下部トップイーストの三菱重工相模原とマストウィンの戦いを制し、意気揚々と世界に旅立ちたい。NTTドコモ戦後の試合会場の通路で、チームメイトと顔を合わせるや「来週も頑張ろう」と口にした。
(文:向 風見也)

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