国内 2014.11.04

ソンチャンとショウケイ 2人の現在地

ソンチャンとショウケイ 2人の現在地

Lee

東芝の大型新人FW、李聖彰(撮影:見明亨徳)

 2014年、トップリーグに大物ルーキーとして加入した2人の選手。東芝ブレイブルーパスのNO8/FL李聖彰(リ・ソンチャン)、NTTコミュニケーションズシャイニングアークスのFL金正奎(キン・ショウケイ)だ。
 昨季まで帝京大に所属していたソンチャン、早稲田大にいたショウケイは、FW3列で観客を魅了するプレーを続け、中心メンバーとして両校の戦いの先頭に立ってきた。
 その2人がトップリーグ公式戦に出場するための壁に向かっている。

 10月25日、土曜日。ソンチャンは東京・府中市の東芝グラウンドにいた。NECグリーンロケッツとの秋季オープン戦に出場。試合は35−12で東芝が勝利する。
 トップリーグでは、第1ステージを終えて公式戦の出場は無い。
 ソンチャンは話す。「7月、夏合宿前に大学時代も痛めた右足首を捻挫しました。夏合宿は何もできず第1ステージにも間に合わなかった。今やっと試合ができている状態です」
 その間、東芝の同期たち(PR石澤輝、HO崩光瑠、SH山口修平)が公式戦デビューを果たした。
 25日のオープン戦でNECの7番を着て先発していたのは帝京大の大学選手権5連覇を支えてきた同期の大和田立。大和田もすでに公式戦に出ており、第4節の東芝戦でも出場した。「織機戦(豊田自動織機シャトルズ/第5節、9月20日)で全員(崩、山口が出場し)、出場を決めた。悔しかったですね」。

 そしてリハビリも終え、東芝コミュニティ・ソリューション社の社員として働きながら、第2ステージ出場に向けて練習に打ち込んでいる。
 そこにはソンチャンが乗り越えないといけない壁が待ち受ける。FLリーチ マイケル、スティーブン・ベイツ、望月雄太らチームメートだ。「トップリーグの個人的レベルは大学時代と比べて大きな差はないと思います。ブレイクダウンとか激しさも負けていない。しかし出遅れた分、フィットしていないところがあるので、先輩たちのいいプレーを見て積み重ねていいプレーをしていきたい」。

 中居智昭FWコーチはソンチャンに期待する。「現在はリーチや望月の調子が良く、競争は厳しい。バックローはみんなレベルが高いので、そこにどう入ってくるか。足首を痛める前、春シーズンは良いパフォーマンスを見せていました。ここ2、3週間はコンディションも上がってきてプレーもいい。リザーブから入り、レベルを上げてくれれば。当然、構想には入っています」。

 一方、NTTコムのショウケイはすでにトップリーグ出場を果たしている。第6節、対ヤマハ発動機ジュビロ戦(10月12日)にリザーブでメンバー入り。後半33分からFLでデビューした。
 次週の第7節、対パナソニックワイルドナイツ戦(19日)は先発し、80分間グラウンドを駆け巡った。
 プレースタイルは大学時代と変化を見せている。あらゆる局面に顔を出し、ディフェンスし、アタックをし続けてきたころと違う。タックル、ブレイクダウンに精を出している。
 ショウケイは「チームから求められているのがディフェンスとブレイクダウンの激しさ。これができないと試合に出ることができない。最初、大学時代のプレーをしても試合に出してもらえず悩んだこともありました」と苦悩の日々があったことを打ち明ける。
 パナソニック戦では、「しっかりいいパフォーマンスを出せた。いい意味で割り切れているし、足りないところを自覚しています」という。

 10月31日、金曜日の午後はサントリーサンゴリアスとのサテライトリーグ戦に先発した(60分間出場、試合は49−26でNTTコムが勝利)。
 この試合では、ディフェンスに体を張るが、大学時代に戻ったかのように、敵陣に攻め込んだチームメートのラックにいち早く駆けつけブレイクダウンを制した。
 圧巻は前半37分、NTTコム自陣ゴールライン付近でのサントリーのアタックを封じると、ボールをFB沼尻大輝がランで持ち出し進む。すかさずショウケイがフォロー、最後はWTB小泉将のトライへつなげた。

 「大学時代もディフェンスはしてきたので伸ばしていきたい。同期の垣永(真之介、サントリー)、マフィ(アマナキ・レレイ、NTTコム)がジャパンに選ばれたことは嬉しい反面、悔しい。負けたくありません」と話す。

 ショウケイに対しNTTコムのロブ・ペニーHCは「毎試合、クリアすべき課題を出しているが達成しています」と評価は上がっているようだ。
 高校、大学で同じFLの先輩にあたる佐々木隆道(サントリー)はショウケイについて「FLで生きていくならブレイクダウンを避けて通れない。彼はスピードとワークレートはある。タックル後などで低い姿勢になっても自分の姿勢でもちこたえるスキルを身につけることが大切」とアドバイスを贈る。
 ショウケイは、NTTコム・グローバル事業推進部総括担当として、ラグビーシーズン中は朝8時30分から12時まで営業などを人事面から後方支援する仕事に勤しむ。
 2人が今季トップリーグ第2ステージで対戦できるならば、最終節、来年1月11日となる。

(文・撮影/見明亨徳)

kin

NTTコミュニケーションズのゴールデンルーキー、FL金正奎

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