花園に立てなかった常翔学園、御所実、慶應… 新春の福岡で力強く飛翔
大阪のラグビー聖地・花園で第93回全国高校大会の熱戦が繰り広げられている頃、1年前に高校日本一を争っていた常翔学園(大阪)と御所実業(奈良)は、九州の福岡にいた。サニックスワールドラグビーユース交流大会2014の予選会に参加していたのだ。1月5日、両チームは決勝で激突。御所実が42−0と完勝し、本大会への出場権を獲得した。
「去年の1月7日、(全国高校ラグビー大会決勝で常翔学園に)3点差で負けて、363日ぶりに自分たちのラグビーをやり切った感があります。これから始まる1年に、勢いがつくような試合だったと思います」
試合中は大声で選手たちにアドバイスを送り続け、厳しい表情をしていた御所実の竹田寛行監督に笑顔が戻っていた。「最高のゲームでした。みんなが集中していましたね」。
前半は、高校日本代表候補で7人制ユース日本代表でもあるFB竹山晃暉が魅せた。抜群のスピードで連続トライを挙げる。20分はハーフウェイからスワーブ、左へ飛ぶようにグーンとのび、一気にゴールへ駆け抜けた。確実なハイパントキャッチ、陣地獲得のロングキックにも、スタンドで決勝を見ていた他校の生徒たちは驚嘆の声を上げた。
小柄な選手が多いFW陣の激しいファイトも、観衆の目を引いたに違いない。ハーフタイム前、常翔学園が2度トライチャンスを作ったが、黒衣の勇敢な若人たちがゴールを背にがっちり守り、ブレイクダウンでターンオーバーを連発した。接点で何度もボールを奪い返し、トライにつなげる。モールも、強かった。
御所実2年生のSH吉川浩貴は、プレーを終えてベンチに戻ってきた際、泣いていた。昨年11月の奈良県決勝でも9番を背負い、天理に敗れて悔し涙を流した選手だ。だが、今日は涙の意味が違う。自分たちの力を出し切り、リベンジへの最高スタートが切れて嬉しかったのだ。「すごく責任感が強くて、天理に負けて思いっきり泣いとった子なんです。勝ちたいという思いが強くて、今日の試合がすごく大事だというのをわかっていたんだと思います」と称えた竹田監督の目も、少しうるんでいるように見えた。
「奈良県決勝で敗れ、この冬は花園には立てず、もう絶対に優勝するんやという思いで福岡に来ました。選手が最高のプレーをしてくれて、宝くじに当たったようなもんです(笑)。この一年、やりますよ。ゲームの理解力を深めて、自分たちの強いところをしっかり落とし込んで、体作りと人間作りをしっかりやっていきたい。試合の数を増やして、エラーゲームもたくさん経験して、そのなかで組み立て方を自分たちで考えられるように、動じないチームを作っていきたいと思っています」
一方の常翔学園。完敗のショックは大きいが、いい方向に転べば爆発的成長につながる。
「いままで、自分たちが強いと勘違いしていた」と野上友一監督。「『井の中の蛙 大海を知らず』ということです。こういう経験は、選手たちにとってはよかった。新チームとなって始まったばかり。やりたいことはたくさんあります。よりスキルフルに、よりパワフルになるよう、しっかりチームを作っていきたいと思います」。
3位決定戦は慶應義塾が常翔啓光学園を47−5と圧倒した。SH安西浩昭など、慶應のバックス陣は勝負強い選手が多く、クレバーで、スピードとパワー、そして攻撃に自信と余裕があった。もちろん、トライラッシュとなったのは、FWの奮闘もあったのは言うまでもない。
「うちはいいランナーが揃っている。彼らをどう生かせるかを常に考えてゲームを組み立てさせています。全国の強豪校と試合をして、戦い方を学ばせてもらいました」と慶應の稲葉潤監督は手ごたえを感じていた。
この日、花園では、神奈川のライバルである桐蔭学園がセンバツ優勝の大阪桐蔭を下し、全国高校大会の決勝進出を決めた。
「来年は絶対、我々があそこに立って、神奈川には桐蔭だけじゃないということを示したいと思っています。勝負は11月。それまでチームをしっかり強化していきます」
新シーズンへ向けての目標を問うと、稲葉監督は即答した。
「全国制覇を狙ってます。思い切り」
新春の福岡、本気のチャレンジャーたちがいた。
≪サニックスワールドユース交流大会2014予選会 最終順位決定戦 結果≫
▼決勝
御所実業(奈良) 42 – 0 常翔学園(大阪)
▼3・4位決定戦
慶應義塾(神奈川) 47 – 5 常翔啓光学園(大阪)
▼5・6位決定戦
京都成章(京都) 15 – 12 筑紫(福岡)
▼7・8位決定戦
名古屋(愛知) 21 – 17 國學院久我山(東京)
▼9・10位決定戦
東海大第五(福岡) 21 – 14 深谷(埼玉)
▼11・12位決定戦
伏見工業(京都) 20 – 17 東京朝鮮(東京)
▼13・14位決定戦
近畿大附属(大阪) 19 – 12 長崎北(長崎)
▼15・16位決定戦
熊本西(熊本) 41 – 5 萩商工(山口)
(撮影:K.Takenaka)