ジョージア、フィジカルで沸かす。それでも勝者はオールブラックス。
赤いジャージーの15番がインゴールに飛び込むと、6万9187人の観客が一斉に大声を挙げた。
この日スタジアムがもっとも沸いたのは前半5分、ジョージアのFBベカ・ツィクラウリがゴールポスト左に飛び込んだ瞬間だった。相手がノックオン。そのボールから攻撃に転じ、足にかけたボールを拾う。SOラシァ・マラグラゼのコンバージョンも決まり7-7と追いついた。キックオフ直後、オールブラックスのWTBワイサケ・ナホロがトライを奪ったときの大歓声を上回った。
最終スコアは43-10。10月2日にカーディフ、ミレニアムスタジアムでおこなわれたニュージーランド×ジョージアはオールブラックスが危なげなく勝つも、引き締まった時間が長い試合だった。
敗者の強いフィジカルと激しいデイフェンスは、漆黒のジャージーをたびたび「く」の字に曲げた。オールブラックスのフィニッシャーたちをタッチラインの外に押し出し、ゴールラインの寸前で止めるシーンも何度か。前半20分過ぎから後半10分過ぎまでの30分間はスコアが動かなかった。ミルトン・ヘイグ監督は敗戦にも下を向くことなく「ディフェンスでプレッシャーをかけていこうと準備してきた」。体を張り続けたチームの代表として、FLマムカ・ゴルゴゼ主将がマン・オブ・ザ・マッチに選ばれた。
勝ったオールブラックスはキックオフ直後の1分過ぎ、右ラインアウトからの攻撃で見事な集中力。ブラインドサイドに立っていたWTBナホロがライン参加からトライを奪う最高の立ち上がりだったが、チーム力のピークはまだ先にあるようだ。奪った7トライのうちほとんどがセットプレーからだったように、本来の強味であるアンストラクチャー状態からの攻撃や、フェーズを多く重ねたアタックではコンビネーションが乱れて仕留め切れない。SOダン・カーターのコンバージョン成功率も低く(7本中4本の成功)、なかなか勢いが出なかった。
ニュージーランドはこの試合で3戦を終えて全勝、14ポイントでプールCの首位のまま。10月9日にトンガとプールと戦う。ジョージアは1勝2敗、4ポイントとなり、同ブールの4位。10月7日のナミビア戦に勝って、同国史上初の大会2勝目を手にしたい。