NZが難敵フランスに記録的大勝! マコウ「ひと仕事終え、また新たな週へ」
(Photo: Getty Images)
オールブラックス(ニュージーランド代表)がラグビーワールドカップ連覇への難関、フランス代表戦を突破し、ベスト4入りを決めた。10月17日、カーディフ(ウェールズ)のミレニアムスタジアムでおこなわれた準々決勝。ニュージーランドにとっては2007年大会の悪夢を思い出させるシチュエーションだったが、勢いに乗ったら怖いフランスにシャンパンを開けさせず、62-13で完勝した。
決勝トーナメントで62得点は史上最多。49点差も最大記録となった。
最初の5分間、ニュージーランドが敵陣でプレーし続けた。PGで先制する。フランスもショットを決めてすぐに追いついたが、11分、黒衣の4番を着たブロディー・レタリックが相手SOフレデリック・ミシャラクのキックをチャージし、自らボールを確保してゴールへ運んだ。序盤に流れを呼び込み喜ぶオールブラックス。その一方で、痛恨のミスを犯したミシャラクはこのとき右太もも裏を痛め、無念の負傷交代となった。
14分すぎにPGで4点差としたフランスだったが、その数分後、さらに追加点のチャンスを得るも、SHモルガン・パラがさほど難しくない位置からのショットを外し、ニュージーランドにプレッシャーをかけることができなかった。
23分、ニュージーランドはSOダン・カーターがドロップゴールをチャージされピンチになりかけたが、落ち着いて立て直し、右へ展開。CTBマア・ノヌーからのパスを外でもらったWTBネヘ・ミルナースカッダーが鋭く内に切り込んで防御網を切り裂き、ゴールに滑り込んだ。
17-6となって自分たちのペースで戦えた前王者は、さらに28分、相手ラインアウトをスチールしてから攻め上がり、SOカーターが突破、鮮やかなバックハンドオフロードパスを受けたWTBジュリアン・サヴェアがゴールへ駆け抜け、18点差とした。
これ以上離されたくない前回準優勝のフランスは36分、この試合でパワフルランを繰り返していたNO8ルイ・ピカモールがゴールに突進して差を詰めたものの、前半ラストを締めたのはやはりニュージーランドだった。
38分、ハイパントをロングチェイスしたFBベン・スミスが空中戦に競り勝ち、すばやく左へ展開。WTBサヴェアがディフェンダー3人を弾き飛ばしてトライを決め、7万1619人で埋まったミレニアムスタジアムの興奮はピークに達した。
29-13でハーフタイム。
フランスは後半もブレイクダウンで思うようにいかず、ラインアウトも不調でアタックにテンポが出なかった。46分(後半6分)には敵陣22メートル内に入り、モールでペナルティを得て反撃チャンスとなるはずだったが、密集で、NO8ピカモールが倒れていた相手主将リッチー・マコウの顔にパンチをしていたことがビデオで確認され、好機を逃しただけでなく、イエローカードが出てフランスは14人となってしまった。
世界最強軍団といわれるオールブラックスがこの有利な状況を逃すはずがなかった。50分、スピーディーに攻めてFLジェローム・カイノがトライ。
ピカモールが戻ってきたあとも、フランスの落球からオールブラックスはカウンターでWTBサヴェアが駆け抜け、勝負を決めた。
41-13としても手をゆるめないニュージーランドは、FWもBKも走りに走ってさらに3トライを追加し、記録的大差で優勝への階段をひとつ上った。
24日にトゥイッケナムでおこなわれる準決勝では南アフリカと対戦する。
「とても満足している。特に冷静に試合を進められたことを誇りに思う」と語ったニュージーランド代表のマコウ主将。2007年大会ではフランスに準々決勝で敗れていたが、その雪辱を果たしたことについて訊かれると、「そのことをあまり考えたことはない」と言って少し苦笑いし、「ひとつ上のレベルに上がったと思う。しかし、まだ何も終わってない。今夜のパフォーマンスには満足しているが、ひと仕事終えてまた新たな週を迎える。先走りしてはならないということを身をもって学んできた。次も的確なプレーをすれば別のチャンスが手に入るのだ」と、試合後の会見でも気のゆるみを見せなかった。
スティーヴ・ハンセン ヘッドコーチも同じだ。
「まだワールドカップに優勝したわけではないので、はしゃぎすぎてはならない。それは無意味なことだ。(準決勝相手の)南アフリカとは何度も対戦したことがあり、素晴らしいライバルで良い友人でもある。とてつもない試合になる。今夜は楽しむ権利を得たから、それを楽しむ。特別なことだ。でも明日になれば終止符を打って次へと向かう」
一方、今大会をもって退任することが決まっているフランス代表のフィリップ・サンタンドレ ヘッドコーチは、屈辱的大敗で観客からブーイングが起こったことについて、「いつでもブーイングされるより祝福される方が良い。ただ選手は気の毒だ。このような評価は値しない。彼らは全力で戦った。完全に私の責任だ」と語り、「オールブラックス相手では、一度のミスで代償がある。テストマッチは昔とは違うものになってきた。技術、力、スピード、瞬発力、すべてが現代のラグビーには欠かせない。オールブラックスと同レベルでプレーするには4年ごとの準備期間では十分ではない」と、素直に胸の内を明かして大会を去っていった。