コラム 2014.11.08

子どもたちの「お兄さん」から、ジャパンの「要注意ランナー」へ。

子どもたちの「お兄さん」から、ジャパンの「要注意ランナー」へ。

 自身の子どもの頃を思い出した。
 今回のツアーで初めてマオリ・オールブラックスに選出され、11月1日のジャパンXV戦で途中出場も成った。11月8日の試合では初先発の座も手にしたFBネヘ・ミルナースカッダーだ。
「僕の場合、オールブラックスの選手と触れ合える機会はなかったけど、憧れていたマナワツ代表の選手たちと交流できたことがある。あれは嬉しかったなあ」
 NZは北島、パーマストンノース生まれのスピードスターは、「子どもたちの笑顔を見られて、今日は楽しかった」と笑った。

 東京・南青山に黄色い声が響いた。タグ・ラグビーに興じる子どもたちだ。野太い声も。そちらはハカのもの。マオリ・オールブラックスの4人が校長先生のリクエストに応え、迫力満点のパフォーマンスを披露した。
 11月7日の午前。来日中のマオリ・オールブラックスの4人が港区立青山小学校を訪問し、子どもたちとタグ・ラグビーを楽しんだ。前出のミルナースカッダーとともに足を運んだのは、NO8エリオット・ディクソン、SHクリス・スマイリーとSOイハイア・ウェスト。NZラグビーをサポートするAIGグループと日本ラグビー協会の普及担当、同小学校の思いが重なって実現した。マーク・シンクレア駐日NZ大使も訪れ、マオリ文化の紹介もおこなわれた。

「島国で、火山があり、温泉も。ニュージーランドと日本はとても似ています」
 子どもたちへの挨拶の冒頭でそう話したシンクレア大使は、続けて「私たちの国を発見したマオリの人たちの文化は、ニュージーランドの中でとても重要なものと考えられています」と言った。大使が、「NZについて知っていることはありますか」と呼びかけると、子どもたちは思い思いの答えを返した。穏やかな時間が流れた。
 タグラグビーを通じての触れあいの時間は、子どもたちだけでなく選手たちも楽しんだ。ボール運び、二人組になってのタグの取り合い、鬼ごっこ。楽しい時間はあっという間に過ぎる。最後のQ&Aコーナーでは、選手たちへいくつかの質問が飛んだ。

「何歳からラグビーが上手になりましたか」の問いに応えたのは、ウェストだ。
「NZでは多くの子どもたちが5歳ぐらいから、みんなが今日やったような腰にタグをつけておこなう、『Rippa Rugby』というものを始めることが多いですね。そして、12歳ぐらいから、ラグビーが上手になることが多いかな。いいコーチと出会ったりして、うまくなれます」
 他の子どもからは、「一日にどれくらい練習しますか?」の問い。
「週に5日ほど、一日に2、3時間練習します。1週間でだいたい16時間ほどかなあ」
 ディクソンが答えた。「ハカってなんですか?」の質問にはスマイリーが対応した。
「私たちの祖先は戦いの前にハカを躍りました。それをやることで一致団結できる。また、ハカは相手に敬意を表わすときにもおこなわれます。私たちの文化の中の重要なもののひとつです」

 訪問を終えて、ミルナースカッダーは翌日の試合に向けての決意を口にした。
「私たちのチームはランニングラグビーが持ち味です。それを徹底して、攻撃的に戦いたい。私自身はサイドステップに自信を持っています」
 10代最後の2年間をオーストラリアのラグビー・リーグで過ごした23歳のハードランナーは、マナワツ代表での活躍が認められ注目を集めている。2014年のスーパーラグビー、ハリケーンズのワイダースコッド入りから一歩進み、同チームとの来年の契約を手にした。
 子どもたちにとっては優しかったお兄さんも、ジャパンXVにとっては厄介な存在になりそうだ。

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青山小学校の児童たちと4人の好漢。思い出となる時間だった。
上の写真は、優しい笑顔でタグを取り合うネヘ・ミルナースカッダー(撮影:松本かおり)

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