立川理道、初のW杯を振り返る「これが4年後も続くとは…」
不安だった。大事なところで球を落としたらどうしよう。パスが乱れたらどうしよう。本番が近づくほど、後ろ向きな思いが頭をよぎった。
しかし、乗り越えた。9月19日、ブライトンコミュニティースタジアム。4年に1度おこなわれるラグビーワールドカップ(W杯)のイングランド大会初戦を、「うわ、テレビで観たワールドカップ。楽しみだな」との心持ちで迎えた。結局、過去2回優勝の南アフリカ代表を34-32で下した。
日本代表の立川理道は、初戦にクレイグ・ウィングの「ふくらはぎの問題」のため急きょリザーブ予定から先発に回り、以後、プールBの全4試合に先発した。W杯で24年間未勝利だったチームに3勝をもたらすさなか、こんな意識を貫いてきた。
「あっという間に過ぎたな、と思う時もあれば、長いな、と思う時もある。あまり(大会を)全体的には見ていないです。1日1日、やることをしっかりとやっていきたいです」
白眉の「ゲインライン」での技術は、大舞台でも活かされた。
南アフリカ代表戦の後半28分、敵陣22メートル線手前左のラインアウトからの攻撃。インサイドCTBの立川は、左側から右側へ移動しながらSH日和佐篤のパスを受け取る。相手を引きつけるや左側の小さなスペースへ球を放る。「フラットパス」を放つ。
アウトサイドCTBマレ・サウの陰から飛び出したSO小野晃征がその弾道へ駆け込み、すぐ隣のWTB松島幸太朗の突破を促した。結局、FB五郎丸歩副将のトライとコンバージョンで29-29と同点に追いついている。
「練習では、僕が(主力組に)入っていた。急きょ入ったからどうこうというより、準備してきたことをやろう、と。常に先手を取って動けていたと思う。簡単に止められたり、(ひっくり)返されるということはなかった」
立川は守備でも貢献した。相手が接点から球を出すや、目の前のランナーとの間合いを一気に詰める。リー・ジョーンズ ディフェンスコーチ直伝の「チョップタックル」を連発した。
10月11日のアメリカ代表戦(グロスター・キングスホルムスタジアム/○28-18)では慣れないアウトサイドCTBの位置に入ったが、「周りも上手くコミュニケーションを取ってくれた」。選手が主体となってパナソニック流の守備システムを導入するなか、同チーム所属のHO堀江翔太副将には「ハルはそれをよく理解してくれていた」と褒められたものだ。
帰国後は地元の奈良・天理市でのラグビー教室に参加するなど、成功者の務めを果たした。見据える先は、2019年のW杯日本大会だ。現在は故障中のSO山沢拓也(筑波大3年)ら、将来性が買われるライバルの存在も十分に認識している。
「勝つことの難しさがわかった。いい結果も残しましたけど、これが4年後も続くとは限らない。この先、どういう監督、スタイルになるのかはわかりませんけど、経験を伝えられるところは伝えたいと思います。この4試合を通して、自分のプレーに自信を持ってできたし、楽しめた。4年後に向けて、またメンバーに入りたい。いまは、そっちの思いの方が強いですね」
ビッグステージへの連続出場に向け、力を込める。