ワールドカップ 2015.10.26

豪州が12年ぶりにW杯決勝進出、NZと対決へ! アルゼンチンは夢破れる

豪州が12年ぶりにW杯決勝進出、NZと対決へ! アルゼンチンは夢破れる
豪州WTBアシュリー=クーパーが1本目のトライを決めたあと、仲間と喜ぶ(撮影:早浪章弘)

 南米勢初のラグビーワールドカップ決勝進出という歴史は、2015年英国大会では創られなかった。10月31日のファイナルでニュージーランド代表と対峙するのは、オーストラリア代表だ。
 25日、ロンドン郊外のトゥイッケナムスタジアムで準決勝第2試合がおこなわれ、オーストラリア代表が29-15でアルゼンチン代表を下した。オーストラリアがワールドカップ決勝に進むのは、自国開催だった2003年大会で準優勝して以来。隣国の永遠のライバルとして火花を散らすワラビーズ(オーストラリア)とオールブラックス(ニュージーランド)がワールドカップ決勝で激突するのは初めてで、どちらが勝っても、最多3回目の優勝となる。
 勇敢なロス・プーマス、アルゼンチン代表は史上初のファイナル進出を逃したものの、30日の南アフリカ代表戦で2007年大会以来2回目の3位をめざす。

 準決勝、オーストラリアは序盤に2トライを決め、流れを引き寄せた。前半1分過ぎ、LOロブ・シモンズがインターセプトしてゴールへ駆け抜け、先制。その後アルゼンチンにPGを許したものの、9分には敵陣22メートルライン内のスクラムから右を攻め、SOバーナード・フォーリーがWTBアダム・アシュリー=クーパーへロングパスを放り、追加点を挙げた。

 早めに点差を詰めたいアルゼンチンだったが、今大会のチーム最多トライゲッターであるWTBフアン・イモフが18分に負傷交代し、25分にはLOトマス・ラヴァニニが危険なタックルでイエローカード、準々決勝で脚を痛めていた主将のHOアグスティン・クレーヴィーも31分にベンチへ退いてしまった。

 南米の男たちは14人で辛抱強く守っていたものの、32分、数的有利のオーストラリアがゴールに迫り、アシュリー=クーパーが再びトライを決めてリードを広げた。

 アルゼンチンはPGで得点を重ねたが、トライを奪うことはできなかった。前半終了前、WTBサンティアゴ・コルデーロのブレイクスルーでゴールに迫り、CTBフアン・マルティン・エルナンデスがサポート、しかしワンハンドのオフロードはFBホアキン・トゥクレットにうまくつながらず、ノックオンで得点機を逃した。

 19-9でハーフタイム。

 チャンスはあったアルゼンチンだが、流れが傾きかけたところでラインアウトを失敗するなどしてリズムに乗れなかった。それでも、世界屈指のスクラムでは強さを発揮し、後半早々、PGの3点につなげた。その後1本ずつショットを成功、7点差の状態で試合は進んだ。

 果敢にボールを回し、何度か敵陣22メートル内に入ったアルゼンチンだが、死の組といわれたプールAの4試合でわずか2トライしか許さなかったオーストラリアの守りはしぶとかった。この試合で16本のタックルを放ったFLスコット・ファーディーを筆頭に、全員が身体を張った。

 そして71分(後半31分)、WTBドリュー・ミッチェルが自陣左から快足を飛ばして鋭く内に切り込み、次々とディフェンダーを振り切ってゴール前まで持ち込む。ラストパスを拾ったアシュリー=クーパーがハットトリックを決め、勝利を決定づけた。

 すべてを出し切った選手たちの姿に、アルゼンチン代表のダニエル・オルカデ ヘッドコーチは感情的になって涙を浮かべていた。
「選手たちを心の底から誇りに思う。このチームは努力を惜しまない。哲学と目標をしっかり持った素晴らしい集団だ。そのうち大会を振り返る機会があると思うが、歩んでいる道は間違っていないと信じている」

 応援してくれているファンのためにも、30日の南アフリカ代表戦は勝って帰りたい。ワールドカップで3位決定戦は無意味ではないかという声が一部で上がっているが、アルゼンチンの指揮官は、「我々には大きな意味がある」と言った。クレーヴィー主将も同意見だ。
「前を向いて進むしかない。いま、目標はそこにある。世界王者になれないなら、せめて3位になりたい」

 勝ったスティーブン・モーア主将に笑顔はなかった。
「厳しい試合だった。(アルゼンチンは)意欲的にボールを回すプレーを展開し、こちらは多くの時間をディフェンスに取られ、多くのエネルギーを使った。今日の守備力を誇りに思う。決勝で戦うチャンスを自分たちで得ることができた。来週、挑む壁は大きい。本当にいい戦いをしなければならない」

 オーストラリア代表にとっては4回目の決勝進出だ。マイケル・チェイカ ヘッドコーチは「チーム全員が国のためにプレーしている。いままでの道のりが完璧だったわけではないが、とにかくチームへの忠誠心がすごい」と語る。
 決勝の相手は“史上最強”と言われているオールブラックスだが、ワラビーズは今年の南半球4か国対抗戦で勝って優勝しており、チェイカ ヘッドコーチは「史上最強」という言葉に同意はしなかった。しかし、かなりの難敵であることは承知している。
「(ニュージーランドが)世界ランキング1位であるのは偶然ではない。ここ10試合で我々が勝てたのはたったの1回だけ。我々が勝つには、プラスアルファのパフォーマンスが必要だ」

 10月31日、ラグビー界のワールドチャンピオンが決まる。

(文:竹中 清)

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惜敗したアルゼンチン。司令塔のニコラス・サンチェスと抱き合うオルテガHC
(Photo: Getty Images)

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