関東大学対抗戦開幕戦で早大大勝。最上級生CTB久富、覚悟の発進。
初めての関東大学対抗戦出場を果たした早大CTB久富悠介
初めてだった。秩父宮のピッチには立ったことがある。赤黒のファーストジャージーを着たことも。ただ、『本物』は初めてだった。
9月6日に開幕した関東大学対抗戦。秩父宮ラグビー場でおこなわれた早稲田大学×立教大学は57-12で早稲田が大勝した。立教の思い切り前に出るディフェンスを受けることもあった。ミスも少なくなかった。しかし、SO杉本頼亮のボールの散らしと密集戦での圧力のバランスがよく9トライを奪った。
ルーキーのFL宮里侑樹が3トライを奪うなど、新しい力も目立った80分。背番号12を背負って出場した久富悠介も喜びを噛みしめた。4年生にして初めての対抗戦出場だった。
今季は春からAチームに定着し、関東大学春季大会でファーストジャージーを着た。大学3年時の全早慶明で秩父宮でプレーした経験もある。しかし、部員の誰もが目指す開幕戦のピッチに立った気分は格別だった。春シーズン、夏合宿での競争を勝ち抜いてつかんだ栄誉だ。
「(この日の)先発は週初めに伝えられました。よし、やってやるぞ、と思った。緊張する方なのですが、思っていたよりも落ち着けていました」
最上級生としての責任感だろう。
福岡・小倉高校出身。もともとSOだ。CTBに転向したのは3年生の夏。新しい景色が広がった。
「(自分の)やることがクリアになったんです。SOはゲームメイクなど、考えなければいけないことも多く、いっぱいいっぱいになることもあった。でもCTBになってその部分はSOに任せ、一歩引いてゲームを見られるようになった。それで思い切りプレーできるようになりました。低い姿勢でボールキャリーして一歩でも多く前に出る。ディフェンスでも思い切って前へ。自分に期待されるプレーを強く意識できるようになりました」
SO出身者としてゲームの状況を把握できる力もある。
シーズンは長く続く。開幕戦のメンバーに選ばれたこと、開幕戦で大勝したことが、冬の栄光を約束しないことは分かっている。ターゲットはあくまで大学日本一であり、そのためには帝京大学という大きな壁を越えないといけない。
夏合宿中におこなわれた帝京大戦にも出場した。7-52のスコアに、王者との距離も痛感した。
「前半の前半はディフェンスで前に出られた。その時間は互角以上にやれました。あれは自信を持っていい。あの時間をどれだけ長く続けられるかだと思います。ただ、簡単にトライを取られるなど自分たちのプレーで戦意を削がれることもあり、結果、ああいう点差になった。帝京の試合巧者の部分などは学びながら、早稲田らしさを出していかないと」
ラストシーズンはすべての時間をラグビーに費やしたかったから、この夏は就活もしなかった。一生に関わる決断をする前に、一生つきまとう勝負に没頭したかった。後悔しない日々を送る覚悟はある。