混戦模様の関西大学Aリーグ 連覇狙う立命館はホロ苦い経験も強みに
9月初旬、滋賀県草津市にある立命館大学ラグビー部のグラウンドを訪ねた。昨季、12年ぶりに関西大学Aリーグを制し、連覇を狙うディフェンディング・チャンピオンである。
この日は、ラグビーマガジン11月号(9月25日発売)に掲載される記事の取材で、FL萩原寿哉選手にインタビューをした。コーチ室にて取材だったのだが、コーチ陣と萩原選手の写真を撮ろうとしたら、やや太り気味の中林正一監督が一言。「明治にフィジカル勝負で負けたので、監督から大きくなっていますって、書いといてください(笑)」。
立命館大学は、この夏、二度の合宿を行った。第1次合宿は北海道の北見市で行い、ここでは関東の三大学と対戦して、Aチームは1勝2敗。8月下旬に行われた長野県菅平での第2次合宿では、慶應義塾、明治に敗れた。中林監督の言葉は、明治に圧倒された試合を自嘲気味に話したものだ。
<夏合宿Aチーム試合結果(対関東のみ)>
○ 27-21 ●法政大学
● 5-43 ○東海大学
● 10-14 ○筑波大学
● 29- 33 ○慶應義塾大学
● 14- 70 ○明治大学
昨季のメンバーから、キャプテンのHO庭井祐輔、LO宇佐美和彦、NO8嶋田直人(以上、キヤノンイーグルス)、SH井之上明(NTTドコモレッドハリケーンズ)、SO井本拓也らの主力が抜け、戦力ダウンは否めない。しかし、昨季の全国大学選手権で、慶應義塾、東海、明治という関東の強豪と接戦を繰り広げ、ベスト4まであと一歩と迫った経験は何ものにも代えがたい。キャプテン西村颯平、高島忍の両PR、LO杉下暢、FL萩原寿哉、CTB宮本将希、市原淳平、FB山中駿佑など昨季の大学選手権を経験した選手も多く、1年生には東海大仰星の高校日本一メンバー、CTB山田一輝もいる。山田はこの夏、ユースリンピックの7人制日本代表にも選出され、即戦力として期待される。
萩原は言う。「僕が1年生の時と比べたら関東との差は詰まっています。明治との練習試合では、差は開いてしまったのですが、前半は戦えていた。相手の弱いところを、しっかりつくことができれば、もっとやれたはずです」。春には、萩原ほか、杉下、宮本、そして、SOの大城海がニュージーランドのウェリントンに留学し、ウェリントン代表ライオンズのアカデミーで学ぶなど、ラグビー理解度を深めた。
昨年の大学選手権を振り返り、赤井大介コーチはこう話す。「去年は12年ぶりの優勝を決めた後、1週間で慶應との試合がありました。正直、優勝で浮かれてしまった。あの試合では、慶應の選手が立命のサイン名や、選手の名前を言いながら戦ってきた。完全に分析されていたのです。準備で負けました」。東海大学には、前半、30-7でリードしながら、後半に信じがたい逆転負け。こうしたホロ苦い経験が逆に今季の強みになるはずだ。
関西大学Aリーグは、10月5日、東大阪市の花園ラグビー場に全8チームが揃って開幕する。今春の戦いぶりを見る限り、立命館に加え、関西学院、同志社、天理が4強で優勝争いを繰り広げそうだが、ここ数年は8チームの実力が拮抗していて何が起こるかわからない。今年の開幕戦では、いきなり同志社と天理が激突。立命館は大阪体育大学との対戦である。好試合になりそうだ。
関西ラグビーフットボール協会は、関西リーグの開幕戦に1万人の観客を集めようと様々な企画を考えている。その内容は、リニューアルされたホームページで随時紹介される予定だ。
http://rugby-kansai.or.jp/
【筆者プロフィール】
村上晃一(むらかみ・こういち) ラグビージャーナリスト。京都府立鴨沂高校→大阪体育大学。現役時代のポジションは、CTB/FB。86年度西日本学生代表として東西対抗に出場。87年4月ベースボール・マガジン社入社、ラグビーマガジン編集部に勤務。90年6月より97年2月まで同誌編集長。出版局を経て98年6月退社し、フリーランスの編集者、記者として活動。ラグビーマガジン、ナンバー(文藝春秋)などにラグビーについて寄稿。J SPORTSのラグビー解説も98年より継続中。99年、03年、07年、11年のワールドカップでは現地よりコメンテーターを務めた。著書に、「ラグビー愛好日記トークライブ集」(ベースボール・マガジン社)3巻、「仲間を信じて」(岩波ジュニア新書)などがある。BS朝日ラグビーウィークリーにもコメンテーターとして出演中。
〔写真〕 左から冨岡耕児BKコーチ、守屋篤スポットコーチ、萩原寿哉選手、赤井大介FWコーチ、中林正一監督。赤井コーチ(関東学院大学卒)以外のコーチ陣は立命館大学OBである。