「できる。絶対できる」 日本代表マフィのベストタックルを生んだ辛苦と信心
(Photo: Getty Images)
「ナキ」の愛称を持つクリスチャンは、「できる。絶対できる」と自分を信じ続けてきた。
10月11日、グロスター・キングスホルムスタジアムでおこなわれたアメリカ代表とのプールB最終戦。20-8から20-11とリードを詰められた直後の、後半17分頃だった。グラウンド中央付近の接点球を失った日本代表が、さらなるピンチを迎える。自陣右中間を大きく破られる。
ここでピンチを救ったのが、ハーフタイム明けから登場したNO8アマナキ・レレィ・マフィだった。斜め後ろへ駆け戻り、ランナーへ肩をぶつける。タッチラインの外へ押し出し、思わずガッツポーズを決めたのだ。
「私の役割は、勝つために皆にエネルギーを出してもらうこと。持ち味のパワフルなプレー、出せてよかった」
日本代表のプールステージ3勝に貢献したNO8マフィは、ふたつの辛苦を乗り越えてきた。
ひとつめは昨冬の大けがだ。国内のゲームで、左股関節を脱臼骨折。全治1年とも報じられる事態に、「自分の夢や希望が失われたように思いました」。しかし、懸命にリハビリを重ねた。時が経てば、「絶対に戻れる」と信じるようになった。所属先のNTTコムで仲の良いLO/FL鶴谷昌隆は、こう証言する。
「朝早くにクラブハウスに行って、患部のケアをして、トレーニングして、そしてケアをして…。自分の身体が動くようになってから、それをほぼ毎日やっていたと思います。家でもストレッチをして筋肉が固まらないようにしていた。それに一緒に会う時、彼は弱さを見せなかったです」
ふたつめは9月23日、スコットランド代表戦(グロスター・キングスホルムスタジアム/●10-45)での途中退場だ。先発したNO8マフィは故障箇所に近い筋肉を傷め、そのままタンカで運ばれる。「もう、ワールドカップは終わりだと思った」。メディアを介してエディー・ジョーンズ ヘッドコーチの「ナキは必ず戻る」との言葉を耳にしたが、実感がわかなかったようだ。
しかし、ここでも驚異的な回復力を示す。同月28日に全体練習へ復帰。「毎日、毎日よくなっています。絶対、できる」と前向きに語るのだった。
「神様への祈り、皆の祈りが届いて、いま…(復帰)。すごく嬉しいです。俺は大丈夫だけど、スタッフの人が大変かな。毎日、毎日、2〜3回、朝、昼、晩とマッサージをやってくれて…。こんな、でかい身体を」
アメリカ代表戦で繰り出されたあの一撃は、大会のベストタックルの1つに選ばれた。
クリスチャンのNO8マフィは、自分の力を信じている。天から授けられた力は活かすべき場所、すなわちグラウンドで発揮したいと考えている。現在、25歳。11月に開幕する国内最高峰トップリーグを見据えつつ、さらに広い世界での活躍も夢見ている。